オオカミくんは✕✕がお好き

蒸気

オオカミくんは✕✕がお好き(脚本)

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〇幻想空間
  誰にだって秘密のひとつやふたつくらいある──
  私にだって──

〇ケーキ屋
福本 和歌(うわ~可愛いお店!)
福本 和歌(SNSでバズっていただけあるなぁ)
福本 和歌(ロールケーキまだ残ってるかな)
福本 和歌(あれ?あそこにいるのは・・・)
福本 和歌「大神くん!?」
大神 礼司「福本?なんでいるんだ?」
福本 和歌(それはこっちの台詞だよ!)
  大神くんは大学の同級生だ
  クールな一匹オオカミタイプ
  だから同級生からは大神ではなく『オオカミくん』と密かに呼ばれている
  女子からの人気も高い
福本 和歌(うっかり声かけちゃった。どうしよう!)
福本 和歌「偶然だね!誰かの付き添い?」
大神 礼司「いや、俺一人だけど・・・」
福本 和歌(え?大神くんも甘いもの好きだったんだ!)
福本 和歌(身近に甘いものが好きな知り合いがいないから嬉しいなぁ・・・)
福本 和歌「あのさ、わたしもぼっちだから良かったら一緒に食べない?」
福本 和歌「大神くんが嫌じゃなかったら・・・」
大神 礼司「別にいいけど・・・」
福本 和歌「ありがとう!」

〇カウンター席
福本 和歌「可愛い!凪ちゃんに写真送ろう!」
福本 和歌「・・・大神くんは甘いものとか好きなの?」
大神 礼司「まぁな・・・」
福本 和歌「それなら新しくできたフルーツタルトのお店もいった?わたし予約取れなくて・・・」
大神 礼司「行った!あそこのタルト旨いし、見た目もかわいくて・・・」
福本 和歌(わ、あのオオカミくんが笑った!)
大神 礼司「・・・」
福本 和歌「どうしたの?」
大神 礼司「俺と店で会ったこと周りには秘密にしてくれるか?」
福本 和歌「なんで?」
大神 礼司「男が甘いのとか可愛いものが好きなのキモいって思うだろ?」
福本 和歌「そんなことないよ!」
福本 和歌「女の子だって甘いもの苦手な子いるし」
福本 和歌「男だから女だからなんて関係ないよ!」
大神 礼司「変だと思わないのか?」
福本 和歌「みんな同じならそれもそれでつまらなくない?」
福本 和歌「ケーキやアイスだって、いろんな味があったほうが楽しいでしょ?」
大神 礼司「言ってるけどむちゃくちゃだけど一理あるな」
福本 和歌「でも、大神くんが隠したいならみんなには言わないよ!」
大神 礼司「サンキュー。助かる」
福本 和歌「その代わりなんだけど、わたしと付き合ってくれない?」
大神 礼司「は?」
福本 和歌「わたしも新しいタルトのお店行きたいの!」
大神 礼司「ああ、そういうことなら」

〇大学の広場
  後日、大学のキャンパス──
福本 和歌「大神くん!」
福本 和歌「タルトのお店予約とれたよ!」
大神 礼司「声が!でかい!」
福本 和歌「ああ、ごめん。興奮しちゃって!」
庄司 凪「和歌、おはよう」
福本 和歌「おはよう!凪ちゃん」
庄司 凪「大神としゃべってるの珍しいね。いつのまに仲良くなったの?」
福本 和歌(凪ちゃんに嘘はつきたくないけど・・・)
福本 和歌(大神くんに秘密にするように言われたからな)
福本 和歌「自習室でパソコン壊しちゃったとき近くにいた大神くんが助けてくれたの」
大神 礼司「福本がパソコンぶっ壊してたから直しただけだ」
福本 和歌「ぶっ壊してたは言いすぎじゃない!?」
庄司 凪「そう・・・」
大神 礼司「・・・」
大神 礼司「・・・」

〇店の入口
福本 和歌「フルーツタルト美味しかったね!」
大神 礼司「そうだろ!けど福本は本当に旨そうに食べるな・・・」
福本 和歌「だって本当に美味しいんだもん」
大神 礼司「・・・俺、福本と知り合えて良かったよ」
福本 和歌「えっ・・・」
大神 礼司「周りを気にせずに好きな店に行けるようになったのは福本のおかげだからな」
福本 和歌「わたしの方こそ!これまでカフェ巡りできる友達いなかったから・・・」
福本 和歌「付き合ってくれてありがとう!」
福本 和歌「また行こう!」
大神 礼司「そうだな」
大神 礼司「─・・・」
大神 礼司(友達か・・・)

〇テラス席
  そうして、何度かわたしは大神くんとカフェ巡りをした
  大神くんとのカフェ巡りは楽しかった
  大神くんと仲良くなるにつれて、わたしは彼に伝えたいことがあった
福本 和歌「お腹いっぱい!今日のお店も当たりだったね!」
大神 礼司「ケーキ3個も食べるなんて思わなかったよ」
福本 和歌「だってどれも美味しそうだったんだもん」
福本 和歌「・・・」
福本 和歌「あのね、大神くんに聞いてほしいことがあるの」
福本 和歌「仲良くなれた大神くんには隠しておきたくないと思って」
大神 礼司「なんだ?」
福本 和歌「わたし実は女の子が好きなの」
福本 和歌「変な子だって思うでしょ?」
福本 和歌「気持ち悪いって思われても仕方ないって思う」
大神 礼司(やっぱり・・・そうか)
大神 礼司(もし俺がここで変だっていったら、福本は俺を好きになってくれるのかな・・・)
大神 礼司(もしかしたら福本と付き合えるチャンスがくるのかもしれない・・・でも)
大神 礼司(それはあまりに卑怯だ)
大神 礼司「福本はおかしくないよ」
大神 礼司「福本は前に男だから女だからなんて関係ないって俺に言ってくれたじゃん」
大神 礼司「俺だってアイスやケーキはいろんな種類があったほうが好きだ」
大神 礼司「華やかだし楽しい」
大神 礼司「福本は庄司のことが好きなんだろ?」
福本 和歌「嘘!なんでわかったの?バレバレだった?」
大神 礼司「見てればわかるよ。カフェでよく写真撮る度に庄司に送ろうとしていたからな」
福本 和歌「ばれていたんだ・・・恥ずかしい」
大神 礼司「もしフラれたらスイーツバイキングおごってやるよ」
福本 和歌「縁起がわるいこといわないで!」
大神 礼司「冗談だって」
大神 礼司(たぶん脈アリだからな)
福本 和歌「大神くんにはわたしのこと知ってほしかったんだ。だって大切な友達だから」
大神 礼司(友達か・・・)
大神 礼司「俺にとっても福本は大切な友達だよ」
大神 礼司(これでいいんだ)
大神 礼司(友達以上の存在なんて言えない)
福本 和歌「大神くん、ありがとう」
大神 礼司「福本こそ、俺を信用して話してくれてありがとう」
大神 礼司(この思いは秘密のままでいい)
大神 礼司(ただ一緒に笑っていられる)
大神 礼司(それだけで十分だ)

コメント

  • タイトルからは想像も出来なかった展開に驚きました。オオカミくんは、とてつもなく良い男だと思います。少し切なかったですが、相手の幸せを願う部分はとても共感できました。
    素敵な物語ありがとうございました!

  • 結ばれない恋だとしても、本人の気持ちは本物ですからね。
    でも叶って欲しいとも思ったしまうのは…。
    もしかしたら、時間が解決してくれるかもですね。

  • 1つの共通点から親近感が生まれ、共感することで信頼感が生まれる。オオカミ君は辛い状況だけど、彼女を理解し、良い友達として付き合うことで、なにか発展がありそうな気がしました。思春期の女子は、まだ色々な意味で完成形ではないだけ、好みが変わることだってあるかもしれないです。

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