キミが太陽

空木切

読切(脚本)

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〇大学の広場
  大学構内
一宮カヤ(講義も終わったし、帰ろう)
(大学に入ってもうすぐ一年)
(騒がしいのは苦手だし、結局いつも一人ぼっち。大学生になれば変わると思ったけど)
一宮カヤ「・・・考えても仕方ないか。帰ろ」
  歩き始めたその時──
「わーっ!待って待って止まって!!」
一宮カヤ(後ろから誰か走ってくる!?)
一宮カヤ(に、逃げ・・・)
三波伸二「ああっ!逃げないで!」
三波伸二「怪しい人じゃないよ!本当に怪しくない!」
一宮カヤ(余計に怪しい!)
一宮カヤ(しかも超足遅い!)
一宮カヤ(うーん。可哀想になってきたし、とりあえず待とう)
三波伸二「ぜえ、ぜえ・・・お、追いついた」
三波伸二「そのまま、動かないで・・・」
  男はゆっくり近付いてくる
一宮カヤ(な、何?!怖い・・・!)
  ぎゅっと目を閉じるカヤ。大きな手が近付いて──
三波伸二「わあ可愛い!」
一宮カヤ(私の髪を触りながら”可愛い”って!)
一宮カヤ(どっ、どういうこと?可愛いって、私・・・)
三波伸二「見て見て!ほら、テントウムシ!」
三波伸二「可愛いなあ〜!」
  彼の手には、ちまちま動くテントウムシが
一宮カヤ「て、テントウムシ?」

〇大学の広場
三波伸二「驚かせてごめんね」
  彼の名前は三波伸二。カヤとは違う学科の生徒だ
  カヤの頭にテントウムシが留まっていたのを見て追いかけてきたのだという
三波伸二「女の子って虫が苦手な子が多いでしょ?」
三波伸二「”虫がついてる!”とか言ったら怖いかと思って、あえて言わなかったんだけど」
三波伸二「君は怖がらなかったね」
一宮カヤ(貴方の方が怖かったです、とは言えない)
一宮カヤ「テントウムシなら平気です」
一宮カヤ(可愛いって言ったのも私じゃなくてテントウムシだったし。別に良いけど・・・)
三波伸二「・・・」
一宮カヤ(じっと見てくる。何だろう)
一宮カヤ「あの?」
三波伸二「テントウムシって、お天道様、太陽に向かって飛ぶからテントウムシなんだって」
三波伸二「テントウムシには、君が太陽に見えたのかもね」
一宮カヤ「太陽?私が?」
一宮カヤ「ありえません。私なんて一人ぼっちで、根暗で」
三波伸二「一人じゃないよ」
一宮カヤ「え?」
三波伸二「僕がいるよ、ここに」
一宮カヤ「・・・!」
三波伸二「テントウムシも♪」
  伸二は手の上のテントウムシを嬉しそうに見つめている
一宮カヤ「あはは・・・はい、そうですね」
一宮カヤ(変な人。でも悪い人じゃなさそう)

〇ショッピングモールの一階
  別の日。ショッピングモール
一宮カヤ(急に出かけたくなって来たけど。特に買う物はないな)
一宮カヤ「あっ」
  カヤの目に留まったのは、アクセサリーショップだった
一宮カヤ「在庫処分品・・・」
  その中の一つがカヤの目を引いた
一宮カヤ「テントウムシだ」
  作り物のテントウムシが付いたヘアピンだ
一宮カヤ(三波伸二くんのことを思い出す)
一宮カヤ(あれから会ってないけど)
一宮カヤ「・・・」
一宮カヤ「何考えてるんだ私!もう大学生だし、さすがにこれは子供っぽすぎる!」
一宮カヤ「でも」
一宮カヤ(買わないと捨てられちゃうのかも)
一宮カヤ「・・・」

〇大学の広場
  また別の日
  大学構内
一宮カヤ(用も済んだし帰ろう)
一宮カヤ(何も変わらない日々。私は相変わらず一人ぼっちだ)
一宮カヤ「・・・」
一宮カヤ(後ろから気配が?)
一宮カヤ「?」
三波伸二「やあ!」
一宮カヤ「・・・」
一宮カヤ「ぎゃー?!」
三波伸二「その髪についてるテントウムシは本物じゃないね!」
三波伸二「でも可愛い!」
一宮カヤ「ななっ、なんで後ろからそっと近付いて来てるんですか?!」
三波伸二「男にいきなり声かけられたら怖いかなと思って」
三波伸二「昨日も君を見かけたからこうやって後ろにいたんだけど・・・」
三波伸二「昨日どころか、君と会ってから一ヶ月くらいずーっと後ろから見てたんだけどね」
三波伸二「やっと気付いてもらえて良かった〜!」
三波伸二「いっそテントウムシになりたかったよ本当に!」
一宮カヤ(なんなんだこの人?!)
一宮カヤ「普通に声かけてくださいよ!全然気付きませんでしたから!」
一宮カヤ「でも。どうしてそんなに私のこと気にしてくれたんですか?普通諦めますよね?」
三波伸二「この前言ったからね」
三波伸二「君は一人じゃない、僕がいるって」
三波伸二「テントウムシもね!」
  伸二はカヤのテントウムシヘアピンを嬉しそうに見つめた
一宮カヤ「そうだったんですか・・・ありがとうございます」
一宮カヤ(変だけど優しい人だ)
三波伸二「・・・」
三波伸二「っていうのは全部建前で。本当は、ただ君と話したかったんだ。でも引かれるのが怖くて」
一宮カヤ「!」
三波伸二「僕、周りと馴染めなくて、ずっと一人だから」
三波伸二「会話の仕方とか人との接し方とかよく分からないんだ」
三波伸二「君とまた話したかったけど、どうすればいいのか・・・」
三波伸二「葉っぱついてたよーって嘘ついて声かけようかなあとか、小さいこと考えてて」
三波伸二「・・・」
三波伸二「君と初めて話した時、すごくあったかい気持ちになったんだ」
三波伸二「僕と普通に話してくれて、テントウムシを見ながらちょっと笑ってたりして」
三波伸二「家に帰ってからも、君のこと思い出すとあったかい気持ちになれたから」
三波伸二「やっぱり君は太陽だ。本当は僕がテントウムシだったのかなあ」
三波伸二「なんて。あはは、気持ち悪いよね。ごめん」
一宮カヤ「そんなことないです!」
一宮カヤ(私も・・・また会って話したかった)
一宮カヤ「わ、私も同じで・・・」
三波伸二「・・・そっか。ありがとう。嬉しい」
三波伸二「つまり君と僕は相思相愛ってことだね!」
一宮カヤ「うん??」
三波伸二「僕、人を好きになったのは初めてで・・・あー緊張した!」
三波伸二「これからはずっと二人だね!」
一宮カヤ「ええ?!ま、待ってください!話がよく・・・」
三波伸二「あれ?”君のことが好きだー!”って言ったつもりだったんだけど、伝わってない?」
一宮カヤ(伝わったような伝わってないような!でも)
三波伸二「うーん。会話って難しいな」
三波伸二「僕は君の隣にいたいなあって思う。テントウムシがついてたら教えてあげられるし・・・花とか動物の話もできるし」
一宮カヤ(でも。ちょっと変わってるけど)
三波伸二「魚の話、野菜の話・・・」
一宮カヤ(だいぶ変わってるけど)
三波伸二「宇宙の話も・・・」
三波伸二「ど、どうかな?」
一宮カヤ「・・・」
一宮カヤ「はい!私もいっぱい話したいです!」
三波伸二「ああ──」
三波伸二「やっぱり君の笑顔はすごく可愛い」
三波伸二「僕にとっては、太陽よりも眩しく見えるよ」

コメント

  • 内気な者同士の、ゆっくりとした進み方が凄くよかったです。少し変だけど優しい性格の彼にきゅんと来ました。素敵な作品ありがとうございました!

  • 伸ニ君がとにかく可愛い!!
    テンポ良く楽しく読ませていただきました!

  • なんだか心がほっこりする話でした!!ありがとうございました!!(*^_^*)

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