エピソード1(脚本)
〇芸能事務所の受付
モデル事務所・昼
ユウ「淳也さん おはようございます」
淳也(じゅんや)「あら、ユウ。おはよう。 スタジオ直行するんじゃなかった?」
ユウ「今日、ですよね? 新しいマネージャーが来るのって」
淳也(じゅんや)「ええ、中井佳奈さんね。 13時に来てもらうことにしてるわ」
ユウ「じゃ、俺、スタジオ向かいます」
淳也(じゅんや)「え? 彼女と一緒に行くために事務所に寄ったんじゃないの?」
淳也(じゅんや)「ちょっと、ユウ?! ・・・新しく人が入るって彼女の名前告げた時から、なんだか様子がおかしいのよね」
淳也(じゅんや)「ふふっ、でもなんだか、春の予感♪」
〇撮影スタジオ
都内の撮影スタジオ
中井佳奈(出勤初日にユウさんの撮影現場に来ることになるなんて)
中井佳奈(どのタイミングでご挨拶すればいいのかな)
中井佳奈(緊張する・・・ でも嬉しい)
中井佳奈(本物のユウさんが目の前に)
ユウ(・・・ 全然変わってない)
ユウ(ヤバいな、俺、相当ドキドキしてる)
カメラマン「ちょっと顎上げてみようか。 そう、いいね」
ユウ「ジャケット、脱いでみます?」
カメラマン「じゃ、脱ぎながらっていうショットも撮ろうか」
ユウ「はい」
カメラマン「そのぬいぐるみ、持ってみてくれる?」
ユウ「こうですか?」
カメラマン「うん、いいね!」
中井佳奈(わぁ、ユウさんかっこいい)
カメラマン「よし、じゃあ衣装チェンジね」
ユウ「はい、お願いします」
スタッフが慌ただしく動き出す。
中井佳奈(え? ユウさんが、こっちへ来る)
中井佳奈(・・・)
ユウ「部外者立入禁止のはずだけど」
中井佳奈「へ? あ、いえ! 違うんです、わたし」
ユウ「知ってる。中井佳奈さん。 新しく僕に付くマネージャーって、 君でしょ」
中井佳奈「は、はいっ。 そうなんです、よろしくお願いします!」
ユウ「...(じっと佳奈を見る)」
中井佳奈「えっと・・・ユウさん?」
ユウ「いや、なんでも」
〇エレベーターの前
撮影スタジオのエレベーターホール。
ユウ「おつかれさま」
中井佳奈「ユウさん。撮影、お疲れ様でした」
ユウ「うん」
ユウ(やっぱり、気づいてないのか)
ユウ(俺と分かって来てくれたのかと思って 嬉しかったけど)
〇街中の道路
撮影スタジオの外・夜
中井佳奈「すっかり夜ですね」
ユウ「駅は、こっち」
ユウ「俺も、電車。 それに、夜道を君一人で歩かせられないよ」
中井佳奈「・・・ありがとうございます」
ユウ「疲れた? ずっと立ちっぱなしだったでしょ」
中井佳奈「いえ、だいじょうぶです。 私、今日はまさか撮影スタジオに来るとは思わなくて その、何もお役に立てなくてすみませんでした」
ユウ「・・・居てくれるだけで、いい撮影ができる」
中井佳奈「えっと」
中井佳奈「優しいですね、ユウさん」
ユウ「そうじゃなくて」
中井佳奈「はい?」
ユウ「どうして、モデル事務所のマネージャーなんてやろうと思ったの?」
ユウ「芸能界への憧れとか?」
中井佳奈「ある時、ユウさんが表紙の雑誌を見て・・・」
中井佳奈「それがすっごく素敵で」
中井佳奈「なんてカッコイイ人なんだろうって思って」
中井佳奈「大ファンになりました」
中井佳奈「偶然、ユウさん所属のモデル事務所の求人広告を見つけて、 『ここで働きたい!』って思ったんです」
ユウ「へぇ・・・」
中井佳奈「だから就職できただけでも嬉しいのに」
中井佳奈「まさか自分が、人気モデルのユウさんのマネージャーになるなんて、もう夢のようです!」
ユウ「そう・・・」
中井佳奈「だって、ユウさん、今を時めく人気モデルで」
中井佳奈「こうしてお話しているのも、なんだか信じられないっていうか、夢みたいです」
ユウ「・・・」
中井佳奈「あ、すみません、私」
ユウ「人気モデル人気モデルって...」
ユウ「『素敵な』『カッコイイ』『人気モデル』のいるとこだから働きたかったんだ?」
ユウ「俺のこと、覚えてないんだ」
中井佳奈「え?」
ユウ「淳也さんから名前を聞いた時、 俺はすぐ分かった」
ユウ「上から読んでも”なかいかな” 下から読んでも”なかいかな”」
中井佳奈「!!」
ユウ「佳奈ちゃんに会えるって分かって めちゃくちゃ嬉しかった」
ユウ「子供の頃のまんま、佳奈ちゃんはやっぱり可愛くて」
ユウ「でも、今は素敵な大人の女性でもあって」
ユウ「『一年一組 中井佳奈。 ユウキ君は朝もいつも起きられなくて、私が呼びに行きます』」
ユウ「『宿題もなかなかやらないし、忘れ物するし、私はユウキ君が心配です』」
ユウ「『だから私はずっとユウキ君のそばにいます』」
中井佳奈「ええ?!」
中井佳奈「それって私が小学生の頃に書いた作文!!」
中井佳奈「ユウさんってユウキ君?!」
佳奈はまじまじとユウの顔を見た。
懐かしい少年の笑顔が重なる。
小学校五年生の夏、引っ越していってしまった幼なじみの男の子。
ずっと一緒にいると思っていたのに、突然離れてしまった、大好きだった男の子。
ユウ「・・・」
ユウ「マジで気づいてなかったんだ」
ユウ「佳奈ちゃんが僕を見つけて、 追いかけてきてくれたんだと思ったのに」
中井佳奈「だ、だって! あの時は小学生で、 ユウキ君、私より背も低くて、 今とは違って、可愛らしくて放っておけなくて、」
中井佳奈「だから、」
ユウ「そう じゃあ、今は?」
中井佳奈「今?」
ユウ「うん。今。 今の俺は・・・」
ユウ「こんなにデカくなっちゃって、 可愛くもない」
ユウ「別に、要らないよね」
中井佳奈「い、要らないなんて、そんな」
ユウ「けど、ユウが俺だって気づかないほど、 忘れちゃってた、でしょ」
中井佳奈「だって」
中井佳奈「こんな素敵な人が、まさか初恋の男の子だなんて、思わないじゃないですか」
ユウ「初恋・・・」
中井佳奈「・・・要ります!」
ユウ「え?」
中井佳奈「私、ユウさんの側にいたいです」
中井佳奈「ううん、ユウキ君、 私、またユウキ君といろんな話、したい」
中井佳奈「ユウキ君と一緒に過ごしたい」
ユウ「佳奈ちゃん・・・」
ユウ「その言葉、すっごい嬉しい」
ユウ「俺も、佳奈ちゃんとずっと一緒にいたい」
ユウ、佳奈を抱きしめ、
頬にキス
中井佳奈「・・・・・・」
中井佳奈「こ、こんな人目のあるところで」
ユウ「じゃ、人目のないところで」
ユウ「もっと、キスさせて」
ユウ「好きだよ」
ユウ「ずっとずっと、君だけが好きだった」
終わり。
離れ離れになってしまった幼馴染同士が大人になって再会するという展開が、正に王道という感じで、良かったです!今後、すっかりかっこよくなってしまった幼馴染にヒロインちゃんが振り回されるのかと思うと、きゅんとします!素敵な作品、ありがとうございました!
一方的に佳奈が惚れる展開かと思いきや、ユウはそんな想いを抱いていたのですね。そのエピソードで物語の奥行きがグンと深まって素敵なストーリーだと実感させられます。
撮影シーンでは、主人公が彼に釘付けになっているのが伝わってきました!
かっこいい彼ですが、可愛らしい一面もあってギャップが良いですね😌