ある日、非日常は日常になるのです。

はなきりん

ある日、非日常は日常になるのです。(脚本)

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〇スーパーの店内
「『失礼いたします。いらっしゃいませー!!』」
  ザワザワ、ザワザワと騒がしい店内。
  夕方、スーパーの各通路は夕食前の賑々しい喧騒で埋め尽くされる。
  自宅から車で30分弱。
  あまりご近所と顔を合わせたくなくて、微妙に離れた土地を勤務先に選ぶのは、あるあるではなかろうか。
  勤続5年。
  
  人が続かない事もあり、ベテランに振り回されつつ、通常業務も新人の指導も兼任しがち。
  行き遅れ、売残り。
  そんな風に言われがちなアラフォーパートの毎日は、思いの外、わりに忙しい。
後輩バイトくん「!オハヨーございまーす」
後輩バイトくん「・・・・・・あ、そう。学校だったんで。今からです!」
後輩バイトくん「今日は夜までですか?」
後輩バイトくん「・・・・・・あ、ならあと一時間であがりですね・・・・・・」
後輩バイトくん「え、いや。ちょっと締めの事で聞きたい事あったんすけど・・・・・・」
後輩バイトくん「今度精算被った時、教えて下さい!」
後輩バイトくん「えっ、いや・・・・・・そうなんスけど、あの人ちょっと怖・・・・・・いやっ」
後輩バイトくん「・・・・・・あなたが、いいなあって」
後輩バイトくん「優しいし・・・・・・」
後輩バイトくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
後輩バイトくん「・・・・・・ほんとっすか!ありがとうございます」
後輩バイトくん「──あ!時間やばいんでとりあえず出勤しますね!」

〇ストレートグレー
  ────最近の若い子は、皆あんなに懐っこいのだろうか。
  売場にいてもレジにいても、よく追いかけてきて仕事の話だったりちょっとした雑談だったり。
  ──親子ほど、とまでは言わないけど────
  それにほど近いほど年の離れた先輩パートとの会話は、退屈ではないんだろうか。

〇スーパーマーケット
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ちょっとだけ。
  あまりにも慕ってくれるから、勘違いしそうになる事がある──
  『そういう』好意なんじゃないか、って。
  たびに、思い直すんだけどね。
  ──舞い上がっちゃダメ。
  アラフォーの勘違い、半端なく痛い。
  ダメ、絶対。

〇黒
  ────────────────────

〇駐車車両
後輩バイトくん「・・・・・・今日めちゃくちゃ忙しかったっすね~」
後輩バイトくん「予定外の残業でしたけど、一緒に帰れたしラッキー・・・・・・みたいな」
後輩バイトくん「いや、ほんとに・・・・・・最近シフト被らなの続いたし」
後輩バイトくん「話したかったんで」
後輩バイトくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
後輩バイトくん「で、でも今日はもう遅いか・・・・・・ 車、どれでしたっけ?」
後輩バイトくん「えっ、や、だめです。ちゃんと乗るとこまで見届けます!」
後輩バイトくん「・・・・・・はい」
後輩バイトくん「────あ、これです? 結構ゴツい車乗ってる・・・・・・意外・・・・・・」
後輩バイトくん「・・・・・・はい。はい、じゃあ・・・・・・気を付けて・・・・・・」
後輩バイトくん「ん・・・・・・? どうか、しました?」

〇車内
後輩バイトくん「──エンジン、かからないんですか?」
後輩バイトくん「ちょっと俺やってみてもいいです? ・・・・・・はい、じゃちょっと」
後輩バイトくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
後輩バイトくん「・・・・・・うーーーーん・・・・・・だめっぽい・・・・・・」
後輩バイトくん「俺もそんなに詳しいわけじゃないんですけど・・・・・・」
後輩バイトくん「とりあえずブースターで繋いで、俺の車と連動・・・・・・ ただ、家なんで取りに」
後輩バイトくん「え、『悪い』って! こんな遅くに電車とか徒歩とかさせられないすよ!」
後輩バイトくん「ン・・・・・・まあ、確かに起動してもこの時間じゃ持ち込めないですけど・・・・・・」
後輩バイトくん「・・・・・・あ!」
後輩バイトくん「じゃあ、こうしましょう! 俺、今日送りますよ!」
後輩バイトくん「それで、明日ブースター積んで家もっかい迎え行くんで、それから修理行ったらいいすよ!」
後輩バイトくん「明日休みでちょうどよかったっすね・・・・・・」
後輩バイトくん「っ・・・・・・」
後輩バイトくん「ンンッ・・・・・・ね、そうしましょ?」
後輩バイトくん「だーかーら、全然悪くないですって! 俺を安心させると思って!」
後輩バイトくん「ねっ」

〇走行する車内
後輩バイトくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
後輩バイトくん「・・・・・・もしかして俺の運転不安だったりします?」
後輩バイトくん「もう一年以上乗ってるし、だいじょぶですよ! 田舎は車必須ですよね~~」
後輩バイトくん「まあ偉そうに言っても親の車なんですけどね!アッハハ・・・・・・」
後輩バイトくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
後輩バイトくん「あの・・・・・・車は・・・・・・」
後輩バイトくん「その、か、彼氏さんの趣味とか」
後輩バイトくん「──あっ、そか。いないんですか。はは・・・・・・」
後輩バイトくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
後輩バイトくん「しかし、やばいなぁ」
後輩バイトくん「・・・・・・俺、助手席に女の子乗せるの初めてっす。ヤバイなー」
後輩バイトくん「・・・・・・は?え? だって、女の子ですもん!」
後輩バイトくん「・・・・・・そんな、なんでそんな事。 10や20、大人になったらたいして意味ないでしょ」
後輩バイトくん「だって、実際・・・・・・俺は」
後輩バイトくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
後輩バイトくん「・・・・・・ちょっと、停めますね」

〇車内
後輩バイトくん「あの・・・・・・明日ちょっと早めに来るんで」
後輩バイトくん「ちょっとだけ・・・・・・話す時間もらえますか?」
後輩バイトくん「・・・・・・・・・・・・へへ」
後輩バイトくん「勢いってのも違う気がして・・・・・・」
後輩バイトくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
後輩バイトくん「・・・・・・あなたがそんなに赤くなった顔・・・・・・初めて見たかも」
後輩バイトくん「──かわいい、とかって言ったら・・・・・・怒ります?」
後輩バイトくん「はは・・・・・・」

〇二階建てアパート
  ────バタン
後輩バイトくん「・・・・・・ここで? あ、いや。扉の前まで送ります」
後輩バイトくん「ダメ、何かあっちゃ困りますから」
後輩バイトくん「明日、会えないと困りますし・・・ね」
後輩バイトくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
後輩バイトくん「待ち遠しいです・・・明日が」
  ──

コメント

  • 年の差や、他の色んな事を気にせずにぐいぐいいく、彼の無邪気な姿にきゅんときました。明日の話し合いがどうなるのかがとても楽しみです。素敵な物語ありがとうございました!

  • わぁ、明日が待ち遠しい!
    歳が離れていると躊躇してしまう恋心、それなのにグイグイくる彼に切なくもキュンときました❤
    きっとヒロインは、眠れない夜を過ごすのでしょうね。

  • え、え、何この展開、この続きも見たかったです。あ、でも想像するのもキュンキュンしますね。年下の男性って女性は恋愛対象に見ないようにする傾向がありがちだと思うけれど、こういうアクシデントで頼もしいところを見せられたらやっぱり男性として意識しちゃいますよね。

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