走れソウタ!(脚本)
〇明るいリビング
矢張爽太「このままでは、世界が滅んでしまう・・・」
矢張小夜子「にーちゃん帰ってくるなりポエム吐くとか顔がよくてもキツいよ?」
矢張爽太「これから世界で起こる悲しい出来事の原因は全て俺にあるんだ・・・」
矢張小夜子「・・・話だけなら聞いてあげるよ」
矢張爽太「実は──」
矢張小夜子「──なるほどなるほど」
矢張小夜子「映画の主役になったけどテーマの『キュン』がわからなくて困っていると・・・」
イケメンキュンキュンパラダイス(仮)
矢張小夜子「え、世界どっから出てきたし・・・」
矢張爽太「・・・そんな簡単な話じゃないんだよ、さやちゃん」
矢張爽太「でも、さやちゃんが悲しい現実から目を逸らしたくなるのもわかる・・・──」
矢張小夜子「あたしはにーちゃんと血が繋がってる現実から目を逸らしたいよ・・・」
矢張爽太「──だが、敢えて言おう」
矢張爽太「『キュン』がわからない以上、俺が映画に出ても出なくても世界は滅びる・・・」
矢張小夜子「にーちゃん、ほんとに顔がいいだけなんだね・・・・・・」
矢張爽太「こんな時にあまり褒めないでくれ! ・・・嬉しいけど、素直に喜べないんだ」
矢張小夜子「ちなみに映画に出るとどうなるの?」
矢張爽太「大勢の観客がスクリーン越しに『ドキッ』か『トゥンク』して死んでしまう・・・」
矢張爽太「俺がイケメンなばかりに・・・『キュン』ならまだ助かる可能性はあるのに・・・!」
矢張小夜子「・・・にーちゃんが映画に出ないと?」
矢張爽太「70億人の矢張爽太ファンが悲しむ・・・皆のやる気が低下しやがて世界恐慌に・・・」
矢張小夜子(映画のトレーラーの再生回数3桁もないんですけど・・・)
矢張爽太「俺は・・・どうしたらいいと思う?」
矢張小夜子「病院いこう!」
矢張爽太「俺の顔にメスを入れろと言うのは医者に酷だ・・・ファンに殺されかねない・・・」
矢張小夜子(頭の病院だよ! くっ! 自己肯定感が強過ぎる!)
矢張小夜子「しょーがない・・・あたしがにーちゃんに『キュン』を教えてあげよう」
矢張小夜子「これでも不動の人気No.1メイドだかんね!」
矢張爽太「そうか! さやちゃんはメイド喫茶で働いていたんだったな!」
矢張爽太「頼む! 俺に『キュン』を教えてくれ! 世界の未来がかかっているんだ!」
矢張小夜子「世界はどうでもいいけど、世間体を守るために教えてあげるよ。じゃあ、見ててね?」
矢張小夜子「萌え♡」
矢張小夜子「萌え♡」
矢張小夜子「キュン!♡」
矢張小夜子「どう? こんな感じだよ!」
矢張爽太「──うん、わかった。やってみる!」
矢張爽太「萌え♡」
矢張爽太「萌え♡」
矢張爽太「キュン!♡」
矢張小夜子「きゃっ!?」
矢張爽太「さやちゃん!? 大丈夫か?」
矢張小夜子「だ、大丈夫・・・」
矢張小夜子(くっ! ”構えて”いたのにガード越しにこの威力とはさすがにーちゃん・・・!)
矢張小夜子「悔しいけど、あたしじゃ『キュン』を教えることはできないみたいだ・・・」
矢張小夜子「大丈夫・・・にーちゃんなら一人でも『キュン』を習得できるよ・・・」
矢張小夜子「──てなわけで飽きたんで寝るねー!」
矢張爽太「さやちゃん!? さやちゃーん!」
矢張小夜子「スヤァ・・・」
矢張爽太「・・・ありがとう、さやちゃん。俺なりの『キュン』を探してみるよ」
〇本屋
矢張爽太「『キュン』がわかるような本ありませんか?」
本屋の店員「こちらなどいかがでしょう?」
矢張爽太「あ、おおおお俺が欲しいのは『ドキン!』じゃなくて『キュン』なんだ〜!」
〇コンビニの店内
矢張爽太「『キュン』売ってませんか!?」
店員「そこになければないですね・・・」
〇渋谷駅前
矢張爽太「誰かー! 俺に『キュン』を教えてくれ~!」
一般通過キョン「キョーン!」
脱走キョン「キョンキョーン!」
矢張爽太「くそぉ・・・キョンしかいねぇ・・・」
「キョーーーーーーン!」
矢張爽太「うわぁ! こっちくるなぁあああああ!」
〇ペットショップの店内
矢張爽太(さっきのキョンはなんだったんだ・・・)
矢張爽太(キョンから逃げるように入っちまったけど、ここは──あ!)
矢張爽太「こ、これだぁ!」
〇明るいリビング
数週間後
矢張小夜子「で、にーちゃんが見せたいものって何? 着替えた後じゃダメ?」
矢張爽太「俺が『キュン』を理解したことで映画の撮影も順調でさ!」
矢張爽太「さやちゃんにはお世話になったし、新しいトレーラーを見てほしいんだ!」
矢張小夜子「ふ、ふ~ん・・・まぁ、そういう事なら見てあげる」
イケメンキュンキュンディストピア PV2
矢張小夜子「あれ、タイトル変わってる?」
矢張爽太「俺の演技を見てビビっときた監督が脚本から書き直したんだってさ」
〇通学路
哀れなイケメン「遅刻! 遅刻!」
黒猫「──ニャッ!?」
哀れなイケメン「うわ!」
俺はその日、一匹の猫を殺してしまった
猫の飼い主「ああ! ギ―コ!」
哀れなイケメン「ご、ごめんよ! 俺にできる事ならなんでもするから・・・」
猫の飼い主「・・・ほんとう? ほんとうに『なんでも』してくれるの?」
哀れなイケメン「もちろんだ! 償える事じゃないけど、俺にできる事ならなんでも──」
猫の飼い主「よかった!」
猫の飼い主「じゃあ、お兄さん──『ギ―コ』の代わりになってよ!」
こうして、俺は新しい『ギ―コ』になった
〇地下室
ギ―コの飼い主「遅くなってごめんね・・・ほら、新しいエサだよ!」
ギ―コ「あの、俺もう・・・」
ギ―コの飼い主「ギ―コはエサに文句なんて言わなかった! 嫌ならギ―コを返してよ!」
──バチバチッ!
ギ―コ「ぎ、ぎにゃっ!」
──俺がこの牢獄から逃げ出せる日は来るのだろうか・・・?
2022年秋 公開予定
〇明るいリビング
矢張小夜子「公開するなー!」
矢張爽太「ええっ!? 『キュン』としただろ!?」
映画は一部の人には受けたらしい・・・
きゅんを模索して、話がハイテンションのまま進んで行く感じがとても面白かったです!
公開された映画、見てみたいですね!素敵な作品ありがとうございました!
評価漏れててすみません!!
テンポとキャラがどツボでした!面白い!
個人的に妹ちゃんのキャラがお気に入りです!鹿のくだりはお腹抱えて笑いました!
めっちゃ面白かったですー!!!!!!!!自己肯定感の高さが最高です!!!!!!!!萌え萌えキュン!!!!!!!