蟻地獄に咲く薔薇のよう

戸羽らい

Ep.2 田井中コルネリアの仮説(脚本)

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〇海岸の岩場
田井中コルネリア「ねえ安藤、敵の定義って何だと思う?」
安藤敏夫「敵・・・ですか」
安藤敏夫「対立関係や対戦相手など、自分の対となる相手への呼び方・・・ あるいは自分にとって害のある存在へのメタファー」
安藤敏夫「「あいつは敵だ」といったふうに他者を指す場合が一般的ですが、「贅沢は敵だ」のようにものや概念を指すこともありますね」
安藤敏夫「敵と言っても色々あって、一概に定義することは難しいです、はい」
田井中コルネリア「うーん、そういうんじゃなくて」
田井中コルネリア「私たちにとって「敵」は何を意味するんだろうって」
安藤敏夫「私はシンプルにあの化け物が敵だと思いますよ」
安藤敏夫「殲滅するのは骨が折れそうですが」
田井中コルネリア「前々回のループだったかな」
田井中コルネリア「あの化け物に全く襲われる気配のない人間がいたんだよね」
田井中コルネリア「化け物の群れが人を襲ってる中で、その人だけが何食わぬ顔でその様子を眺めていた」
田井中コルネリア「化け物たちはその人を避けていた」
安藤敏夫「おや、じゃあその人が黒幕かもしれませんねぇ」
田井中コルネリア「違う気がする」
田井中コルネリア「多分、黒幕はこの場にいない ・・・そもそも黒幕という存在がいるのかも怪しい」
安藤敏夫「じゃあコルネリアさんはこの謎の現象も誰かが仕組んだものではなく、自然発生的に生じたものだって言うんですか?」
田井中コルネリア「多分・・・」
田井中コルネリア「仕組まれたというより、そういう仕組みなんだと私は予想してる」
安藤敏夫「?」
安藤敏夫「そういう仕組み?」
田井中コルネリア「・・・うん」
田井中コルネリア「まあ・・・何の根拠もない 単なる直感だけどね」
安藤敏夫「コルネリアさんともあろうお方が直感だなんて・・・らしくないですね」
田井中コルネリア「私もちょっと疲れてるのかもしれない」
田井中コルネリア「時空の超越なんて初めての体験だからね 何周しても慣れないよ」
安藤敏夫「時空・・・ 確かにこの状況は人類の手の及ばない、超自然的な何かなのかもしれませんね」
安藤敏夫「例えば、宇宙人の侵略とか」
田井中コルネリア「宇宙人・・・か」
  きゅいーーーーん
安藤敏夫「噂をすればなんとやら」
化け物「きゅいーん」
安藤敏夫「うーん、宇宙人にしてはやけに人間的なフォルムなんですよね」
田井中コルネリア「・・・」
田井中コルネリア「元人間とか・・・?」
安藤敏夫「おっ!それありそうですね! アブダクションされた元人間!」
安藤敏夫「っと、ここまで来るともはやSFの域ですが」
田井中コルネリア「既に私たちはSFの域にいるよ」
安藤敏夫「はははっ確かに」
化け物「きゅいーん」
安藤敏夫「おやおや・・・ご機嫌斜めのようで」
安藤敏夫「どうしますか? 残り少ないですが「アレ」使います?」
田井中コルネリア「・・・」
田井中コルネリア「ちょっと試したいことがある」
安藤敏夫「って!コルネリアさん! 危ないですよそんなに近付いたら!」
田井中コルネリア「・・・ねぇ」
田井中コルネリア「あなたは私の敵?」
化け物「きゅいーん」
田井中コルネリア「・・・」
化け物「・・・」
田井中コルネリア「なるほどね」
安藤敏夫「ちょっと!ヒヤヒヤしましたよ!」
安藤敏夫「死んだら記憶が消失するって結論は既に出しましたよね! あなたの記憶、そして知恵は我々の最大の武器なんですから!」
田井中コルネリア「ごめんごめん」
田井中コルネリア「でも今ので明らかになった」
安藤敏夫「何がですか?」
田井中コルネリア「私とあなたは敵だってこと」
安藤敏夫「は?」
安藤敏夫「ちょっ! コルネリアさんどこ行くんですか!」
安藤敏夫「待っ!」
安藤敏夫「・・・」
安藤敏夫「くそ!勿体ないが仕方ない! 「アレ」を使・・・」
安藤敏夫「・・・」
安藤敏夫「ない・・・なんで・・・」
化け物「きゅいーん」
安藤敏夫「くっ!くそ!来んな!」
化け物「きゅいーん」
安藤敏夫「くっ・・・う・・・」
安藤敏夫「うわあああああああ!」
「きゅいーん」

〇洞窟の入口(看板無し)
田井中コルネリア「・・・」
田井中コルネリア「ごめんね安藤 「アレ」は私がくすねちゃった」
田井中コルネリア「安藤を陥れるつもりじゃなくて、単に私自身の保険だけどね もし私が「そっち側」だったら使わざるを得なかったから」
田井中コルネリア「彼らは人を襲う、でも襲わない人もいる」
田井中コルネリア「今まで条件反射的に逃げていたけれど、思えば、私が襲われているという確証はなかった」
田井中コルネリア「・・・私と安藤は最初から一緒だったから」
田井中コルネリア「私ではなく、安藤だけを追いかけていたのかもしれないし、またはその逆で私だけを追いかけていたのかもしれない」
田井中コルネリア「未知の脅威に対して人間は本能的に回避する そして安心を得るために同種で集まる」
田井中コルネリア「そんな人間の習性が・・・敵か味方かの判別を困難にしていた」
  きゅいーーん
田井中コルネリア「・・・」
田井中コルネリア「宇宙人に改造された元人間、か・・・」
化け物「きゅいーん」
田井中コルネリア「安藤、その仮説はきっと間違ってるよ」
田井中コルネリア「私が導き出した仮説はね・・・」
田井中コルネリア「私の方が人間の皮を被った宇宙人」
化け物「きゅいーん」
田井中コルネリア「根拠は・・・そうだね」
田井中コルネリア「だってなんか彼らって・・・ 親近感が湧くから」
化け物「きゅいーん!」
化け物「きゅいーん!」
  ミッション「敵を殲滅せよ」
  
  現在11周目
  生存者304名

次のエピソード:Ep.3 風見陽の推測

コメント

  • 田中さんと安藤さんのバディなのかと思ったら…展開が面白い!アイテムの存在など、気になる要素がいっぱいで堪りません😆
    化物の笑顔が見られるとは思いませんでした 笑

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