不器用な二人のコンチェルティーノ(脚本)
〇街中の道路
優「先輩がクラシック好きだったなんて知りませんでした」
如月「へえ、意外だった?」
優「てっきりクラブとかで流れるような音楽で夜な夜な踊り狂っているのかと・・・」
如月「俺、君にどんなヤツだと思われてんの!?」
如月「どこからどう見ても素朴な好青年なのに」
優「素朴な好青年・・・かどうかはノーコメントで」
如月「うわっ、言ってくれるねえ」
如月「でもごめんな、同じ『クラシック愛好家』ってだけで俺の趣味に付き合ってもらっちゃって」
優「いや! そんなの全然!」
優「むしろ嬉しいです、一緒にコンサート行く仲間ができて」
優「しかも、仲間どころか・・・」
優(同じサークルなのにずっと話すきっかけがなかった、憧れの如月先輩!)
優(二人でコンサートなんて、こんなの、デートみたい・・・!)
如月「・・・?」
優(あー、ダメダメ! 無言でにやけてたら変な事考えてると思われる!)
如月「まあ俺も、君と話してみたいってずっと思ってたし」
優「えっ!?」
如月「なんか、いつもホワホワしてて面白いなーって」
優「なんだ、希少生物に対する興味関心的なやつかぁ・・・」
如月「ん? なんか言った?」
優「いえ! 楽しみですね、国際楽団の来日コンサート!!」
如月「おう、俺も超楽しみ」
年上の女性「あれ、如月じゃん。何してんの」
如月「おう、お疲れ。今帰り?」
年上の女性「そうそう。あ、こないだの店、また行こうよー」
優「・・・」
年上の女性「新しい季節限定メニュー始まったらしいしさ」
如月「わかったわかった、そのうちな」
年上の女性「如月の『そのうち』は全然信用できないんだけど! 絶対ね!」
如月「あいあい」
優「今の方って・・・お友達ですか?」
如月「ん? ああ、バイトで一緒の子」
優「『この間のお店』って・・・」
如月「こないだ一緒にメシ食いに言ったところがすげえ美味しかったんだよね」
如月「だからまた行きたいねってだけの話」
優「一緒にご飯・・・ですか・・・」
優「・・・良いですね」
如月「足止めしちゃってごめんね、行こうか」
優(先輩、あの人と仲良さそうだったな・・・)
優(如月先輩優しいし、話も面白いし、きっとすごくモテるよね・・・)
優(コンサートに誘われたくらいで『デートみたい』なんて、おこがましかったかも)
優「・・・」
優「あーダメだ! こんな時に暗くなるなんて」
優(せっかくの機会なんだから、今日はコンサートを楽しむ事に集中しよう!)
如月「・・・」
〇綺麗なコンサートホール
終演後
優「すごく良い演奏でしたね・・・」
如月「本当良かった・・・やっぱ生音は迫力が違うな」
如月「ところでさ、この後ってまだ時間ある?」
如月「もし良かったら・・・」
コウ「優ちゃん! 優ちゃんでしょ!?」
優「えっ・・・!」
優「コウ君!?」
コウ「久しぶり! まさかこんなところで会えるなんて思ってなかったよ」
如月「コウ君・・・?」
優「あ、私たち幼馴染なんです」
優「中学校まで一緒だったんですけど、途中でコウ君が海外に引っ越しちゃって」
優「久しぶりだね!」
如月「そう・・・」
優「誰かと思ってビックリしちゃった!」
優「コウ君もコンサート聞きに来たの?」
コウ「・・・?」
コウ「あはははっ。 違うよ」
コウ「どっちかって言うと、聞きに来たってよりは”聞いてもらいに”来たかな」
如月(誰かと思えば・・・今日の国際楽団に日本人で初めて入団した天才チェリストじゃねえか・・・)
優「コウ君、ここの楽団の人になったの!?」
優「すごい! 子供の頃の夢が叶ったんだね!」
コウ「ありがとう」
コウ「それにしても懐かしいなあ」
コウ「ねえ優ちゃん、今日の夜空いてない?」
コウ「せっかく日本に帰って来たし、食事でもどうかな?」
優「えっ、今日!?」
優「うーん、予定がある訳ではないけど・・・」
如月「悪いけど、俺たちこの後ちょっと行くところがあって」
コウ「あっ、そうですよね。僕こそ突然すみません!」
コウ「じゃあ優ちゃん、僕そろそろ行くね!」
優「あ、うん。またね!」
如月「・・・」
優「先輩、私別にこれから予定は何も・・・」
如月「あるよ」
優「えっ」
如月「初めて一緒にコンサートに来ただけの関係でこんな事言うのヤバいヤツかなって迷ったんだけど・・・」
如月「君がさっきの彼と話してるの見てて我慢できなくなっちゃった」
如月「君の事、他の誰かに取られたくないわ」
優「あの、えっと・・・?」
如月「好きなんだ」
優「えっ!?」
如月「ごめん、やっぱいきなりこんな事言ったら困るよな」
優「・・・っ! 全然!」
優「全然、そんな事ないです!」
優「嬉しいです」
如月「俺さ、正直今日のこれもデートみたいじゃね? ってちょっと浮かれてたとこあったの」
優「あ、それ・・・! 私も同じです・・・!」
如月「・・・!」
如月「それって・・・両思いだったって事でいいの?」
優「そう・・・なのかな・・・」
如月「ちゃんと言ってよ」
優「・・・っ!」
優「あ、あの! 先輩としても尊敬してますし、個人としても・・・」
如月「個人としても、何? 愛してるって?」
優「わー! ダメ!」
優「恥ずかしいです! もう勘弁してくださいよ」
如月「ふーん・・・わかった。君は先輩にそういう態度なわけね」
・・・・・・!?
優「・・・っ! 先輩っ!?」
優「今・・・キス・・・」
如月「正直に言わないお仕置きです」
如月「好きって言ってくれないと、もっと恥ずかしいコトしちゃうかも」
優「わー! ちょっと、先輩っ!?」
如月「・・・なんてね」
如月「まずは、一緒に食事でもどう? 今日の感想も話したいし」
優「・・・はい!」
如月「・・・それに、今んとこ俺ばっかり恥ずかしい思いしてるの、なんか悔しいし」
如月「次は君の番ってことで」
優「・・・!!」
嫉妬して、きちんと告白する先輩の姿が潔く、かつとても可愛らしかったです!告白の言葉も、ヒロインちゃんへの愛が伝わってきて、よかったです。素敵な作品ありがとうございます!
幼なじみの登場で、それまで余裕の態度だった先輩が嫉妬してあせる姿が微笑ましかったです。その後はもう…見てられないので勝手にやってくれって感じでしたね(笑)
両片思いでお互いに嫉妬、可愛いなぁなんてニヤニヤしてたら、想いを告げたとたんにグイグイくるタイプでギャップにヤられました❤
二人が素敵な夜を過ごせますように✨