いつか日の目を見る太郎9

もりのてるは

救出!ウォクライナ難民編(脚本)

いつか日の目を見る太郎9

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〇劇場の舞台
  観衆の歓声は一発の砲弾によって絶叫へと変わった。
  誰が何の目的で撃ったのか、誰にも分からない。
  ただそこに落ちて、多くの人が犠牲になった。
  そういうものだ。
  たった一発の砲弾によって、天国が地獄に変わる。
  そんな世界に人は生きている。
アスニー・プロミスヴィチ「お母さん!お父さん!」
  観劇の最中、突如起こった爆発によって、逃げ惑う人々。
  人波に流され、両親とはぐれた少年。
  アスニー・プロミスヴィチ。わずか8歳の男の子。
  幼き妹、ミライノ・プロミスヴィチの手を握りながら、
  必死に両親の姿を探すも見えず、
ミライノ・プロミスヴィチ「嫌だ!どこいったの?お母さん!お父さん!」
  どれだけ叫んでも声届かず。
  人々の絶叫、悲鳴、怒号にかき消される声。
  絶望。
  絶望の二文字が頭をよぎる。
  再びの爆発によって、アスニーの意識は飛ぶ。
  掴んでいたはずの妹の腕の感触が消え、
  全ては空白の中へと消えていく。

〇荒廃した市街地
  荒れ果てた大地の片隅で、芽吹くように目を覚ましたアスニー。
  朦朧とした意識の中であたりを見回すと、人の気配はない。
  亡霊のように揺らめく煙。鼻をつく異臭。硫黄のような、気味の悪い匂いに思わず顔をしかめ、アスニーは咳き込む。
  僅か数時間前の惨劇が脳裏に浮かぶ。
  思わずこみ上げてきた絶叫。
アスニー・プロミスヴィチ「ミライノ!どこだ!ミライノ!」
  叫んでも、返事はない。
  荒れ果てた大地に一人。灯火のような魂を抱えて、先の見えぬ暗闇の中で絶望する。
  いっそ、死んでしまえば楽になるだろう。
  父も母も、ミライノも、死んでしまったのだ。
  僕も、早く行かなくちゃ。
  遠くで銃声が聞こえる。
  銃声に混じって笑い声が聞こえる。
  砲弾を撃った奴らだろうか。
  アスニーはそっと、近くの崩れ落ちた家の陰に隠れた。
デストローニ将軍「はっはっは、みんな死にやがったな。雑魚どもが、天罰だ!」
  たっぷりと髭をたくわえた禿げ頭の男が笑っている。
  軍服を着て、数人の若い兵士を連れてあたりを見回している。
デストローニ将軍「いいか、若者たちよ。この世界は強い者が常に勝つ。お前らも覚えておくがいい。弱い者から消えていく。最後に勝つのは常に強者だ」
  その言葉に、一人の若者が答えた。
兵士1「で、ですが、デストローニ将軍。この戦争は一体何のために行われているのですか?」
デストローニ将軍「そんなこと、お前が知る必要はない。ただ目の前の人間を殺せばいいのだ」
兵士1「そんな・・・これは、ゲームじゃないんですよ?」
デストローニ将軍「だったらゲームだと思え。お前らは戦争ゲームが好きだろう?」
兵士1「ゲームならやりますけど、本物は・・・」
デストローニ将軍「ほう。じゃあ、あっちの世界で戦争してろ」
  とたん、銃声。
  一人の若い兵士が地面に倒れこんだ。
デストローニ将軍「お前らも、ゲームだと思えよ。生意気言ったら、あの世で永遠に戦争させてやる」
兵士2「ひ、ひいいいいいい」
デストローニ将軍「震えあがる若い兵士たち。呵呵大笑の将軍」
デストローニ将軍「我々の偉大なる大統領。パーチン大統領が決めたことだ」
デストローニ将軍「このウォクライナの地を、そしていずれ世界を統治する。お前らは、その大儀を背負っている!わかったか!」
兵士2「イエッサー!!!!」

〇荒廃した市街地
  気が遠くなるほどの恐怖に襲われ、アスニーは体の震えを抑え込んだ。
アスニー・プロミスヴィチ「誰か・・・誰か助けて・・・、お願い、神様」
  誰かが、ぽんぽんとアスニーの肩をたたいた。
  アスニーは、心臓が止まるほどの恐怖を覚えた。
  すると、後ろから声が聞こえた。
  それは、ウォクライナ語で、次のような意味の言葉だった。
「助けに来たよ」
  地球の底から聞こえてきたかのような、マントルの熱を帯びた言葉。
  アスニーは、その言葉を聴いて涙した。
  今、誰かが自分を助けに来てくれたのだ。
  ゆっくりと後ろを振り向く。
  そこには、太陽のような目を持つ男がいた。
  一目見て、異国の男だとわかった。
  日出ずる国に生まれながら、
  いまだ、日の目を見ない、まっすぐな心を持つ男。
  顔に二つの太陽、または二つの向日葵を咲かせた男。
  どん底にあって、強くたくましい男。
  われらが、いつか日の目を見る太郎。
いつか日の目を見る太郎「助けにきたよ」
アスニー・プロミスヴィチ「あ、ありがとう。異国の人」
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
アスニー・プロミスヴィチ「う、うん。ありがとう」
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
アスニー・プロミスヴィチ「あ、ありがとう・・・」
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
  いつか日の目を見る太郎、不覚。
  覚えた言葉、「助けにきたよ」のみ。
  それ以外のウォクライナ語、知らず。
  それもそのはず、この男。単なる社畜。
  ある時は便所掃除、あるときはよく分らぬ撮影場に駆り出され、ある時は人助けをし、ある時は絵を届けに行く。
  言われるがままに、各地へ赴き、そのたびに結果を出してきた男。
  しかし、その功績、誰にも認められず。
  いつまでたっても、日の目を見ず。
  それでも数奇な運命。今度はウォクライナに派遣され、向日葵の種を集めるという謎の仕事。
  まるで、ハムスターの奴隷。ハムスターのボスからの指示のような仕事。
  それでも、「ハイ、ヨロコンデ!」の庄や精神。
  良質な向日葵の種を集めている最中、戦争に巻き込まれる。
  ペペ・ローシアの大統領、パーチンがウォクライナに戦争を仕掛けた。
  全ての向日葵から視線を集めながら、いつか日の目を見る太郎、向日葵の栽培主、ヒポポタマス・キレイズキー首相から、
  「会う人には必ず、助けにきたよと言って、助けてあげてください」
  と言われ、そのままそっくり、受け継いだ。
  そして、いま、目の前の少年に「助けにきたよ」と言い、それ以外の言葉、何も言えず。
  それでも、目で気持ちを伝える。いつか日の目を見る太郎。
  不思議と、思いを理解するアスニー。
アスニー・プロミスヴィチ「お願い、助けて、異国の人」

〇荒廃した市街地
  アスニーの手を引きながら、逃げ道を探るいつか日の目を見る太郎。
  しかし、この男、生来の間抜け。
  物音立てまくり。即座に気づかれる。
デストローニ将軍「こら!何者だ!貴様!」
  訳も分からぬ言葉で怒鳴られ、いつか日の目を見る太郎、絶叫。
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ~~~~~~~!!!!!!」
デストローニ将軍「なんだと?誰をだ!?」
  怒鳴るデストローニ将軍。しかし、いつか日の目を見る太郎、
  まっすぐに将軍を見つめながら、
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
デストローニ将軍「だから、誰をだ!?」
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
デストローニ将軍「くっ」
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
デストローニ将軍「ううう・・・」
  分からない。何がなんだかわからない。しかし、異国の人間の放つ、まっすぐな「助けにきたよ」に、なぜか涙が止まらない。
  その場にひざまずき、倒れこむデストローニ将軍。
  それに連なって、ペペ・ローシアの若い兵士たちもひざまずく。
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
  何度も、まるで念仏のように唱えるいつか日の目を見る太郎。
  しかし、いつか日の目を見る太郎、悲しいくらいに、その言葉以外、知らない。
  それでも、状況は理解できた。
  今は、戦争中。
  誰かと誰かが、目の前で争っているのだ。
いつか日の目を見る太郎「だったら、救うしか、ないですな!」
  アスニーを背負い、地面にひざまずくデストローニ将軍を後にして、
  いつか日の目を見る太郎は走った。
  行く場所は一つ。
  徳野池どん床が待っている、難民キャンプだ。

〇キャンプ地
徳野池どん床「えー、応答せよ。こちらゴルゴ徳野池。 もう一度言う、応答せよ。こちらゴルゴ徳野池」
  難民キャンプ場で、ウォクライナの首都ピラフから逃げてきた難民を受け入れつつ、
  各地で交通手段のない人々をピックアップし、
  難民キャンプ場に連れてくるように指示を出す。ポク電公社ナンバー2の男。
  この男、誰の指示でこの場にいるのかと問われても、偶然としか言いようがない。
  たまたま、近くのウズベキスタンでパスタを楽しんでいたところ、近くで戦争が起きたということで、即座に動いた。
  インターネットを通じ、凄腕投資家CODE JCより支援金を受け、ボロ車をなんとか運転しながら、難民をキャンプ場へと案内。
  手厚い物資の供給は、これもまた運命のいたずら。たまたまワルシャワンで起業を目指していた若き三人の青年と出会う。
  ミスター・ビッグ
  センシティブ・ケイ
  ミステリアス・Mの三人と合流。
  ウォクライナの難民支援のためにチームを結成。
  完璧な指令を下すCODE JC、その行動に従うゴルゴ徳野池、その行動をサポートする三人の青年。
  奇跡のような巡り合わせの中で、これもたまたまその場にいたいつか日の目を見る太郎が加わり、最強のチームが結成されていた。
徳野池どん床「戦争というものは、どっちも正しいと思っているから終わらないと、昔、何かの漫画で読んだことがある」
  徳野池どん床は、難民キャンプに訪れた人々の傍に近づいて声をかけた。
徳野池どん床「あなたたち市民には、何の罪も無い。争う者、奪う者、双方に理由があるんだ」
徳野池どん床「だから、恨むとか、憎むとかじゃない。そういうものなんだ。戦争は」
徳野池どん床「だから、今はあなたたちの命を大事にしてほしい。私たちは、それを全力でサポートするから」
  優しい眼差しを向ける徳野池のトランシーバーに、底抜けに明るい声が響いた。
「こちらいつか日の目を見る太郎!ただいま、少年を抱えて爆走中ですな!」
徳野池どん床「おお、見る太郎くんか。君、今どこにいるんだ」
「はいな!今はベラボーニの近くですな」
徳野池どん床「おお、ピラフの上か。そこからだと、車で2時間はかかるな」
「いえ、あと30分で着きますな!」
徳野池どん床「無茶はするなよ?」
「足が砕けてでも、走りますな!」
徳野池どん床「バカ・・・」

〇キャンプ地
  事実。たった30分でやってきたいつか日の目を見る太郎。
徳野池どん床「君、大丈夫か」
いつか日の目を見る太郎「困っている人々に比べれば、屁でもないですな!」
  見れば、いつか日の目を見る太郎の足、素足。途方もなく、傷ついた素足。
  ボロボロの服。泥だらけの顔、傷だらけの素足。されど、一点の曇りなき眼
徳野池どん床「よく頑張ったな、見る太郎君」
いつか日の目を見る太郎「はいな!でも、まだまだ行けますな」
徳野池どん床「あまり無茶をするんじゃないぞ」
いつか日の目を見る太郎「おらの辞書に、無茶の文字はないですな。 ナッシング・グリーン・ティーというやつですな」
徳野池どん床「冗談が言えるなら、大丈夫そうだな」
  数分後には、風のように走り去っていくいつか日の目を見る太郎。難民キャンプに訪れたアスニー。
  両親と妹を探すも、姿見えず。
アスニー・プロミスヴィチ「母さん、父さん、ミライノ・・・」
徳野池どん床「どうした、少年」
アスニー・プロミスヴィチ「僕の両親は・・・妹は・・・、今どこにいるんですか」
  潤いのある目を見て、どん床、言葉に詰まる。
  別れ。それは非情な別れ。
  弾丸と、思惑と、無慈悲な争いによって訪れた別れ。
  されど、市民に罪無し。
  今は、彷徨い、惑い、困難な状況に陥った市民を救う以外に手段無し。
徳野池どん床「大丈夫。きっと、どこかにいる。見つけてくれるさ、彼なら」
アスニー・プロミスヴィチ「彼は、なんという名前ですか」
徳野池どん床「いつか日の目を見る太郎。努力の大地に、向日葵を咲かせる男だ」
アスニー・プロミスヴィチ「努力の大地に、向日葵を・・・」

〇基地の広場(瓦礫あり)
  爆音が吹き荒れる戦地。
  二人の男、とにかく銃を乱射。
バゴバチョフ「おい、ペッコリーニ。俺たちは誰のために争っているんだ?」
ペッコリーニ「考えたくもねぇな。精子と卵子じゃねぇか?」
バゴバチョフ「生死と乱視?」
ペッコリーニ「どうでもいいぜ、そんなの。それよか、バゴバチョフ。向こうを見ろ」
バゴバチョフ「なんだありゃ、アジア人か?」
ペッコリーニ「物凄い勢いで走ってやがる」
バゴバチョフ「竜巻じゃないのか?」
ペッコリーニ「風が吹いていると思うか?」
バゴバチョフ「いや、吹いてねぇな」
ペッコリーニ「でもよぉ、あそこには吹いてるみてぇだな」
バゴバチョフ「ああ、間違いなく、あそこにだけ風が吹いているな」
ペッコリーニ「どんな風だろうな」
バゴバチョフ「さあ、見当もつかねぇな」
  2分後、ペッコリーニとバゴバチョフは竜巻に吹き飛ばされる。
  とんでもない勢いで走る一人の男の起こす竜巻に吹き飛ばされる。
  その竜巻を起こす男、何を隠そう、いつか日の目を見る太郎。
  荒れ狂う海に放り投げられても、自力で泳いで船へと戻ってくる男。
  常人離れした体力。火事場の馬鹿力ならぬ、戦場の馬鹿力。
  次々と難民をピックアップし、怒涛の勢いで難民キャンプへと送り込む。
  さながら、韋駄天。戦場の韋駄天。

〇荒廃した市街地
難民3「おい!あの竜巻を見ろ!!!!こっちに向かってくるぞ!!!」
難民4「し、信じられねぇ。人だ!人が走ってやがる!!!!」
いつか日の目を見る太郎「助けにきたよぉおおおおお!!!!!!!!」
  風速、毎時1347km。信じられない爆速。もはや想像もできぬ爆速。
  時空がひずむほどの速度。光よりも早く、アインシュタインも腰砕けの速度。
  ただひたすら、救いたいという思いに貫かれて、走り続けるいつか日の目を見る太郎。
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
サン・プロミスヴィチ「な、なんだ君は」
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
ミランダ・プロミスヴィチ「ちょっと、あなた、この人、怖いわ」
サン・プロミスヴィチ「そうだな。殺されるかもしれない。お前とミライノは、逃げなさい」
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
サン・プロミスヴィチ「す、すまないな。異国の人、私はあなたが信用できない」
  目の前にいるのは、訳の分らぬ異国の男。
  争いに巻き込まれ、難民と化した市民の中には容易に他人を受け入れる人少なく、
  目の前、夫妻、そして小さな少女。
  いつか日の目を見る太郎、受け入れられず。
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
サン・プロミスヴィチ「すまないが、どこかへ行ってくれないか」
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
サン・プロミスヴィチ「いいんだ。私たちは自力で逃げるから」
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
  どれだけ言葉にしても、伝わらないもどかしさ。
  居ても立っても居られず、いつか日の目を見る太郎、日本語で訴える。
いつか日の目を見る太郎「助けにきましたですな。難民キャンプにお連れしますな!」
いつか日の目を見る太郎「一刻も早く逃げないと、危ないですな!デンジャラス!ソーソー・デンジャラス!」
  不信感を抱く目。二つの太陽を曇らせる、不信感の目。
  ぐっと、気持ちをこらえて、いつか日の目を見る太郎、言い続ける。
いつか日の目を見る太郎「命、大事!生きること、大事!逃げること、生き続けること、あきらめないこと!」
いつか日の目を見る太郎「それが、一番大事!ブラザー!ユーアンドミー!ブラザー!」
  すると、少女、ぐっと母の腕をひき、
ミライノ・プロミスヴィチ「母さん、この人、悪い人じゃない気がする」
ミランダ・プロミスヴィチ「そうね。私たちを助けようとしてくれている」
サン・プロミスヴィチ「信じてみよう。この人を」
  力を込めて、いつか日の目を見る太郎、ウォクライナ語で言い放つ。
いつか日の目を見る太郎「助けにきたよ!」

〇魔王城の部屋
オモテジミナイ・パーチン「まったく!どうなっとるんだ、ウォクライナはまだ落ちないのか!?」
  豪華絢爛な大統領室。苛立つパーチン大統領。
  ペペ・ローシアを収める男。常に上半身裸の男。
オモテジミナイ・パーチン「奴らは、わしの大好きな納豆(NATTO)を奪い、最高の温泉場、いい湯(EU)まで 奪おうとした」
オモテジミナイ・パーチン「もともとは、ペペ・ローシアの領土であったのに、許せん、許せん。天が、許す筈がない」
オモテジミナイ・パーチン「天が、天が、このペペ・ローシアに味方するはずなのだ!」
  いきりたつ、パーチン大統領。赤と白の紅白のハチマキを頭に結びながら、ばんばんと机を叩く。
  額からは滝のように汗が噴き出している。
秘書「大変です!パーチン大統領!」
オモテジミナイ・パーチン「どうした。何が起きた!?」
秘書「きょ、巨大な竜巻が!こちらにやってきています!!!!」
オモテジミナイ・パーチン「た、竜巻!?こんなときに自然が我々の敵になったのか?」
秘書「い、いえ。それが、アジア人が、竜巻の中心になっておりまして・・・」
オモテジミナイ・パーチン「ワッツ?どういうことだ?意味が分からん」
秘書「あの、私もどう説明していいかわからないんですけど、アジア人が・・・」
オモテジミナイ・パーチン「アジア人がどうした。くそ、アジアまで我々の敵になるというのか。 放っている領土を奪おうと言うのか!?」
秘書「違うんです。ものすごい勢いで、見知らぬアジア人が、竜巻を起こしながら走って向かってくるんです!!!!」
オモテジミナイ・パーチン「そ、そんな馬鹿なぁああああああ!!!!!!」
  ドゴォオオオオオオオオン

〇荒廃したショッピングモール
  パーチン大統領のいるペペ・ハウス。竜巻によって崩される。
  否、いつか日の目を見る太郎の勢いによって崩される。
  ボロボロに崩れながらも、なんとか一命をとりとめたパーチン大統領。
  目の前、粉塵の中に立つ男。
  ギラギラと光る。二つの太陽。
  仁王だつ男。
オモテジミナイ・パーチン「き、きさま!!!!!何者だ!!!!!」
いつか日の目を見る太郎「助けにきたよ!!!!!!!!」
オモテジミナイ・パーチン「はぁあああああああああ!!!!!!???????」
  いつか日の目を見る太郎、実は迷子。
  広大な大地、ペペ・ローシアで迷子。
  どこをどう走っているのか、もはや分からず、
  ただただ、目の前に困っている人がいれば救い、即座に難民キャンプにターンバック。キャンプの位置だけは忘れず。
  それもそのはず、手厚い徳野池どん床のサポート有。
  されど、つい数時間前、勢いあまって持っていたトランシーバー破壊。
  通信手段、自ら意図せず立ってしまい、いつか日の目を見る太郎、迷子。
  されど、奇跡起こり。
  辿り着いたのは、ペペ・ローシアの大統領の目の前。
  天が味方した。
  いつか日の目を見る太郎に。
オモテジミナイ・パーチン「く、信じられぬ。この私を助けにきただと?」
いつか日の目を見る太郎「あれま、あなた、日本語が喋れるんですな!?」
  一国の大統領ともあれば、数か国語喋れるのは当たり前。
  当然、パーチン大統領、日本語流ちょう。
  余談、パーチン大統領が初めに覚えた言葉。
  「いけず」
オモテジミナイ・パーチン「まずは名を名乗れ!!!」
いつか日の目を見る太郎「は、はいな!おいら、いつか日の目を見る太郎と申しまして、下総の国・・・」
オモテジミナイ・パーチン「ええい、知らぬ。なんだそのヘンな名前は。貴様、何をしにきた!」
いつか日の目を見る太郎「は、はいな!助けにきました」
オモテジミナイ・パーチン「わたしは、誰の助けもいらん!!!」
いつか日の目を見る太郎「へっ!?どうしてですな」
オモテジミナイ・パーチン「わたしは、ウォクライナを滅ぼす。何も困っておらん。潰す!徹底的につぶす!」
いつか日の目を見る太郎「それはどうしてですかな」
オモテジミナイ・パーチン「奴らが、わたしの納豆と、いい湯を奪ったからだ!」
いつか日の目を見る太郎「なんと!納豆と温泉が好きですかな!?気が合いますな」
オモテジミナイ・パーチン「知るか!潰す!やつらを潰す!納豆も奪い返し、いい湯も奪い返す。 世界に見せつけてやるのだ」
オモテジミナイ・パーチン「このペペ・ローシアが、ペペ・ローシアが、」
オモテジミナイ・パーチン「粘り気のある、最高に卑猥な、エッチな温泉を持っていることを!」
  パーチン大統領の勢いに気おされる、いつか日の目を見る太郎。
  しかし、パーチン大統領の野望、意味不明。
  納豆と温泉、何の因果か。
  粘り気とは、いったい何なのか。
  そもそも、なぜペペ・ローシアなのか。
いつか日の目を見る太郎「よくわかりませんが、あなたは難民ですな」
オモテジミナイ・パーチン「なんだと!?わたしはれっきとしたペペ・ローシア人だ」
いつか日の目を見る太郎「いえいえ。難民ですな」
オモテジミナイ・パーチン「どこが難民だというのだ!潰すぞ!」
いつか日の目を見る太郎「世界の難民ですな」
オモテジミナイ・パーチン「なん・・・だと・・・?」
いつか日の目を見る太郎「争いを起こして、世界中から嫌われて、行くあてもない」
いつか日の目を見る太郎「難民。どこからどう見ても世界から迷った難民。 おいらにも、覚えがありますな」
いつか日の目を見る太郎「どこへ行っても、誰も助けてくれないような、地獄の寂しさを、大荒れの海に放り投げられたときも、キツく怒鳴られたときも、」
いつか日の目を見る太郎「父ちゃんも母ちゃんもいなくなって、祖父母の家に移ったときも、おいらは、ずっと独りぼっちかもしれないって、怖かったですな」
オモテジミナイ・パーチン「貴様と私が、同じだと・・・?」
いつか日の目を見る太郎「迷ったら、空を見ろと婆ちゃんが教えてくれました。燦燦と輝く太陽を見ろと」
いつか日の目を見る太郎「ずっと、おいらは太陽を見てきた。 いつか、おいらにはあの太陽のように、日の目を見る日がやってくると、信じて生きてきた」
いつか日の目を見る太郎「昨日も、今日も、そして明日も、いつか日の目を見る。それを信じるから、おいらは毎日、生きていられる」
いつか日の目を見る太郎「でも、あなたは今、迷っている。あなたは、支えを失ってる。世界中から嫌われて、ほんの小さな、プライドに頼ってる」
いつか日の目を見る太郎「だから・・・だから・・・」
  力強く、いつか日の目を見る太郎は言い放つ。
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
オモテジミナイ・パーチン「だ、黙れ黙れ!何が、何が、何が・・・」
  パーチンの目から、零れる涙。

〇ファンタジーの学園
  この男、生まれてから一度も道を踏み外したことのない男。
  エリート中のエリート。すべての人々から受け入れられ続けてきた男。
  やることなすこと、全てに賞賛が集まる。
  どんな行為も認められ、罰せられず、崇め奉られる。
  人生、ずっとスター状態。無敵、終わることのない無限のレインボー・ボディ。
  されど今、ふと周りを見れば、世界各国がペペ・ローシアの敵。
  行くあてなし。退路無し。どこへも逃げれず八方塞がり。
  これまで自分が信じてきたもの、積み上げてきたもの、無残に崩れさって、
  ふと後ろを振り返れば、何もなし。
  まるで、賽の河原。積み上げた石、あと一歩で崩れ落ちて立たず。
  一体だれが、石を崩したというのか。

〇荒廃したショッピングモール
オモテジミナイ・パーチン「ううう・・・そんな、そんな・・・」
いつか日の目を見る太郎「助けに来たよ」
オモテジミナイ・パーチン「ぐ、ぐうう、ぐうううう」
  そっとパーチン大統領を背負ういつか日の目を見る太郎。
  目指す場所はただ一つ。

〇キャンプ地
徳野池どん床「くそ、いつか日の目を見る太郎くんとの連絡が取れんぞ!」
  難民キャンプ。苛立つ徳野池どん床。
  数時間前に、いつか日の目を見る太郎との通信が途切れた。
  信じられない速度で、ウォクライナから逃げてきた難民を退避させることができた。
  様々な人々が、数奇なめぐりあわせによって、人道支援に参加した。
  数えきれないほどの難民を、アジアの、小さな島国の、日本人が救ったのだ。
徳野池どん床「帰って来い。いつか日の目を見る太郎・・・」
アスニー・プロミスヴィチ「あの、おじさん・・・」
徳野池どん床「お、おお。アスニー君か」
アスニー・プロミスヴィチ「お礼を言いたくて、これ」
徳野池どん床「こ、これは・・・」
サン・プロミスヴィチ「世界最高品質のひまわりの種が育つと、このような美しい姿を見せてくれるのです」
サン・プロミスヴィチ「息子にもう一度会わせてくれて、ありがとうと、彼に伝えたい」
徳野池どん床「あの男、礼も聞かずに去っていったのか・・・」
サン・プロミスヴィチ「アジアには、たくましい男がいるのですね。まるで向日葵のように、太陽を追い続ける男が」
徳野池どん床「ええ、ですが、彼自身もまた、太陽のような男ですよ」
サン・プロミスヴィチ「そうですね。太陽は沈んでも、何度でも昇る」
徳野池どん床「おっしゃる通り。彼は、沈んでも、沈んだ先を照らす男。 必ず、戻ってくると私は信じています」
アスニー・プロミスヴィチ「あ、父さん!!!!あれを見て!!!!」
サン・プロミスヴィチ「彼だ!あれは間違いなく、いつか日の目を見る太郎だ!!!!」

〇キャンプ地
  数分後、難民キャンプに到着したいつか日の目を見る太郎。
  ばったりと床に倒れこんだ。
  見る太郎が背負っていた男が、申し訳なさそうに周囲を見回す。
オモテジミナイ・パーチン「こ、ここが・・・難民キャンプ」
徳野池どん床「む、あ、あなたは!!!」
  パーチン大統領、いつか日の目を見る太郎の爆走によって難民キャンプに訪れる。
  それを見たウォクライナ人の目、吊り上がり、絶叫する者、怒り狂う者、今にも襲い掛かろうと肩を鳴らす者。
難民「こ、ころせ!こいつだ!こいつが、この戦争の。首謀者だ!」
難民「ひいい、恐ろしい。死ね!死ね!さっさと死ね!!!!」
難民「悪魔!人殺し!消えろ!消え去れ!!!!」
  悪口雑言、罵声に次ぐ罵声が浴びせられる。パーチン大統領、ひれ伏して、何も言わず、徳野池どん床、必死に周りを抑え込む。
徳野池どん床「いつか日の目を見る太郎くん、彼が何者か、知っていてここに連れてきたのか?」
いつか日の目を見る太郎「誰がどうとか、関係ないですな・・・」
  疲れ果て、地面にうつ伏せになりながら、絞り出すように声を出すいつか日の目を見る太郎。
徳野池どん床「なんだと?彼は、パーチン大統領だぞ。ペペ・ローシアの大統領だ」
いつか日の目を見る太郎「関係ないですな」
徳野池どん床「そんなわけあるか。ウォクライナ人の敵。世界の敵だ」
いつか日の目を見る太郎「知ったこっちゃないですな」
徳野池どん床「そんなことで、ウォクライナ人が納得するわけないだろう」
いつか日の目を見る太郎「じゃあ、言わせてもらいますけどね」
  じっと、どん床の目を見て、いつか日の目を見る太郎は言葉を放った。
いつか日の目を見る太郎「目の前で困っている人、助けてあげるの当たり前」
徳野池どん床「そ、それは、そうだが・・・」
いつか日の目を見る太郎「宇宙人でも、象さんでも、困っていたら、助けてあげるの当たり前」
徳野池どん床「し、しかし・・・」
いつか日の目を見る太郎「しかしもお菓子も関係ないですな。困っている人を助けただけ!それだけですな!」
徳野池どん床「まったく、君には敵わないな・・・」
  されど、ウォクライナ人の怒り収まらず、殺せ殺せの大合唱。
徳野池どん床「これじゃ、収まらんぞ。どうする、いつか日の目を見る太郎くん」
オモテジミナイ・パーチン「ここは、わたしに話をさせてくれ」

〇キャンプ地
オモテジミナイ・パーチン「わたしのせいで、多くの人の命が奪われたことは認める。だが、わたしにもわたしなりの理由があって行動したのだ」
オモテジミナイ・パーチン「それを改める気はない。わたしは何も間違っていない。そして、あなたたちも何も間違っていない」
オモテジミナイ・パーチン「戦争というのは、そういうものだ。どちらも正しいと思っているから、争いが起きて、終わらないんだ」
徳野池どん床「それ、何かの漫画で読んだことがありますよ」
オモテジミナイ・パーチン「そこに倒れこんだアジア人。いつか日の目を見る太郎くんと言ったか、」
オモテジミナイ・パーチン「彼も、彼の思う正しさで行動した。事実、多くのウォクライナの難民が、彼によって救われた。これは紛れもない事実だ」
オモテジミナイ・パーチン「そして、私は今、こう思う。戦争を、終わりにしよう」
徳野池どん床「争いが終わるそうだよ、いつか日の目を見る太郎くん」
  にっこりと、満面の笑みでいつか日の目を見る太郎は笑って、
いつか日の目を見る太郎「あら、そう?」

〇西洋の城
  その後、ウォクライナの難民、無事にウォクライナに戻り、ペペ・ローシア、きつく世界各国に怒られるも、
  仲直りし、やがて、粘り気のある温泉地も世界各国に出来上がる。いつか日の目を見る太郎の活躍、
  そして多くの名もなき支援者によって、再び、荒れた土地、活気づく国へと様変わり。
  後、ウォクライナの大統領となったアスニー・プロミスヴィチ。
  二度と、争いのない国を誓い、その生涯を終えるまで平和な国を維持し、死の間際、一人のアジア人の名をつぶやき、
  感謝してその生涯を閉じる。
  しかし、それはまだ遠い先の話。
  今はまだ、戦争が終わったばかり。
  ただ命を助けるためだけに奔走した男に、感謝をするばかり。
  やがてウォクライナも、日の目を見る。
  いずれペペ・ローシアにも、安寧が訪れる。
  いつかいつかと、信じ続ける。
  日の目を見る日がやってくることを。
  向日葵のように、満開の花が咲く日がやってくることを。

コメント

  • 会話の中にあった「誰のために戦ってるんだ。」のセリフが頭に残って離れません、急に戦えと言われて、憎んでもない人と戦わないといけないんですよね。悲しいです。

  • 不器用で真っ直ぐでそれでいて人々の心に響く太郎の目は最強です。太郎くんの目は向日葵ですな。彼の辞書に「無茶」がないは久々の名言です。

  • ま、まさかの太郎が戦地に登場するとは思っても見ませんでした!しかしふざけてるのかなと思いつつ、実は本質を捉える戦争に対する考察も垣間見られ、そして戦争終結の答えのヒントすら提示している…のだろうか?

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