読切(脚本)
〇カウンター席
佇む姿は自然と視線を惹きつける。
容姿端麗、という言葉で片付けるには勿体ない。
そんな男子が、一人窓の外を眺めている。
???「ねぇ、あの人すごいイケメンじゃない?」
???「・・・格好いい・・・!」
一人でカップを傾けながら窓の外を眺めている姿は、まるで物語から抜け出してきたかのような・・・
???「・・・・・・ごめん!」
ソラ「忘れ物に・・・・・・駅で気づいて。 遅れてゴメン」
???(待ち合わせだったのね・・・)
ハル「全く・・・」
ハル「エウリダーレ国騎士心得にも、"守るべきものは民と友と時間である"と記載があるだろう?」
ソラ「エウリ・・・? 相変わらず何言ってるかよく分らないけど、遅れたことはごめんな」
ハル「まぁ、我が盟友であるソラだからな! 今回は赦してやろう!」
ソラ「相変わらず、出だしからアクセル全開だよな・・・」
ハル「おう! 俺は最初から最後までクライマックスだぜ!」
ソラ「世界観めちゃくちゃじゃねーか!」
〇渋谷駅前
ソラ「で、なんだっけ 今日は新作のグッズだっけか?」
ハル「流石、まさにその通りだ 騎士団長の名は伊達じゃないな」
ソラ「はいはい、 お褒めに預かり光栄です、騎士王さま」
ハルはいわゆる、ロールプレイ型の中二病オタクだ。
エウリダーレという架空の王国の騎士王が彼で、どうやら僕は騎士団長らしい。
ソラ(口調とかはアレだけど・・・・・・)
ソラ(趣味だけは抜群に合うんだよな・・・!)
そんな理由もあり、なんだかんだで入学してからかれこれ2年の付き合いになる。
ハル「時に、ソラよ」
ソラ「どうしたんだ、改まって」
ハル「我の推しは、”きらりちゃん”なんだが・・・」
ソラ「あ、わかる。かわいいよな!」
ハル「なっ! まさか、貴様も・・・!」
ソラ「安心しろ 僕の推しは、”やよいちゃん”だ」
ハル「で、あるならば・・・」
ソラ「ああ、 互いの推しが出たら、トレードだ!」
ハル「我が盟友(とも)よ!!」
そんな他愛もない話をしていた時だった。
視界の端を何かが掠め・・・
ソラ「なんだ、今の!?」
〇温泉の湧いた渋谷
ハル「くっ、敵国の攻撃かっ?」
ソラ「何かが降ってきたようだったけど」
〇温泉の湧いた渋谷
???「──、──」
ソラ「な・・・人、なのか・・・?」
ハル「下がれ、ソラ なんかヤバい雰囲気がする!」
〇温泉の湧いた渋谷
ソラ「なんだ、今の!」
ハル「あそこの奴がビームのようなものを出したようだ」
???「──、──」
ソラ「おい・・・まてよ なんかこっち向かってくるぞ」
ハル「・・・!」
???「──、──」
ソラ「く、来るな・・・!」
ハル「・・・!!」
???「──、──」
ハル「おいてめえ、 俺の友達に指一本触れてみろ・・・」
ハル「・・・絶対に、許さないからな!!」
???「──、──」
視線を逸らすことなく、奴を睨みつけるハル。
そんな視線に何かを感じたのか、
奴はどこかへ去っていった。
〇温泉の湧いた渋谷
奴が去った後も、驚きのあまり
しばらくはその場を動けなかった。
ぼうっとしている間に、あたりは鎮火され、残ったのは地面の穴だけだ。
ハル「・・・無事か、ソラ」
ソラ「ああ・・・無事だけど・・・」
ハル「良かった・・・」
ソラ「お前の口調って・・・ いや、それよりなんであんなこと!」
ハル「あんなこと・・・?」
ソラ「いや、僕を庇うように前に出ただろ」
そう、あの時ハルは間違いなく僕を庇っていたはずだ。
ソラ「いや、その前に・・・」
ソラ「助けてくれて、ありがとう」
ハル「いや、助けただなんて! 奴が勝手にどっかいっただけだぜ?」
ソラ「それでも・・・ありがとう」
ハル「・・・・・・」
ソラ「でも、どうしてあんな危ない真似したんだ」
ソラ「どう見ても奴は僕の方に向かってきてた」
ソラ「そのまま逃げてくれれば ハルは何事もなく無事だったはずだ」
ソラ「なのに、どうして・・・?」
ハル「ダメなんだよ・・・」
ソラ「・・・・・・?」
ハル「君が居ない世界なんて想像できない」
ソラ「・・・・・・!?」
ハル「あの時、教室で一人の俺に話しかけてくれた」
ハル「俺がやりたいようにやっても付き合ってくれた」
ハル「・・・俺のことを・・・笑わないでいてくれた」
ハル「だから、俺は・・・」
ソラ「・・・・・・」
ハル「・・・・・・」
ハル「あの時、このままだとソラが死ぬかもって思った」
ハル「その瞬間、」
ハル「絶対にそれだけは嫌だ!って」
ハル「そう、強く思ったんだ」
ハル「何よりも、 ソラ、君を失いたくないって」
ハル「それで気づいたら、奴とソラの間に割り込んでたんだ」
ソラ「ハル・・・・・・」
ハル「ソラが居ない世界なら、死んだ方がマシだ ・・・なんてその場では考えなかったけど」
ハル「きっと、そういうことなんだと思う」
ソラ「ハル、お前・・・」
ハル「なんか、自分で思ってた以上に 君のことが好きだったみたいだな」
ソラ「・・・・・・すごく恥ずかしいこと言ってる自覚あるか?」
ハル「なんか、もう色々ありすぎて 全部麻痺しちゃってるみたいだ」
ソラ「まったく・・・・・・」
ソラ「・・・"守るべきものは民と友と時間である"・・・か」
ハル「・・・・・・!!」
ソラ「さすが、騎士王さまだ 騎士心得をいついかなるときも忘れていない」
ハル「・・・・・・ああ!!」
ハル「我が配下を護るのは、騎士王として当然の勤めである!!」
ソラ「ああ、最高の騎士王だよ」
ハル「さて、騎士団長よ 共に次の戦場へ向かうぞ!」
ソラ「ああ、そうだな」
こうして二人は、肩を並べてアニメショップへと向かっていった。
とても良い友情物語を見れたと思います。そういった内容の話をずっと出来る友情は一生ものですね。素敵な作品ありがとうございました!
最初は厨二病のハルのイタさを描いた物語と思いきや、まさかの急展開に!
胸熱な友情物語に心打たれました。
で、ラストの行先はやっぱりアニメショップなのですねw
いい話でした〜!趣味が合って尊敬できるなんて最高の友達ですね。突然のバトル展開で全然喜ばずに大切な人を守ることを優先したのがかっこいいです。2人の友情が永遠に続いてほしいです。