ドール彼女

岸音りよ

人間になったきみと(脚本)

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〇空
  神様
  ”人形”と恋をさせてください──

〇女性の部屋
空佳「海でデートとかいいね」
  ”ソラ”に語りかけながら、いつも思う
  ──人形と恋ができればいいのに
母「空佳(くうか)、ご飯チンして食べてね」
空佳「・・・」
空佳(外は怖い 人は怖い)
  何があるかわからないから
空佳「ソラがいればいいもん」
???「俺もだよ」
空佳「誰?」
  振り向いた先にいたのは
ソラ「よ、くーちゃん」
  ──人間になったソラだった
ソラ「ね、俺の彼女になってよ」
空佳「い、いいよ」
  心臓の音が跳ねる
  私の恋が、始まった

〇女性の部屋
ソラ「フレンチ食べに行こうよ」
空佳「ネットで頼む?」
ソラ「外行こう!」
空佳「やだ」
  ”人間になった”
  信じがたい話だが、ソラは昔の私のことも知っていた
  私がソラを買ってもらったあの日から──

〇リサイクルショップの中
空佳「パパ、このお人形さん」
父「くーちゃん、これほしいの?」
父「中古だよ? 新しいの──」
空佳「このお人形さんがほしい」
父「わかった」
空佳「ありがとう」
空佳「いつか一緒にサイクリング行きたいな」

〇走行する車内

〇黒
女性「きゃあああ」
男性「おい、誰か救急車!」
空佳「・・・」
空佳「パパ、待ってよ」
空佳「どこにも行かないでよっ!」

〇女性の部屋
空佳「外はやだ」
空佳「必要な外出以外しない主義って知ってるでしょ」
ソラ「じゃ、星を見に行こうよ」
空佳「窓からならいいよ」
ソラ「せっかく人間になったし、デートしたいのに」
  ふてくされるソラを見て、私はがっかりした
  こんな生活を望んだんじゃない
  ──安心して眠れるような、静かな恋がしたいのに
ソラ「くーちゃん」
空佳「ん?」
ソラ「ハグしよ」
空佳「バ、バカじゃないの」
ソラ「いつもしてたじゃん」
空佳「今は人間じゃん」
ソラ「うーん、手は?」
空佳「手ならまあ・・・いいよ」
ソラ「やった! ありがとう」
  暖かい笑顔を浮かべて、ソラは私の手のひらを握る
  ソラの手に体温はなかった
空佳(こんなとこだけ、人形のままなんだ)

〇女性の部屋
  あれから数日が経過して、ソラはついにひとりで外出を始めた
ソラ「今日は釣り行ってきたよ」
空佳「何か釣れた?」
ソラ「全然」
ソラ「でも楽しかった」
ソラ「くーちゃんも今度行こうよ 海で俺とデート!」
空佳「考えとく」

〇女性の部屋
  さらに数日後、ソラはバイトを始めるようになる
ソラ「履歴って適当でもバレないんだね」
空佳「バレたらどうするの」
ソラ「そのときはくーちゃんが助けて」
空佳「ったく」
ソラ「くーちゃん、ありがとう」
  人間らしい生活をするソラと、帰宅した彼の話を聞くだけの私
  一体、どっちが人間なんだろう
  ──どっちが人形なんだろう
  そんな中、事件は起きた

〇女性の部屋
ソラ「ねえ、くーちゃん」
空佳「なに?」
ソラ「サイクリング行こうよ」
ソラ「最近練習してるんだ、自転車 車でドライブもいいけど、免許は──」
空佳「なに、私のことどうしたいの?」
ソラ「え?」
空佳「そういうの、本当にいらないから」
空佳「ソラは知ってるじゃん」
  ソラを部屋から追い出して、部屋に鍵をかける
空佳(パパ──)

〇黒
男性「事故で車が突っ込んだらしいよ」
女性「相手は居眠り運転してたとか」
男性「飲酒運転?」
空佳「・・・」
  外は怖い
犯人「違うんだ、会社で飲まされて」
犯人「あいつらが無理矢理飲ませるから」
犯人「子供が大学行くんだ 勘弁してくれよ!」
空佳「・・・」
  人は怖い
  ほんの少しの緩みやミスで、人生は簡単に壊れる
  そして、いなくなる

〇女性の部屋
空佳(私は人形に恋がしたい)
  人形なら──
  外から鈍く大きい音が響いた
空佳「なんだろ」
  窓の外にあったのは
  ──壊れた自転車と横たわるソラの姿だった
空佳「ソラ!」
  私は勢いよく階段を駆け降りると、靴も履かずに家を飛び出した

〇住宅街の道
空佳「大丈夫!?」
  しかし、誰もいない
  ただ、ひとつの人形が置いてあるだけだった
空佳「ソラ・・・?」
  力が抜けて、膝から地面に崩れ落ちる
空佳(またなの?)
  いつもそうだ
  大事な存在がいなくなって、終わり
空佳「みんな、ずるいよ」
空佳「私だって、いなくなりたいよ!」
空佳(──こんなことなら、初めから人になんかならないでよ)
  その場で泣きじゃくる私の肩を、誰かが優しく叩いた
ソラ「くーちゃん、ごめん」
空佳「え、ソラ? この人形は?」
ソラ「ドッキリ大成功!」
ソラ「それは俺の分身──」
ソラ「って空気じゃないよね」
ソラ「ごめん でも、外に出てほしかったんだ」
空佳「ごめんじゃないよ! 人がどれだけ──」
ソラ「いつまで人間でいられるかわからないから」
空佳「え?」
ソラ「・・・」
ソラ「ねえ、なんで俺を選んだの?」
空佳「え? なに、急に」
ソラ「こんなぼろぼろの人形、なんでほしがったの?」
空佳「それは──」
  ”傷つけられてそうだったから”
空佳「この子はきっと、持ち主に捨てられたんだって思ったの」
空佳「ずっと一緒にいたいって、ソラがどれだけ思ってても」
空佳「ある日突然、一方的にさよならをされる」
空佳「そう思ったら悲しくて、私が一緒にいてあげたかった」
ソラ「同じだよ」
空佳「え?」
ソラ「くーちゃんのパパが亡くなって、きみは心に殻を作った」
空佳「・・・」
ソラ「大好きなきみがずっとひとりで抱え込んでいて、悲しそうだった」
ソラ「だから願った」

〇空
  神様、この人に伝えたい
  互いの指先が触れるくらい近くで
  ”一緒にいたい”

〇住宅街の道
ソラ「あわよくば、海でデートとかもいいねって」
空佳「それって──」
  思い返せば、ソラの行動は全て──私が人形だった彼に話しかけてきたことだった
空佳「じゃあ、私ずっと気づかなくて」
空佳「そっけなくして、私っ」
ソラ「くーちゃん、手を出して」
  彼の手が私の手を包む
  体温はないはずなのに、どこか暖かかった
ソラ「約束する」
ソラ「きみに何があっても 俺が人形に戻っても」
  ずっときみの隣にいる

〇空
ソラ「きみを愛してる」
ソラ「この空の下で、ずっと」
空佳「うん」
  言葉が出てこない
  言葉より先に、涙が溢れてしまったから

〇シックなリビング
  あれから数日、まだソラは人間の姿をしている
  いつこの生活に終わりが来るかはわからない
空佳(でも)
空佳(──もう怖くない)
ソラ「お、今日はすごく晴れたね」
空佳「外行こっか」
ソラ「一緒にね」
  私たちは、ずっと一緒だ

コメント

  • 過去のトラウマを乗り越えるにはきっかけが必要ですよね。
    時が解決してくれるという人もいますが、私はきっかけがなければ変わらないと思います。

  • お互いの想いを告げるところで、心にジーンと響きました。ずっと寄り添ってくれてきた彼だからこそ、空佳は辛いトラウマを乗り越えることができたのですね!

  • 実際のところ、外が怖いという心境はわかるような気がします。
    交通事故などのトラウマを持っていては仕方ないですよね。
    でも、人形の彼のおかげで、少しずつ外に出られるようになって良かったです。

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