化け物クリエイターズ

あとりポロ

エピソード4『切り札』(脚本)

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〇洋館の一室
  【2033年、イバラキ。『ヒト腹 創』】
  培養しているネズミの受精卵を、試験管から吸い出しプレートへ落とす。
  自身の研究机の上、顕微鏡を覗きながらボクは『楽々』に訊ねた。
ツクル「『楽々』、『フォーチュン』について何か分かったかい?」
  「それがさー」と『楽々』が、ガタガタ音を立て応える。
  振りかえると茶色の髪を弄りながらマウスをカタカタ、乱暴に椅子を振り向かせていた。
楽々「ぜんっぜん、だよ。ヤ○ーにもグー○ルにも掛からない。こりゃ消してるよー、色々と」
  幼馴染『奈久留』の仇、『歯車フォーチュン』の足取りは、なかなかに追えなかった。
  3台のPCで『みれい』、『楽々』と、めいめいに探すが痕跡が掴めない。
  そこでボクたちは、並行して『ジョーカー』と名乗る男の素性を探った。
  しかし『ジョーカー』の情報、痕跡は、『フォーチュン』以上に掴めなかった。
  更なる手段として、ボクたちはネット上に書き込みを残した。
  【切り札よ出会った地で待つ】
  と、幾つか目につきやすい場所へ匿名で書き残す。
  あとはただ待った。遥か先で虎が掛かるのをPCの前で待ち続けた。
  ──書き込んだ日から5日後──
  白髪の彼はボクらのアジト『ヒタチナカ』の外れにある、白い廃屋へとやって来た。
  見張りの『ハエ』キメラが、高台から彼を見つけていた。
  『タタミ』が中へ呼び込む。
  
  当初、刃物を携帯しようという案があったが却下した。
  彼の剣技の前では、刃物は護身の為にすら役に立たない。
  ボクと『みれい』、『楽々』が、銃を1つずつ携帯して、彼『ジョーカー』を迎えた。
ツクル「まぁ座ってくれ。『タタミ』お茶を頼む」
  ボクは表情の変化を読み取られぬよう『ジョーカー』に席を勧めた。
  『タタミ』が錆びたデスクに湯のみを乗せる。
  『ジョーカーが』が一礼、デスクの上に刀の鞘を置きボクたちへ向き合った。
ツクル「来てもらったばかりで悪いが、」
  試験管立てに容器を置き白衣のままで『ジョーカー』と対面する。
ツクル「おっさんはアイツの事を知ってるのかい?」
  腰を下ろした『ジョーカー』がボクを見、ゆっくりと茶を口にした。その口が極々自然に動いた。
ジョーカー「アレかい。キミたちの『友』を殺めた彼の事かい」
ツクル「大丈夫だ『みれい』。納めてくれ」
  湯のみを撫で、『ジョーカー』がゆっくりとボクへ訊ねた。
ジョーカー「キミたち自身は調べたのかい?」
ツクル「『楽々』、詳細を頼む」
楽々「あいよ! 総隊長♪」
  自身のモニターを前に『楽々』がマウスをクリックする。 窓際に張った白いスクリーンに映像が投影された。
楽々「『歯車』。アフリカに根付いた地球外移民『ノア』、そのグループの1つ」
楽々「検索に『フォーチュン』は掛からなかったけど『生物兵器』関連でリンクの先の先に『歯車』が引っかかってる」
楽々「大きな宣伝が絡んでいるから奴らのバックはたぶん『ノア』以外にも居るはずね」
ジョーカー「・・・・・・そこまでは分かるか」
ツクル「おっさんはそれ以上の情報《モノ》を持っているのかい? なんなら言い値で買うよ」
  チャラけた風に言ってのける。『ジョーカー』は膝に手を置きボクを見据えた。ボクも、目だけを動かして彼の反応を眺めた。
ジョーカー「言い値で払えるのなら、私と取引してみるかい?」
ツクル「なんだい? ウチで聞けるものなら飲もう」
  『ジョーカー』は時間をかけて薄灰色の廃屋、その中のボクたちを眺めまわした。
  メンバーに緊張が走る。動こうとする仲間キメラを目で制した。
ジョーカー「私と組まないか? 私はあらゆる面でキミたちのサポートを約束しよう」
「『ジョーカー』、アナタは一体何者なの? 信用してほしいなら、アナタ自身の事を教えて欲しい」
ジョーカー「キミは?」
  その長い黒髪の少女へ合図を送る。ボクの左前方で彼女、『みれい』が静かに立ち上がった。
みれい「私はこのグループの副隊長、『言霊みれい』。キメラたちの教育を担当しているわ」
  頭をかいてボクは『みれい』を称した。
ツクル「おっさん。『みれい』はすごいよ? 買っておいて損は無い」
  おどけるボクに、至極真面目な顔で白髪の彼が頷いた。
ジョーカー「・・・・・・そうかい、ならキミたちのチカラ、私が買ってみようかな」
  『ジョーカー』が懐から紙を一枚提示する。その書かれた額に『楽々』が唾を飲み込んでいた。
ジョーカー「手始めに100万、とりあえず振り込もう」
  入り口側からぱちぱち、と無表情にも思える面持ちで『タタミ』が歩んできた。
タタミ「おじさん、男前。だね」
ジョーカー「この子は?」
ツクル「この子は『タタミ』。『飼葉タタミ』。あの飼葉コーポレーションの子だよ。そういう事になってる。実質的に」
  「よくぞ言ってくれた!」と、言わんばかりに胸を叩いて咳き込み、『タタミ』が『ジョーカー』の前に新しいお茶を突き出す。
  そして、勢いあまってぶっかけた。あまりの事態に声がつかえる。
タタミ「わたしこそが天下の『飼葉コーポレーション』の嫡女。よろしく。あ、血統書はこれ」
  顔に茶をぶっかけられ、ボクから受け取った紙で『ジョーカー』顔を拭う。彼は表情を変えずに正面のボクを見やった。
ジョーカー「ありがとう。この書面、手書きだが信用に足るのかい?」
ツクル「ああ。ボクが直接『飼葉』と連絡を取っているから間違いない。ふざけた奴だがよく出来る子だよ」
ツクル「この子はキメラたちの調教を主に手掛けている。あの『みぃちゃん』もこの子が育てたんだ」
  自慢げに言うボクへ『ジョーカー』が笑った。拭き漏らした箇所をハンカチで軽く押さえ、それで済ませている。
ジョーカー「ほう。爪を隠すタイプかな? よろしく『タタミ君』」
タタミ「・・・・・・わたし、・・・・・・女の子」
  『タタミ』が、ぷくりと頬を膨らませ平らな胸に盆を押し当て去っていった。
ジョーカー「それでは『歯車』について私から話そう」
ジョーカー「奴ら歯車は、『ノア』の科学分野を先導している一団だ。『フォーチュン』はそのトップを務めている」
  淡々と言いながら、その目がボクを見ていた。
ジョーカー「キミたちが狙われたのはおそらく、『市原《いちはら》くん』キミに原因がある」
ツクル「ボクかい? 何故?」
ジョーカー「キミの父上が開発していた『体細胞クローンの完全開発』、おそらくそれを狙っているんだろうな」
ジョーカー「他にも有用な研究をしていたらしいからね。それら諸々を、だろう」
ツクル「おっさんもうちの『みぃちゃん』たちをご所望かい? この子たちの軍隊でも作るのかな?」
ジョーカー「否定はしないよ」
ジョーカー「あの『ドリー』の誕生から60余年。クローン技術の開発は進んでいるが、霊長類等、その成功率はまだまだ低い」
ジョーカー「だがその成功率が100%なら、私じゃなくても欲しがる輩は多いだろうさ」
ツクル「じゃあ、おっさんはウチの技術が欲しいのかい?」
ジョーカー「いや、私はキミたちの『チカラ』を借りたいんだ」
  ボクたちを見渡す表情は、とても真摯的なものだった。
ジョーカー「この世界を『悪しきモノ』から守る為に」
  『化けクリ』を代表してボクが答える。
  何故か、このオヤジは信用できると思った。素直に彼の目を視られる自分が居る。
ツクル「正義の味方、ってわけか」
ジョーカー「まぁ、そんなところだ。それが私の本質だと思ってほしい」
  ボクたち『化けクリ』メンバーはきっと皆が同じ気持ちだったと思う。
  数々の無礼にも動じない。礼節を踏まえ、更にボクたち『ジャンク』へ対等に接してくれる彼を、迎え入れない理由が無かった。
ツクル「嫌いじゃない、だからまたウチへおいでよ。ボクたちが貧民、『ジャンク』でも良いならね」
  ボクは薬品で拭いた右手を差し出す。 知らず笑みがこぼれた。
ツクル「その時はボクたち『化け物クリエイターズ』がお相手するよ。おっさんにとってのジョーカーで在れるようにね」
  この手を取り『ジョーカー』が力強く握り返す。そこに在ったのは『ジョーカー』という男のさっぱりとした青空のような笑みだった
  𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭

次のエピソード:エピソード5『隻腕のヒトの物語』

コメント

  • 油断のならなそうな新キャラが色々出てきて、波乱の展開ですね!!
    とてもサスペンスフルで、設定も凝っていて奥深いです。
    どんどん世界観に引き込まれていきそうです😄

  • お話の世界観や背景が明かされて!ますます面白くなりました!次話も必ず読みます!すごく面白いです!

  • 4話まで読んでつくづく感じたけど、化けクリ(ボ駆逐)とTapNovelとの相性って凄く良いと思う!兎にも角にも読み易い、解り易い!こと活字媒体に関してはポンコツな僕がそう感じるんだから間違い無いと思う( ̄▽ ̄)ゞ
    絵とアクション(システム)が敷居を低くもしてるんだろうね。改めて本当に面白いのだ!これからも期待してるぜ!!☆(≧▽≦)☆

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