キミトココロの物語~バーチャルiTuberの日常~

泡沫彷徨

第12話 【ベストパートナー決定戦】(脚本)

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〇テレビスタジオ
  正樹とココロ、蒔苗、ことりの4人は、
  「ベストパートナー決定戦」の
  番組コーナーの一つ、
  ゲームでの協力プレイに挑んでいた。
  プレイしているゲームは、周囲に落ちて
  いるものを使って道なき道をゴールへと
  進んでいく、物理パズルアクションだ。
  4人のアバターがゲーム内をバタバタと
  走り回っている様が面白いのか、視聴者
  からのコメントも大盛況となっている。
紺野正樹「ココロちゃん、棒の反対側を持って! これを穴のところまで運んでいって、 橋にしようよ」
紺野正樹「そしたら、向こう側に渡れるはず!」
希美都ココロ「うん」
紺野正樹「あっ、待って、角度が、あっ」
  正樹が橋にしようとした棒が、
  上手く対岸へと掛からず、落下していく。
紺野正樹(このままじゃマズい・・・)
  このコーナーで審査されているのは、
  どれだけココロと意思疎通し、互いの
  考えを汲み取り、協力できているか。
  明らかに、正樹とココロの連携は
  上手くいっていない。その原因は──

〇可愛い部屋
希美都ココロ「やっぱり、 リアルな女の子のほうがいいんだ・・・」

〇テレビスタジオ
紺野正樹(隠し事をしたこと、 まだ怒ってるのかな・・・)
紺野正樹(お互いの答えを予想し合う クイズコーナーでも、 いいところ見せられなかったし・・・)
紺野正樹(このままじゃ ベストパートナーの座が・・・)
蒔苗「あ、先輩、その丸いヤツ、 こっちに使ったほうが良さげですよ」
希美都ココロ「あ・・・ほんとだ。ありがと、マッキー」
蒔苗「いえいえ、えへへ」
  蒔苗はおくびにも出さないが、
  ココロのほうは蒔苗に対して
  気まずそうな雰囲気だ。
  それもそうだろう。

〇遊園地の広場
蒔苗「先輩みたいな人・・・ 先輩がやろうとしてること・・・ 蒔苗は、大っ嫌いです」

〇テレビスタジオ
  だが、ココロと蒔苗の連携は傍目には
  非常に上手くいっている。
紺野正樹(どうして、僕より・・・)
  そう思ってしまってから、ハッとする。
紺野正樹(僕、蒔苗ちゃんに 嫉妬してるのかな・・・?)
  そのまま時間が来て、
  ゲームのコーナーは終了してしまった。
  一つずつコーナーが終了していく中、
  正樹は蒔苗を観察していて、
  分かったことがあった。
紺野正樹(あの子、誰よりも・・・ 僕なんかよりもずっと、 ココロちゃんのことを見てる)
紺野正樹(ココロちゃんの意図を汲んで、行動してる)
  だからこそ、ココロが気まずく思って
  いるにも関わらず、ココロと蒔苗の
  連携は上手くいっているのだ。
紺野正樹(それなのに僕はと言えば、 上手くいかないことを、 ココロちゃんがすねてるからだって・・・)
紺野正樹(僕のほうから何も歩み寄らずに。 それと、もう一つ・・・)
  蒔苗は、この企画に本気で勝利しようと
  思えば簡単にできただろう。
  それなのに、現在の得点は横並びだ。
  配信が数分間の休憩を挟むタイミングで、
  思い切って、蒔苗へと接近する。
紺野正樹「勝つつもり、ないんだね」
蒔苗「・・・なんですか?」
紺野正樹「蒔苗ちゃんは、番組を盛り上げるために、 自分の得点が極端に低くなって しまわないよう調節してる」
紺野正樹「それができるなら高得点だって狙える はずなのに、明らかに勝つ気ないよね。 途中で完全に手を抜いてたし」
蒔苗「蒔苗としては、 この番組が成功することが重要です」
蒔苗「ココロ先輩のベストパートナーに なりたいわけじゃないですから」
紺野正樹「そう。まあ、いいんだけど。 じゃあ、僕がココロちゃんの ベストパートナーで決まりだ」
紺野正樹「彼女のことは、僕が一番よく分かってる」
蒔苗「・・・はぁ?」
  瞬間、背筋も凍るような表情で、
  蒔苗は正樹を見上げた。
蒔苗「あなたが先輩の何を知ってるって?」
紺野正樹(・・・やっぱり、乗ってきた)
  蒔苗への挑発。
  これは正直、賭けだったが、
  自分の直感を信じることにした。
  蒔苗は、本心を隠している。ただ
  ココロを嫌っているというわけではなく、
  そこには、明確に複雑な感情がある。
  実際、昔は何度か
  ココロとコラボをしていたはず。
  ある頃から、絡んでいる姿を
  見かけることは少なくなったが・・・
MC「そろそろ再開しまーす!」
紺野正樹「それじゃ」
  言うだけ言って、蒔苗に背を向ける。
  もし蒔苗から本心を引き出すことが
  できれば、それは・・・
  ココロとの関係だけじゃなく、
  この番組にとって、
  大きなプラスとなるはずだ。
紺野正樹(蒔苗ちゃんは正しい。 重要なのは、この番組を盛り上げること)
紺野正樹(なら、その最適解は、 きっと僕の勝利じゃない)

〇テレビスタジオ
MC「お次は最後のコーナーです! 内容はコチラ!」
MC「『あの子を一番ドキドキさせられるのは 俺だ! 口説き王対決』~!」
紺野正樹(でももちろん、 ただ黙って負けるつもりもないけどね)
  このコーナーは、一人ずつココロと
  向き合い、彼女に言葉を投げかけるという
  シンプルなもの。内容の方向性は自由。
  そのときのココロの反応などで、誰が一番
  彼女をドキドキさせたか競うのだ。
  ことりの番が終了し、次は正樹だった。
紺野正樹「ココロちゃん・・・」
  対する彼女は、
  つんと澄まし顔で構えている。
  何が来ても動じないという
  鉄の意思を感じる。
紺野正樹(彼女を揺るがすことができるとすれば、 それは・・・本心からの言葉だ)
紺野正樹「ココロちゃん」
希美都ココロ「何だい」
紺野正樹「僕は、コロリンだ」
希美都ココロ「・・・へ?」
  ぬいぐるみアバターの両手両足を
  動かしてみせる。

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