あなたと後輩くん(脚本)
〇説明会場(モニター無し)
文化祭1ヶ月前 講義室
桜井颯人「先輩、お疲れっす」
桜井颯人「これ、俺のおすすめ」
桜井颯人「確か、甘いの好きでしたよね」
桜井颯人「良かった」
桜井颯人「ん?」
桜井颯人「今日の先輩、元気ないっぽかったんで」
桜井颯人「『情けない』?そんなことないです」
桜井颯人「先輩が凹むなんてよっぽどでしょ」
桜井颯人「先輩がいなかったら俺ら二徹三徹してましたよ」
桜井颯人「文化祭の準備ってだけでもやばいのに、実行委員ですからね」
桜井颯人「目立たなくてめんどくさい役はいつも先輩が引き受けてくれて」
桜井颯人「急に休んだ人とか、あんまり手伝えない人のサポートもして」
桜井颯人「今だってこんな遅くまで残ってる」
桜井颯人「俺だったらやってられないですもん、マジで」
桜井颯人「『私はそんなに立派じゃない』?──器材の発注ミス?」
桜井颯人「──ああ、あったみたいですね 班長が話してるの聞きました」
桜井颯人「でも何とかなりそうな感じですよね 先輩も今フォローしてくれてるし──」
桜井颯人「──何ですか、それ」
桜井颯人「先輩一人のせいな訳ないじゃないですか」
桜井颯人「そもそもリーダーは別の奴でしょう 先輩は人手不足で応援に入ったのに」
桜井颯人「先輩が気づかなかったんだとしてもっ!」
桜井颯人「俺ら全員が見てなきゃいけなかったものです! 先輩だけが責任取ることありません!」
桜井颯人「・・・先輩?」
桜井颯人「──!!」
桜井颯人「・・・」
桜井颯人「・・・」
桜井颯人「ハンカチ、返さなくていいですから 落ち着くまで使っててください」
桜井颯人「・・・」
桜井颯人「誰ですか?先輩に押し付けたの」
桜井颯人「・・・何で庇うんですか」
桜井颯人「そいつ、先輩をそんな──」
桜井颯人「・・・いえ」
桜井颯人「幸せ者ですね、その人」
桜井颯人「え?」
桜井颯人「俺が優しいとかじゃないです」
桜井颯人「誰だって思いますよ 先輩がやってきたこと知ったら、誰だって」
桜井颯人「本当ですって! このいちごオレを賭けても──」
桜井颯人「って先輩にあげたんだった」
桜井颯人「いや違うんです返さないでください!」
桜井颯人「先輩に飲んで欲しくて持ってきたんです!」
桜井颯人「それマジで美味いっすから! 俺の分なら明日いくらでも買えますから10本くらい──」
桜井颯人「──あっ、笑った」
桜井颯人「先輩の笑顔、近くで見たの初かも なんか感激っす」
桜井颯人「よし!俺もやります!」
桜井颯人「さっき聞いたこと、知ってたらもっと早く先輩のとこ行ってましたもん」
桜井颯人「どうか俺に手伝わせてくださいっ」
桜井颯人「よっし!」
桜井颯人「本番、必ず成功させましょう」
〇文化祭をしている学校
文化祭当日
〇文化祭をしている学校
〇フェンスに囲われた屋上
桜井颯人「先輩、ここにいたんですか」
桜井颯人「いやー、大っ盛況でしたね! 歓声が外まで聞こえましたよ 俺の呼び込みも気合い入っちゃいました!」
桜井颯人「打ち上げ、行かなくていいんですか?」
桜井颯人「会場セッティングしたの先輩じゃないですか」
桜井颯人「俺?そりゃ俺も関わりましたけど」
桜井颯人「・・・」
桜井颯人「俺はここにいたいです」
桜井颯人「お揃いですね」
桜井颯人「!」
桜井颯人「お礼なんてやめてください 俺はやりたいようにやっただけです」
桜井颯人「優しいとかじゃなくて・・・」
桜井颯人「・・・」
桜井颯人「先輩が眩しいです」
桜井颯人「愚痴も悪口も全然言わないで 自分の仕事やり切って」
桜井颯人「ハンカチだって持っててくれて良かったのに お菓子と一緒に返して貰ったし」
桜井颯人「俺のことも」
桜井颯人「信じてくれて──」
桜井颯人「でも俺はこれ以上」
桜井颯人「隠しておけない」
桜井颯人「ほんとは」
〇黒
「俺、全然優しくなんかないです」
「先輩が泣いてる時、俺はこうやって先輩を抱きしめること考えてた」
「先輩が一人で悩んでること、だめだって分かってるのに」
「誰にも見せたくなかった」
「辛いなら俺のところに来ればいいって」
「俺を」
「俺だけを」
「見てればいいって」
〇フェンスに囲われた屋上
桜井颯人「・・・」
桜井颯人「怒らないんですか?」
桜井颯人「・・・」
桜井颯人「『私が助けられたのは何も変わらない』──か」
桜井颯人(先輩の方がずっと──)
桜井颯人「先輩が本音を言うなら俺だけにして欲しいって思ってたんですけど」
桜井颯人「反対になっちゃいましたね」
桜井颯人「──今すぐ返事が欲しいとは思ってないです」
桜井颯人「先輩に嫌われても仕方ないと思ってましたから」
桜井颯人「でも先輩がああ言ってくれて気持ちが楽になったっていうか」
桜井颯人「だから先輩も、もっと思ってることを話してください」
桜井颯人「俺じゃなくてもいいから、信用できる奴に──」
桜井颯人「──あー、いや、本当は俺がいいんすけど」
桜井颯人(あ、笑った)
〇桜並木
月日は巡って 春
桜井颯人「せんぱーい」
桜井颯人「お待たせしました!先輩のぶんです」
桜井颯人「そんで俺はこれ」
桜井颯人「春の新作・「ピスタチオのティーフラッペ・生クリーム2倍」!」
桜井颯人「美味いですって絶対!何なら半分こしましょう」
桜井颯人「っしゃ!先輩とシェアいただきました!」
桜井颯人「──そりゃあテンション高くもなりますよ 先輩しばらく忙しかったですもん」
桜井颯人「今日、会えてよかったです 今年の桜はどうしても先輩と見たかったんで」
桜井颯人「来月から先輩は社会人になるし、俺もちゃんとしないと──」
桜井颯人「──確かに、ガラじゃないっすね やっぱいつもの俺で!」
桜井颯人「第一志望受かったの、ほんとに凄いっすよ たくさんおめでとうって言ったけど、まだ言い足りないくらい」
桜井颯人「『文化祭実行委員をやって鍛えられた』?」
桜井颯人「修羅場でしたもんね 正直、よく乗り越えられたと思います」
桜井颯人「『経験して良かった』──」
桜井颯人「・・・」
桜井颯人「先輩 先輩は先に卒業しちゃいますけど」
桜井颯人「これからも会って欲しいです」
桜井颯人「楽しいんです、先輩と話すの」
桜井颯人「──! ほんとですか!」
桜井颯人「やった!先輩と見たいものいっぱいあるんです! 来月の映画とか、夏になったら花火とか!」
桜井颯人「前に話してた海が見えるカフェ、あれも行きましょう! 何だったら今から予約するんで先輩の好きな──」
桜井颯人「──って」
桜井颯人「すいません、俺ばっかり浮かれて」
桜井颯人「えっ」
桜井颯人「『”ばっかり”じゃない』・・・?」
桜井颯人「────!!」
桜井颯人「どうしよう、俺」
桜井颯人「すげー嬉しい」
桜井颯人「先輩」
桜井颯人「俺、先輩が好きです」
桜井颯人「俺の好きって気持ち、これからいっぱい伝えます」
桜井颯人「受け取ってください 先輩!」
このような後輩を持てた主人公は、とても幸せものだなぁ、と思いながら読んでおりました。台詞の一つ一つにきゅんときました!素敵な物語ありがとうございました!
後半から颯人君の台詞にドキドキしてしまいました...!素敵なお話でした!
ストレートに愛情を示してくれるワンコ男子(しかもイケメン)いいですね🤤✨告白からハッピーエンドまで月日があるのが、現実の恋みたいでリアリティありますね😉告白から結ばれるまで桜井くんは、自分の気持ちを押しつけずに優しくアプローチしたのかな、きっと🤩素敵なお話、ありがとうございます😊