雨宿り心中(脚本)
〇古びた神社
女の子「雨、止まないね」
男の子「止まないねー」
女の子「ずーっと降ってる」
男の子「多分ここ3日くらいは降ってるね」
女の子「いつになったら止むの?」
男の子「さぁ・・・」
女の子「じめじめ」
女の子「洗濯物が乾かない」
男の子「結構、困るよな」
女の子「君って結構何でもできるじゃん」
男の子「まぁ、そうだね」
女の子「缶詰開けたり、自転車直したり」
男の子「うん」
女の子「あとなんか、よくわかんない豆知識もいっぱい知ってるし」
男の子「サバイバル本から詩集まで、何でも読むのが趣味だったんだ」
女の子「その調子で雨もどうにかして」
男の子「何でもにも限度はあるんだよ」
女の子「けちー」
男の子「えー・・・」
〇古びた神社
女の子「ねー、まだ止まないの?」
男の子「さっきより強くなってるし、まだじゃないかな」
女の子「君さ、雨雲吹き飛ばせない?」
男の子「何を言い出すんだ・・・」
女の子「じゃあ吸い込んでもいいよ」
男の子「ピンクの丸いやつでも無理だろ」
女の子「じゃあもう、何でもいいからやって」
男の子「・・・暇なの?」
女の子「うん」
男の子「まぁ、この雨だからな・・・」
男の子「真顔で何してるんだ?」
女の子「見てわかんないの?」
男の子「・・・強いて言うなら反復横跳び?」
女の子「創作ダンスだよ!」
男の子「・・・なんか、見てて不安になるステップだなぁ」
〇古びた神社
女の子「この雨の中を、駆け回りたい」
男の子「・・・暇なんだな?」
女の子「ちょっと、行ってくる」
男の子「やめなさい、風邪引くよ」
男の子「服乾かないだろ」
女の子「でももう、爆発しそうなんだよ」
男の子「何が?」
女の子「体が、ぱーんって」
男の子「どんな体の構造してるんだ?」
女の子「ふふふ、君もまとめて木っ端微塵」
男の子「そりゃ大変だ」
〇古びた神社
女の子「あはは、びしょびしょだ」
男の子「まさか本当にやるとはな」
女の子「でも、爆発せずにすんだよ」
男の子「命拾いしたなぁ」
女の子「怒ってる?」
男の子「いや、そんなには」
女の子「今日誕生日だから、許してよ」
男の子「マジか」
女の子「なんで知らないんだよー」
男の子「そっちだって、知らないだろ」
女の子「そうだった」
女の子「じゃあ、いつなの?」
男の子「3ヶ月後くらいかな」
女の子「まだまだ先だなー」
男の子「ほら、コーヒー飲みな」
女の子「君ってやっぱり凄い!」
男の子「誕生日、おめでとう」
女の子「いえーい」
〇古びた神社
女の子「暗くなっちゃったね」
女の子「雨も止まない」
男の子「・・・ねぇ」
女の子「聞いてるよ」
男の子「移動するなら、そろそろだと思う」
男の子「食糧も少なくなってきた」
女の子「・・・・・・」
男の子「もう少し動きやすくなってからにはなるけど」
男の子「どうしたい?」
女の子「・・・・・・」
女の子「今さ、幸せだよ」
女の子「君と一緒に歩き回って」
女の子「びしょびしょになって」
男の子「俺は濡れてないけどな」
女の子「誕生日も祝ってもらえて」
女の子「コーヒーもうまい!」
男の子「・・・・・・」
女の子「きっとこの先、こんなに幸せなことってないね」
女の子「・・・・・・」
女の子「この、終わりかけの世界じゃさ」
女の子「・・・・・・」
女の子「──だからもう、ここで良いかなって思うんだ」
男の子「・・・・・・」
男の子「そっか・・・」
〇古びた神社
女の子「ねぇ、起きてる?」
男の子「起きてるよー」
女の子「世界ってどうなったら終わりなの?」
男の子「・・・生き物が居なくなったらかな」
女の子「私たち以外生きてる人居るの?」
男の子「どうだろう・・・」
女の子「じゃあ植物は?生き物?」
男の子「そうとも言えるかもしれない」
女の子「じゃあまだ終わらないね、世界」
男の子「・・・・・・」
女の子「・・・ごめんね」
男の子「何が?」
女の子「君の誕生日、お祝いできなくて」
男の子「・・・じゃあ、今祝ってよ」
女の子「任せとけ!」
女の子「フライングハッピーバースデー!」
女の子「ぱちぱちぱちー!」
男の子「何だそりゃ」
男の子「でも、まぁ・・・」
男の子「ありがとう」
──春霖(しゅんりん)の夜。
終末の世界で2人、
寄り添い笑い合う。
僕らは今、幸せなんだと
確かめ合うように。
〇水たまり
──雨はまだ、止みそうにない。
〇黒
うわぁーーー
どちらかが幽霊なのかな、と思っていたら、まさかの。
止まない雨。移動しない二人。
手を取り合って眠り沈んでいくのでしょうか。
切なくも美しい青春でした。
雨はジメジメしているはずなのにどこかキラキラした青春も感じられるのにやはり切なくて胸にグッとくるものがありました( ; ; )お話の雰囲気がとても好きです!
青春真っ只中の幸せそうな二人…なのに『心中』とは?と思っていたら、なんと切ないラスト😭
絶望的な状況ではあるけれど悲しくはない、不思議で優しい読後感でした!