甘い囁きで、桜色に染まる季節(とき)

美飾 唯

エピソード1(脚本)

甘い囁きで、桜色に染まる季節(とき)

美飾 唯

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〇渋谷の雑踏

〇開けた交差点

〇ビジネス街
  洋菓子メーカー、株式会社カティー・スウィートの本社
  君塚誠
  商品開発部の社員
  自由な性格の彼らしく
  服装・髪型はもちろん、勤務時間もかなり自由な社風のこの会社に就職して2年目。

〇オフィスの廊下
  今、春の新商品企画に、自分のアイデアを提案している
君塚誠「この企画を実現するために 僕は・・・」

〇異世界のオフィスフロア
君塚誠「鷹城さん、今日、空いてます?」
鷹城ルイ「君塚君」
君塚誠「食事でも?」
  秘書課の鷹城さんを誘った

〇雨の歓楽街

〇レストランの個室
君塚誠「ステキな香りの香水ですね」
鷹城ルイ「そういうところ、よく気がつくのね」
君塚誠「香水の名は?」
鷹城ルイ「夜間逃避行」
君塚誠「逃避行 今夜の二人を占うような・・・」
鷹城ルイ「どこに誘ってくれるのかしら?」
君塚誠「まだ見ぬ世界へ 男女の間には、夜だけに見える唯一の光が あります」
鷹城ルイ「その光をみせて 温もりと共に」
君塚誠「その前に、仕事の話を」
鷹城ルイ「わかってる 企画の話はお父様に」
君塚誠「社長はなんて?」
鷹城ルイ「あなたに任せるって」

〇チョコレート
  春のキャンペーン企画は成立した
  バレンタインデーで思いが届かなかった
  相手に、もう一度桜の洋菓子でチャレンジするという、桜の恋実るプロジェクト

〇ビジネス街
  プロジェクトチームが決まり
  企画会議

〇小さい会議室
野本啓二「宣伝部、新人の女性が来るらしいですね」
東美和「そういう情報をつかむのはやいのね」
野本啓二「恋愛と新商品を組み合わせたプロジェクトですから」
君塚誠「僕のアイデアですけどね」

〇オフィスの廊下

〇小さい会議室
成田洋子「宣伝部の成田です」
間宮香「間宮です」

〇桜並木

〇小さい会議室
君塚誠「お手元に資料がありますが 今回の企画は、桜の季節をイメージした新商品」
君塚誠「新商品はいくつかサンプルを準備中ですが、販売促進のアイデアとして恋愛感をプラス」
成田洋子「バレンタインデーに報われなかった恋に、もう一度チャンスを?」
君塚誠「はい 商品のお菓子を、恋愛対象にプレゼントして、新しい恋につなげてほしいと」
成田洋子「宣伝部の役割も重要ですね」
君塚誠「予算も限られていますから やはり商品の味より、宣伝に力を入れて」
間宮香「待ってください 洋菓子メーカーとして、味にも力を入れるべきです」
君塚誠「もちろん、商品自体も今まで通り当社の味をだすつもりだけど」
間宮香「今までと同程度の味なら、プロジェクトを立ち上げた意味がありません」
間宮香「材料も桜と相性のいいヨーロッパの高級素材を使って」
君塚誠「それだと予算が 物流コストもかかるし」
間宮香「宣伝費で調整します」
君塚誠「桜の洋菓子と恋愛を大きくピーアールしたいんだ」

〇小さい会議室
東美和「この雰囲気って」
成田洋子「宣伝部の担当が宣伝より味に予算を?」
野本啓二「商品開発部の担当者が味より宣伝に予算を ・・・って、どういう?」

〇異世界のオフィスフロア
鷹城ルイ「プロジェクト、上手く進むのかしら?」

〇ビジネス街

〇大きいデパート
  百貨店

〇エレベーターの前

〇デパ地下
君塚誠「あれ?」
間宮香「あ!!」
君塚誠「どうしてここに?」
間宮香「市場調査・・・でしょうか?」
君塚誠「同じだ」
間宮香「よく、来るんですか?」
君塚誠「うん、商品の味はもちろん、デザインや価格とか、色々と」
間宮香「勉強熱心なんですね」
君塚誠「これでも商品開発部なんだから」
間宮香「そうですよね 他社製品の研究は、当然ですよね」
君塚誠「初めて笑顔を見た」
間宮香「やだ、私・・・」
君塚誠「歩こうか」
間宮香「え?!」
  手を握られた

〇デパートのサービスカウンター
君塚誠「お菓子、好きなんだね」
間宮香「父が、洋菓子のお店をしていて」
君塚誠「今も?」
間宮香「いえ、父は私が高校生の時亡くなって、 お店も閉店しました」
君塚誠「ごめん」
間宮香「気にしないでください。 父の作ったお菓子は、今でも私の心の中に」
君塚誠「君が、新商品の味にこだわる意味がわかった気がする」
間宮香「桜色の恋が実るキャンペーン、絶対成功させましょう」
君塚誠「そうだね」

〇ビジネス街

〇ビジネス街

〇ビジネス街
  何度も試作が、繰り返され

〇桜並木
  商品の販売も好調で
  いくつもの恋が実り
  キャンペーンは成功した

〇ネオン街

〇シックなバー
鷹城ルイ「プロジェクトの成功おめでとう」
君塚誠「ルイさんのおかげです」
鷹城ルイ「私はなにもしていない 感謝するなら、宣伝部の方々に」
君塚誠「そうですね 宣伝部には、とても助けられました」
鷹城ルイ「特に彼女でしょ?」
君塚誠「え?!」
鷹城ルイ「間宮香さん」
君塚誠「彼女は・・・」
鷹城ルイ「僕の大切な人?」
君塚誠「・・・」
鷹城ルイ「彼女、退職したわよ」
君塚誠「え?!」
鷹城ルイ「やっぱり、知らなかったんだ 大阪のホテルでパティシエの修業をするんだって」
君塚誠「大阪へ?」
鷹城ルイ「今夜の夜行バスだったと思う 追いかけたら、間に合うかも?」
君塚誠「でも、ルイさん」
鷹城ルイ「私は、社長の娘としての役割を果たせただけでいい。 あなたの企画を実現させるという」
鷹城ルイ「それに、二人だけの時間も楽しかった。 少しだけど、好きな人といる時にだけ見える光に出会えたから・・・十分満足」
君塚誠「僕は・・・どうしたら」
鷹城ルイ「なにをためらっているのよ。 はやく、はやく追いかけて」
君塚誠「・・・」
鷹城ルイ「このまま、彼女を一人で行かせたら、きっと後悔する。 行きなさい!!」

〇駅前ロータリー(駅名無し)

〇駅前広場
  香
間宮香「え?!」
間宮香「どうして?」
君塚誠「なんで、黙って」
間宮香「だって・・・だって・・・ 「さよなら」を言ったら、私の瞳は濡れてしまう」
間宮香「泣き顔なんて、見せたくなかった」
君塚誠「好きな人の泣き顔・・・って、悪くない」
君塚誠「それに、僕達が交わす「さよなら」は、悲しい「さよなら」にはならない」
間宮香「それって?」
君塚誠「また会おう」
間宮香「遠距離になっちゃうよ?」
君塚誠「僕達互いの胸の奥にあるスマホは、電波が途切れることなく、いつだってつながっている」
君塚誠「それに、こちらのスマホでも、会話ができる。どんなに離れていても」
間宮香「こんな近い距離で・・・ 今私はガラスのように壊れやすい自分でいるみたい」
君塚誠「そして、ガラスのような透明な瞳の中で、今君が、なによりも透き通って見える」
間宮香「心が・・・ざわついているみたい」
君塚誠「君の胸の鼓動は、僕には心地よいゆらぎになる」
間宮香「二人だけの世界・・・」
君塚誠「二人だけの時間が・・・ここから始まる」
君塚誠「二人の思い出を残したい それは、かけがえのない」
間宮香「大切な記憶に変わる」
君塚誠「愛している」
間宮香「愛しています」

〇桜並木
  頬も・・・唇も・・・桜色に染まる瞬間(とき)だった

コメント

  • 企画会議での熱意は読んでいても伝わってきます。それだからこそ、お互いを認めて好意を抱くようになったのでしょうね。とってもキレイなラストですね。

  • 恋を実らせるキャンペーンを通してたくさんの恋が実りましたね。でも、実る恋があれば散る恋もある、そんな様子が桜の花と重なり切なさもありました。

  • 甘酸っぱい中にビターな感じもあってとても面白く読ませていただきました!
    大人の恋って感じがしますね。
    特に仕事って男の人のかっこよさがわかりますよね〜!

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