読切(脚本)
〇屋根の上
わかってねー!
わかってないのはそっち!
〇漫画家の仕事部屋
ナオミチ「だから!そんなのキュンじゃないって!」
マナカ「そっちこそ全然キュンと、しないから!」
マナカ「ナオミチは女子の事わかってないよ!」
先生「二人とも騒がしいわね」
ナオミチ「あ!先生!」
マナカ「うるさくてすいません・・・」
先生「まぁ、仕事も終わってるからいいんだけど」
先生「どうしたの?」
マナカ「あの・・・」
マナカ「私達、次の新人賞に合作で応募するんですが」
マナカ「『キュン』となるシーンの事で 揉めちゃって・・・」
先生「うん、例えば?」
ナオミチ「マナカが壁ドンのシーンを 入れようかといってきて──」
ナオミチ「壁ドンなんかする男に 『キュン』とするなんて」
ナオミチ「ありえない!」
ナオミチ「っていったんです!」
ナオミチ「壁ドンですよ?壁ドン!」
ナオミチ「男目線から見て してる奴みたら」
ナオミチ「ドン引きするわ!!」
マナカ「は!?」
マナカ「あんたが『キュン』とするシーンなんて」
マナカ「ブラが透けて見えるとか エッチなシーンばっかじゃん!」
マナカ「馬鹿じゃないの?」
マナカ「それはドキッ!」
マナカ「『キュン』じゃないし!」
ナオミチ「なんだと!!」
マナカ「なによー!!」
〇雷
先生「いい加減にしなさい!!」
先生「二人とも本当に共同して 漫画描くつもりなの!?」
先生「話を聞いていたら罵り合って」
先生「議論になってないじゃない!!」
先生「貴方達が本気で新人賞に応募するなら」
先生「明日『キュンの定義』を私に報告しなさい!!」
ナオミチ「明日!?」
先生「二人で考えれば 必ず答えが見つかるわ!!」
マナカ「はい・・・」
ナオミチ「わかりました・・・」
先生「街でも歩きながら話し合いなさい!!」
ナオミチ「はい・・・失礼します」
マナカ「失礼します・・・」
〇渋谷のスクランブル交差点
ナオミチ「・・・」
マナカ「・・・」
ナオミチ「あの・・・」
マナカ「・・・」
ナオミチ「さっきはごめん・・・」
ナオミチ「いいすぎた・・・」
マナカ「私こそ、ごめんなさい・・・」
ナオミチ「先生怒ってたな・・・」
マナカ「あんな先生初めて見た・・・」
ナオミチ「・・・」
マナカ「・・・」
〇漫画家の仕事部屋
アシスタント「先生 さっきは 珍しく怒ってましたね」
先生「実は、あの2人 幼馴染でね──」
アシスタント「え!?」
先生「距離が近すぎた為か」
先生「お互い素直になれない様だから」
先生「まぁ・・・その・・・」
先生「仲直りのキッカケになればとね・・・」
アシスタント「そうだったんですか!!」
先生「後は今後2人が」
先生「物事を深く調べる力を つけさせる為かな──」
アシスタント「先生素敵です・・・」
先生「それ程でも〜」
〇街中の道路
ナオミチ「・・・」
マナカ「・・・」
ナオミチ「マナカ・・・」
マナカ「うん?」
ナオミチ「俺達もっと『キュン』について 話し合わないか?」
ナオミチ「例えば・・・」
ナオミチ「その・・・」
マナカ「何よ!」
マナカ「はっきり言いなさい!!」
ナオミチ「マナカが俺に 『キュン』とした瞬間ってある!?」
マナカ「ば、ば、馬鹿じゃないの──」
マナカ「そんなの・・・」
マナカ「あの・・・えっと・・・」
ナオミチ「『キュン』を知る為にも」
ナオミチ「あったら教えて欲しい!」
マナカ「うん・・・」
マナカ「ある・・・わよ・・・」
マナカ「例えば・・・」
〇教室
小学生の頃の話だけど・・・
ぷー「マナカ女のくせに生意気だぞ!」
マナカ「うるさいわね!」
ぺー「マナカは女の姿をした男だ!」
ぺー「妖怪男女め!!」
ぷー「妖怪男女!傑作だー!」
ぺー「妖怪!」
ぷー「男女!」
マナカ「・・・」
ぷー「ワハハ!逃げてやんの!」
〇学校の廊下
ナオミチ「いて!!」
ナオミチ「マ、マナカ!!」
ナオミチ「どうした!?」
マナカ「プーとぺーの2人が・・・」
マナカ「私が妖怪男女だって・・・」
ナオミチ「!?」
ナオミチ「マナカを泣かしやがって!」
マナカ「えっ!?」
マナカ「ナオミチ!!」
〇教室
ナオミチ「マナカは俺の大事な親友だ!」
ナオミチ「お前ら男なら! 女の子を泣かす様な真似すんじゃねぇ!!」
ぷー「わかったよ・・・」
ぺー「悪かったよ・・・」
〇教室
マナカ「ナオミチ・・・」
マナカ「今、プーとペーが謝ってきた・・・」
マナカ「あ・・・」
マナカ「あの・・・」
マナカ「ありがとう・・・」
ナオミチ「おう!」
〇開けた交差点
マナカ「って、時は・・・」
マナカ「キュンとしたわ・・・」
ナオミチ「そ、そうか・・・」
マナカ「あ、あんたも私に」
マナカ「キュンとした事あったり・・・する?」
ナオミチ「え!!」
ナオミチ「え──」
ナオミチ「俺も・・・」
ナオミチ「あるよ──」
マナカ「!!」
〇クリスマス仕様のリビング
小学生の頃
クリスマスパーティーでさ
プレゼント交換があって・・・
お小遣いが少なく買えないから
その時間になる前に
帰ろうとしたら・・・
〇一軒家の玄関扉
マナカ「ナオミチ!」
ナオミチ「な、なんだよ」
マナカ「ナオミチ前に助けてくれたじゃん」
マナカ「これ、ガチャガチャでダブったからあげる」
ナオミチ「こんな高そうなのもらえないよ!」
マナカ「ガチャガチャでダブったやつだから気にしないで!」
マナカ「さぁ!」
マナカ「私に恥を欠かす気!?」
マナカ「後ろ向いて付けてあげる」
ナオミチ「あ、うん・・・」
マナカ「すごい似合ってるよ!!」
ナオミチ「あ、ありがとう・・・」
マナカ「うん・・・」
〇川沿いの公園
ナオミチ「そう・・・」
ナオミチ「あれは『キュン』とした」
マナカ「そ、そうなんだ・・・」
ナオミチ「・・・」
マナカ「・・・」
ナオミチ「なぁ・・・」
マナカ「な、何・・・」
ナオミチ「『キュンの定義』のことだけど・・・」
ナオミチ「定義って何?」
マナカ「はぁ・・・」
マナカ「定義ってのは・・・」
マナカ「意味があまりはっきりしない言葉を、よりわかりやすい言葉でその意味を決めること」
ナオミチ「──?」
マナカ「例えば白い石を探しなさいと言うでしょ」
マナカ「白い石という言葉には幅があるので」
マナカ「その石の半分が白色なら」
マナカ「白い石と定義する事により」
マナカ「誤解なく探す事ができるでしょ」
ナオミチ「よくわかった!」
〇池袋西口公園
マナカ「ん・・・」
ピーポーピーポー
救急車左に曲がります──
ナオミチ「救急車か・・・」
ナオミチ「・・・!?」
ナオミチ「あ!!」
ナオミチ「わかった!」
ナオミチ「『キュン』を病気に例えて・・・」
ナオミチ「『恋』=『風邪』とする・・・」
ナオミチ「じゃあ『キュン』は?」
マナカ「『キュン』は『恋』より前におこる・・・」
マナカ「『風邪』の前だから・・・」
マナカ「咳や寒気がする・・・」
ナオミチ「そう!!」
マナカ「あ!!」
マナカ「『初期症状』ね!」
ナオミチ「そう!!『風邪の初期症状』」
マナカ「つまり『キュン』は・・・」
「『恋の初期症状』!!」
ナオミチ「・・・」
マナカ「・・・」
〇池袋西口公園
ナオミチ「暗くなったな・・・」
マナカ「うん・・・」
ナオミチ「俺・・・」
ナオミチ「いつのまにか『風邪』になってたかも・・・」
マナカ「え!?」
ナオミチ「この先ずっと」
ナオミチ「ひいたままになるけど」
ナオミチ「俺の看病してくんない?」
マナカ「ば、ばか・・・」
マナカ「私は・・・」
ナオミチ「・・・」
マナカ「私は、もっと前からひいてるんだからね──」
ナオミチ「・・・」
マナカ「・・・」
ナオミチ「やべ!!もう24時だ!」
マナカ「終電!!」
手を引いて
走り出すナオミチ──
ナオミチ「帰るぞマナカ!!」
手を引かれ
走り出すマナカ──
マナカ「待ってよナオミチ──」
二人の『キュン』が加速する──
相手にキュンとした思い出を、面と向かって本人に語る……このシチュエーションそのものが強烈なキュンですね!
全編通してキュンキュンな雰囲気が漂っていて、リアルに付き合う直前の二人を観察している気分でした
白い石のたとえや、「恋の初期症状」の解釈も面白かったです
手をとって駆け出してからのラストの一言の演出も素敵でした!
いつまでも二人を見守っていたいです。
素敵なお話、キュンキュンしながら読ませていただきました。
二人の恋路の可愛さが爆発していて、ニマニマが止まりませんでした(笑)
側にいるからこそ気付かない気持ち。気付いてしまったから、変わる気持ち。二人のキュンの思い出の演出。全てが尊いです!好きです!
素敵な作品を紡いでくださりありがとうございました!あー、キュンキュンしました!!