3Bの男

朝永ゆうり

最低→最高の3B男(脚本)

3Bの男

朝永ゆうり

今すぐ読む

3Bの男
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒
  女性が付き合ってはいけないと言われる男性の職業、3B──美容師、バーテンダー、バンドマン。
  その3つを掛け持ちするチャラチャラした男がいる。
  ──今、私の目の前に。

〇可愛い部屋
佐助「もしもしアキちゃん?今週末、暇~?」
佐助「りょーかい。気が変わったら連絡して?」
佐助「もしも~しミナちゃん?週末空いてる?」
真知(・・・クズ男め)
  次から次へと女の子に電話をかける佐助に呆れながら、朝食を頬張る。
真知「ごちそーさまでした」
  立ち上がると、ちょうど電話が途切れた佐助はこちらに視線を向けた。
佐助「もう行く時間?」
真知「うん、戸締まりよろしく」
佐助「はーい・・・あ、ちょい待って?」
  佐助は私の前に立つと前髪を指で撫でる。
  そのまま髪をくるくる指に巻き付け、ピンっと弾くように離した。
佐助「寝癖、直った」
真知「ありがと」
佐助「いってらっしゃ~い」

〇マンション前の大通り
  佐助が家に転がり込んできたのは2週間前。

〇玄関の外
佐助「真知!頼む!泊めてくれ!」
  突然やって来た、佐助。
真知(こんな時間に・・・近所迷惑だし)
真知(・・・一泊ならいっか)
  が、佐助はそれから住み着いた。

〇住宅街の道
真知(同棲してた彼女にでも放り出されたか)
真知(彼女もご愁傷さま・・・)
真知(にしても、元カノの家に転がり込むなんて)
真知(図々しいヤツ・・・)

〇教室
  佐助とは高校時代に付き合っていた。
  彼の浮気が原因で、私たちは別れた。
  あの頃から、佐助はちっとも変わってない。
  ──もっとも、私も。
  恋人なんて、いらない。
  傷付くなら、最初から付き合わなければいい。

〇オフィスビル
真知(ま、私には関係ないか)
真知(仕事、頑張ろっと)

〇空

〇空

〇可愛い部屋
佐助「おかえり~♪」
真知「あれ、仕事は?」
佐助「今日は休み。そんなことより──」
佐助「これどーぞ♪」
真知「何これ?」
佐助「オリジナルカクテル『真知いつもお仕事お疲れさまスペシャル』」
真知「酷いネーミングセンス・・・」
真知「ってか、急にどうしたの?」
佐助「真知、今日誕生日だろ?」
佐助「もしかして忘れてた?」
真知「・・・図星」
佐助「はは!」
佐助「ま、飲めって」
真知(大好きな苺の香り・・・)
真知「──ごくり」
真知「私の好み、バッチリ」
佐助「やった!」
  その笑顔に、胸がキュンと音をたてた。
真知(・・・キュン?)
真知(いやいや、コイツはとんでもないクズ男なんだから)
佐助「真知、他に欲しいものある?」
真知「いや、いい。そういうのは女の子にしてあげな?」
佐助「真知だって女の子でしょ?」
真知(そっか、コイツにとって私は他の女子と同じ──)
真知(都合のいい女)
真知(でも、もし・・・)

〇教室

〇可愛い部屋
真知「佐助のライブのチケット」
佐助「は?」
真知「欲しいもの」
佐助「・・・分かった」
佐助「ほら、よ」
真知「え、いいの?」
佐助「その代わり、ぜってー来いよ」

〇ライブハウスのステージ
  ─週末─
真知(こういうとこ初めてだから緊張する・・・)
  出演バンドは3組。佐助のバンドは一番最初だ。
真知(女子ばっか)
真知(なんだかなぁ・・・)
  私は会場の一番後ろの壁に寄りかかった。
  ドラムのビートにあわせて、照明が舞台を照らす。
  足の裏から伝わってきたベース音に、ギターのメロディが絡む。
  そこに乗るのは、佐助の歌声。
真知(へぇ、無駄にかっこいいじゃん)

〇ライブハウスのステージ
佐助「次は新曲!」
会場「キャーー!」
  流れてきたのはバラードだった。
  「♪君は涙を流していた」
  「見たかったのは君の笑う顔」
  「かける言葉が見つからなかった」
  「いつの間にか君は遠くへ」
  「僕との思い出は忘れてしまったのか」
  「でも僕にはそれでちょうどいい」
  「君に恋をしてよかったと、」
  「情けない、僕」
  「♪~」
真知(この曲、いい・・・)

〇ライブハウスのステージ
  ライブを終えた佐助は、客席に降りてきた。
真知「すごかった!」
佐助「おう!」
真知「私さ、やっぱり・・・」
  言いかけた言葉は、次のバンドの音楽に掻き消された。
佐助「何?聞こえね~」
真知「だから、~」
佐助「聞こえねえって」
真知「だ~か~ら~」
  耳元に口を近づけようと、佐助の肩に手を置きぐっと背伸びした。
  その瞬間、佐助が振り向く。
  ──チュッ
真知(嘘、今・・・)
佐助「近えんだよ」
真知(はぁ?何でコイツは・・・)
真知(私は、こんなにも・・・)
  じわんと熱くなる目頭。
  こぼれそうな想い。
真知「帰るっ!」
佐助「おい、真知っ!」

〇ライブハウスの入口
バンド仲間「あれ、さっき佐助と一緒にいた子」
真知「どうも」
バンド仲間「新曲の主人公ちゃん」
真知「え?」
バンド仲間「あの歌詞、佐助が書いたんだ」
バンド仲間「昔付き合ってた子が忘れられなくて書いた個人的な詞だからって」
バンド仲間「今までお蔵入りしてたんだけどね」
真知「・・・」
バンド仲間「佐助、一途だよな~」
真知「はい?」
バンド仲間「いつも一番にバンドのこと考えてる」
バンド仲間「美容師とバーテン掛け持ちして、」
バンド仲間「そのお陰でだいぶ客が増えたんだ」
真知(佐助がいつも女の子と連絡とってたのは、そういうこと?)
バンド仲間「佐助はいいやつだよ」
バンド仲間「これからもよろしくしてやって」
佐助「真知!」
佐助「よかった、まだいた」
佐助「って、お前・・・」
バンド仲間「おっと、お邪魔虫は退散~」
真知「ねえ佐助、あの曲・・・」
佐助「ちっ・・・聞いちまったのか」
佐助「そうだよ、あの曲は真知のこと書いた」
佐助「勝手に書いて悪い」
真知「そうじゃなくて・・・」
佐助「・・・真知が好きだった、ずっと」
佐助「でも、真知は俺が浮気してるって勝手に勘違いして」
佐助「泣いてる真知にどうしていいか分かんなくて」
佐助「真知が前に進めるならそれでいいやって、諦めて」
佐助「・・・ずっと後悔してた」
佐助「真知の家に転がり込んだのだって」
佐助「作詞に息詰まって・・・好きな女の近くにいれば何か思い浮かぶかなって」
佐助「まさかあんなに簡単に受け入れてもらえるとは思ってなかったけど」
真知「・・・」
真知「佐助のバカ!」
真知「私だってずっと好きだったのに!」
佐助「・・・知ってる」
真知「じゃあ、どうして・・・」
佐助「浮気したと思われてたんだぞ?」
佐助「今さらどうして付き合ってくれなんて言えんだよ・・・」
真知「じゃあ、さ・・・」
真知「今言ってよ!」
佐助「真知、俺と・・・」
佐助「・・・付き合って、ください」
  ──チュッ

コメント

  • 遅ればせながら読ませていただきました。
    実は一途だった男! いいですね!
    いいねのリアクションをいっぱい押したいのに一個しか押せない!😆

  • 彼よりも、元カレを振り切れない女サンが癖の自分には主人公の方にキュンしてしまった…

  • チャラいを更生させる系の話ではなく、誤解を解く展開になるのが少女漫画っぽくとても良いなと思いました!3Bというのを題材にするのも面白いし、3Bでありながらこちらもほんとは一途なBなのが良いですっ✨楽しく読ませていただきました😊

コメントをもっと見る(30件)

ページTOPへ