令和のキューピッド

石塚環

令和のキューピッド(脚本)

令和のキューピッド

石塚環

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〇川沿いの公園
結城 海斗「明日香、もしもし。・・・起きたか?」

〇開けた交差点
加藤 明日香「もしもし。ごめんね、海斗。また寝坊しちゃった。いま、バス待ってるところ」

〇川沿いの公園
結城 海斗「気にするなよ、明日香が寝坊するっていつものことだろ」
結城 海斗「時間があるから、スマホショップで機種変したよ。もう使ってるんだ」

〇開けた交差点
加藤 明日香「え、そんな急に・・・私、心の準備ができていないよ」

〇川沿いの公園
結城 海斗「そうか? もう三年も使ったんだぞ。そろそろ変えたっていいだろ」

〇開けた交差点
加藤 明日香「うん、海斗がそういうなら、いいタイミングかもね!」

〇川沿いの公園
結城 海斗「貯金したから、いいのが買えたんだよ」

〇開けた交差点
加藤 明日香「やっぱりお給料三か月分?」

〇川沿いの公園
結城 海斗「そんな高いわけあるか!?」

〇開けた交差点
加藤 明日香「へえ。一生ものだから、思い切ったんだね!」

〇川沿いの公園
結城 海斗「なにいってるんだ、明日香?」
結城 海斗「スマホは買い替えるだろ。二、三年くらい使ったら」

〇開けた交差点
加藤 明日香「また買ってくれるの? うれしい!」

〇川沿いの公園
結城 海斗「いや。明日香のを買うんじゃなくて。俺が自分のスマホを買うって話だよ」

〇開けた交差点
加藤 明日香「結婚したあとにも、おそろいの指輪を作るつもりなんだ、海斗は!」

〇川沿いの公園
結城 海斗「は、結婚? 指輪? 明日香、なにいってるんだ?」

〇開けた交差点
加藤 明日香「あ、バスが来た。電話、切るね」
加藤 明日香「待っててね、海斗」

〇川沿いの公園
結城 海斗「あ。おい、明日香! 切れた・・・」
結城 海斗「ん、スマホにメッセージがきてる」
海斗のスマホ「メロメロフォン発売キャンペーン、 当選おめでとうございます」
海斗のスマホ「弊社が研究しているメロメロトーク機能を 起動させました。お楽しみいただけましたか?」
結城 海斗「メロメロトークってなんだ? あ、再生ボタンがある」

〇幻想2
結城 海斗「もしもし。おはよう、俺のかわいいかわいい子猫ちゃん」

〇川沿いの公園
結城 海斗「なんだこれ!?」

〇開けた交差点
加藤 明日香「もしもし。ごめんね、海斗。また寝坊しちゃった。いま、バス待ってるところ」

〇幻想2
結城 海斗「そうネガティブにならないで。人間は好きなだけ、夢の王国でお散歩していいのさ!」
結城 海斗「きみが夢の王国にいるあいだに、きみと俺の愛の証をゲットしたんだよ」

〇川沿いの公園
結城 海斗「たしかに俺の声だ・・・でも、こんなのいってないぞ」
結城 海斗「明日香の声は、そのまま録音されているのか」

〇幻想2
結城 海斗「愛の証とは、そう! 婚約指輪のことさ!」

〇開けた交差点
加藤 明日香「え、そんな急に・・・私、心の準備ができていないよ」

〇川沿いの公園
結城 海斗「そうか、明日香はこの言葉を聴いて返事していたのか!?」
結城 海斗((それにしても婚約指輪って・・・これは、偶然なのか?))

〇幻想2
結城 海斗「なにをいうんだ、マイスイートハニー!」

〇川沿いの公園
結城 海斗「うわー、自分の声であまいセリフを聴くのは、恥ずかしいな・・・」

〇幻想2
結城 海斗「俺ときみは、恋人同士になって五年」
結城 海斗「永遠の誓いをするタイミングさ!」

〇開けた交差点
加藤 明日香「うん、海斗がそういうなら、いいタイミングかもね!」

〇幻想2
結城 海斗「貯金したから、いいのが買えたんだよ」

〇開けた交差点
加藤 明日香「やっぱりお給料三か月分?」

〇幻想2
結城 海斗「そんな高いわけあるか!?」
結城 海斗「まあ、奮発したけどね」
結城 海斗「明日香に似合うのを見つけたから、お財布の口がぱっかーんと自然に開いたよ!」

〇川沿いの公園
結城 海斗「後半、まったくちがうこといってるぞ!」

〇開けた交差点
加藤 明日香「へえ。一生ものだから、思い切ったんだね!」

〇幻想2
結城 海斗「んー。ノンノン、ノン」
結城 海斗「三年後には新しいものを買うつもりだよ」

〇開けた交差点
加藤 明日香「また買ってくれるの? うれしい!」

〇幻想2
結城 海斗「そのときは、俺とおそろいさ」

〇開けた交差点
加藤 明日香「結婚したあとにも、おそろいの指輪を作るつもりなんだ、海斗は!」

〇幻想2
結城 海斗「俺は、記念のものをたくさん残したいんだ」
結城 海斗「まあ、いちばんはきみと過ごした日々だけどね」

〇開けた交差点
加藤 明日香「あ、バスが来た。電話、切るね」
加藤 明日香「待っててね、海斗」

〇川沿いの公園
結城 海斗「なんだよ、このスマホ・・・」
結城 海斗「あ、メッセージだ」
海斗のスマホ「メロメロトークとは、お客様のような小心者の恋を叶える一度きりのサービスです」
海斗のスマホ「お客様が機種変更した際に、お相手様とのメッセージの履歴を確認させていただきました」
海斗のスマホ「もうそろそろ、いいと思いますよ?」
結城 海斗(もうそろそろ・・・か)
結城 海斗「はあ、令和はスマホが恋のキューピッドになるのかよ」
結城 海斗「お、来た。おーい、明日香ー」
加藤 明日香「ごめんね。すっかり遅くなっちゃった」
結城 海斗「そんなに待ってないよ。あのさ、これ・・・」
加藤 明日香「あ、さっき話してた・・・?」
結城 海斗「そうだよ」
結城 海斗(本当はちがう)
結城 海斗(明日香と付き合って三年目で用意した婚約指輪だ。やっと渡せる)
結城 海斗「電話の俺、変だっただろ?」
加藤 明日香「うん。なんかキザな感じだった」
結城 海斗「さっきの電話の言葉は忘れて」
結城 海斗「いまから、俺の言葉で話すから。ちゃんと俺の言葉でいうから」
結城 海斗「ごめんな、長いあいだ待たせちゃって」
結城 海斗「明日香、俺にはきみしかいません」
結城 海斗「俺と・・・結婚してください」

コメント

  • なかなかのセンス!
    恋のキューピッドって素敵ですね♥

  • こんなAIになら人類の支配を任せても良いのではと思いました
    次のスマホ買い換えの前倒しを検討します。

  • ストーリーを読むと、タイトルが身に沁みますね!一度きりのサービスという点が、彼が大切なことを決心する事を強調しているなと感じました!素敵な物語ありがとうございました!

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