アラフォーの君を愛して

ルーデンス

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〇シックなバー
  俺は宇宙空港近くのとある酒場に飛び込んで、カウンター越しの女性に叫んだ
橋場耀司「翔子、何故コールドスリープして待っててくれなかったんだ!?」
  カウンター越しの女性は悲しそうに目を背けた
愛沢翔子「人違いです、私は翔子ではありません」
  俺は思わずㇰシャッとした笑顔になった
橋場耀司「嘘だね」
  翔子は困惑した顔になった
愛沢翔子「でも本当の耀司さんなら私と同じ39歳のはず、貴方はどう見ても20代前半よ」
橋場耀司「浦島効果のせいさ、ワープ2の速度で一年間宇宙船に乗ってたろ、だから21歳なんだよ」
  翔子は上目遣いで俺に尋ねた
愛沢翔子「でも、それなら何で連絡をくれなかったの?」
橋場耀司「悪い、悪い、帰りの宇宙船が事故になってさ救命艇で脱出したんだ。こうして約束通り一年で戻ってこれたのは奇跡だよ」
  翔子は寂しそうに笑った
愛沢翔子「地球では18年よ」
橋場耀司「でもさ、コールドスリープのお金は君に渡しただろ?」
愛沢翔子「そのお金は騙し取られて・・・できなかったのよ」
  そう言って翔子は両手で目を覆い泣き始めた
愛沢翔子「うぅっ・・・」
  俺は翔子の肩を優しく抱いた
橋場耀司「そうか、辛かったろう?でも頑張ったんだね!えらい」
  幼い女の子が酒場の玄関から勢いよく中に入って来た
愛沢佐奈「お母ちゃんを泣かすな」
  そして俺の脚を蹴り上げる佐奈を慌てて翔子は止めた
橋場耀司「可愛いね、お名前は?」
愛沢佐奈「愛沢佐奈10歳だよ」
  俺は悲しくなって翔子に問いかけた
橋場耀司「結婚、したんだ」
  翔子は寂しく頷いた
愛沢翔子「でも別れちゃったわ、だって浮気がひどくて」
愛沢佐奈「お腹が空いた、お母ちゃん」
橋場耀司「そうだ、三人で食べに行こうよ、奢るからさ」
  俺は何気なく翔子の腕を握りしめて外に向かった。すると腹の出た中年の男が近づいてきた
野際慎太「お客さん、店員を連れ出すならお金を払ってくれないと」
  俺は仕方なくお金を出した
野際慎太「お金が足らないよ、儂の娘の分」
愛沢佐奈「父ちゃん、いい加減にして」
野際慎太「何言ってるんだ儂は翔子に給与を払ってるオーナーだぞ」
愛沢佐奈「給料でなくお母ちゃんをへの慰謝料分割払い分でしょ」

〇ファミリーレストランの店内
  俺達三人は佐奈が好きだというファミレスに入った
橋場耀司「佐奈ちゃんは何が食べたい?」
愛沢佐奈「ウ~ン、スペシャルハンバーグ定食」
  翔子は慌てて佐奈を諫めた
愛沢翔子「もっと安いのにしなさい佐奈」
  俺はそのやり取りを見てほほえましく感じた
橋場耀司「大丈夫、俺の奢りだから」
愛沢佐奈「有難う、おじさん」
橋場耀司「佐奈ちゃん、飲み物はドリンクバーだよ」
  勢いよくドリンクバーに駆け出してゆく佐奈の後ろ姿とそれを見つめる翔子の眼差しを俺は羨ましく思った
橋場耀司「可愛いな、俺もあんな娘が欲しい」
愛沢翔子「宇宙に行かなければ良かったのに」
橋場耀司「仕方ねぇだろ、俺たちの結婚費用を得るには宇宙に行って短期間で稼がなきゃならなかったし」
愛沢翔子「耀司が宇宙に出なければ今頃は私達の佐奈がいたかも知れないわね」
  翔子は寂し気にポツリと呟き俺は言葉に窮して話題を変えた
橋場耀司「なぁ、結婚式いつにする?」
  翔子は俺のその言葉に驚いた表情をみせた
愛沢翔子「け、結婚・・・出来るわけないでしょ!39歳で娘がいるのよ私」
  俺は翔子の手をテーブルの上で優しく握りしめた
橋場耀司「もう別れたんだろうオーナーと、それとも奴に未練があるのかい?」
  翔子は俺を上目使いに見つめた
愛沢翔子「そんな女癖の悪い奴に未練なんて・・・それより私はこの歳だからもう子供は無理。それでもいいの?」
橋場耀司「構わないよ。佐奈ちゃんがいるじゃないか」
愛沢翔子「でもね、耀司は21なんだから私をを選ばずに若い子を選ばなきゃ」
橋場耀司「今の翔子より魅力的な若い女は居ねぇぜ、それに、ありのままの翔子を愛してるんだ俺」
愛沢翔子「一緒に歩いていて耀司を私の息子と間違われるのが嫌なの私」
橋場耀司「それなら、今度は翔子が恒星間宇宙船に一年間乗って俺が地球に残れば年齢が同じになるだろう」
愛沢翔子「地球で十八年間一人でいることになるのよ!いいの?」
橋場耀司「翔子だってそう過ごしてきたんだろう?俺にも出来るさ」
  佐奈がジュース片手に戻ってきた。
愛沢佐奈「いっただきま~す」
  そう言うなり佐奈はスペシャルハンバーグに食らいついた
愛沢翔子「美味しい?よく噛んでね」
  俺はこの親子と暮らすことを想像して楽しくなった
橋場耀司「佐奈ちゃん、お母さんと一年間宇宙旅行してみないか?」
愛沢佐奈「お母ちゃんの慰謝料受け取りをどうするの?」
橋場耀司「振り込んで貰えばいいだろう」
愛沢翔子「もう!耀司の夢に子供を巻き込まないで頂戴。いい!21歳の男が一人で恋人もなく十八年間いられるわけないでしょ」
橋場耀司「やってみなきゃわかんないだろう」
愛沢翔子「私が帰って来たら耀司の奥さんと子供が「どちら様ですか」って聞いてくるにきまってるじゃないの」
愛沢佐奈「お父さんになってくれるの?」
橋場耀司「嫌かい?」
  翔子と俺を探るように交互に佐奈が見ている
愛沢佐奈「いいんじゃない、毎晩おじさんの写真を見つめて泣いているお母ちゃんを見なくてすむし」
橋場耀司「よっしゃ、これで決まりだね翔子」
  翔子が恥ずかしそうに頷いた

〇空港の待合室
  それから数日後、俺達は宇宙空港の出発ロビーに来た
愛沢翔子「この宇宙旅行は18年私を待たせた慰謝料と考えるわ」
橋場耀司「佐奈ちゃん、宇宙旅行楽しんでおいで」
愛沢佐奈「ウン、おじちゃんも18年お母ちゃんを待っててね!約束だよ」
橋場耀司「勿論さ約束する」
  俺は寒そうにしてる翔子の肩に自分が着ているコートを掛けてやった
橋場耀司「愛してるよ、体に気をつけてな」
愛沢翔子「帰ったらプロポーズやり直してね」
  俺は静かに頷いて二人を送り出した

コメント

  • これは面白いアイデアですね‼
    この手の話で、このパターンは聞いたことないかもしれません🤔
    それだけオリジナリティが高いです。
    一見、男性側の業のように見えて、女性側には救いの手かもしれない。
    そうした視点は自分になかったので、感じ入りました‼

  • 宇宙と地球との時間差によって、色々な物が変化した彼らの恋模様がとても良かったです。きっと、彼は彼女たちを待つ事が絶対にできるだろうな、と思いながら読んでいました!素敵な物語ありがとうございました!

  • とっても愛らしいと思わせる恋愛物語ですね。肉体的な年齢差が生じてしまったための年の差恋愛への抵抗を見せる彼女が可愛すぎますね。

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