〇ファンシーな部屋
？？？「姉ちゃん ちょっといい？」
　　どうした？
健吾（けんご）「相談があるんだけど」
　　お金なら無いわよ
健吾（けんご）「いや 違くて」
健吾（けんご）「実はタップノベルっていうサイトの 小説コンテストに応募したいんだけど」
健吾（けんご）「姉ちゃんに読んでみてほしいんだ」
　　何で私に？
健吾（けんご）「募集してるのは『キュンとする話』なんだけど」
健吾（けんご）「優秀作品は 男の声優さんが朗読してくれるって」
健吾（けんご）「だったら姉ちゃんみたいな」
健吾（けんご）「オタクの女の人に意見を聞いたら いいと思ったんだ」
　　別に私
　　そういうの詳しくはないよ
健吾（けんご）「姉ちゃんが 夢小説？とかいうのを書いてて」
健吾（けんご）「ディープなファンがいるって 栄子さんから聞いたことがあって・・・」
　　おいイイイイ!!
　　あんのクソアマァァアア!!
　　人の弟に
　　余計なこと吹き込みやがってェェェェ！
健吾（けんご）「何かまずかった？」
　　ううん
　　気にしないで❤️
健吾（けんご）「夢小説っての調べた方がいい？」
　　ググったら殺すよ？（迫真）
健吾（けんご）「これが俺の書いたやつなんだけど」

〇ファンシーな部屋
　　5分後
健吾（けんご）「どう？」
　　全くダメね
健吾（けんご）「え、どこが？」
　　厳しく言わせてもらうと何もかもダメ
　　お話にならないわ

〇モヤイ像
　　例えばこのシーン
女「ごめんなさい お待たせしました」
男「僕もさっき着いたばかりだよ」
女「先輩は何してたんですか？」
男「自宅に帰って猫に餌をやってたんだよ」
　　どこが問題か分かる？
健吾「喋り方がちょっと事務的かなあ？」
　　それもあるけど
　　もっと重大な誤りがあるわ
健吾「それは？」
　　会話シーンだからといって
　　安易に会話をしているところよ
健吾「え？ 会話をせずに会話シーンを？」
　　出来らあっ！

〇モヤイ像
　　これならどう？
男「いや 待ってない待ってない」
男「僕もさっき着いたばかりだよ」
男「僕は何をしてたかって？」
男「実は今日 家に誰も居なくてね」
男「猫に餌をやりに帰ってたんだ」
健吾「た、確かに 男の方しか喋ってないのに」
健吾「会話しているように見える」
　　男性声優様に朗読してもらえるなら
　　それ以外の台詞は限界までカットよ!!
健吾「でもこれだと単調すぎない？」
　　女同士は会話してもＯＫ
　　間伸びしそうなら
　　適当にモノローグでもブッ込んどきなさい
　　この女も目障りだから消すわ
健吾「ヒロインは 読者が感情移入する対象じゃないの？」
　　自分と違う姿の女が映ってても
　　感情移入できないでしょ
健吾「そうだね 姉ちゃんはこの絵ほど美じ・・・」
　　ア゛ァン!?

〇モヤイ像
　　それから
　　ここで猫の写真を見せてるでしょ
健吾「この猫だね」
　　はい
　　ギルティー！
健吾「え？ どこが？」
　　少しは自分で考えてみなさい
健吾「イケメンが飼っているペットなのに 普通すぎる・・・とか？」
　　はあー（クソデカ溜息）
　　猫の
　　も、よ、う！
健吾「はあ？ どういうこと？」
　　三毛猫はメスでしょうが！
健吾「えぇ・・・ 猫をライバル視してるの？」
　　んな訳ないでしょ
　　文学的な理由よ
　　あのね
　　小説で天気の描写が入るのは何故？
健吾「晴天なら 登場人物の晴れやかな心情の表現」
健吾「悪天候なら今後の展開で よくないことが起こる暗示・・・とか？」
　　でしょう？
　　メス猫といえば泥棒猫
　　ヒロインの恋敵が登場するという
　　凶兆を匂わせてしまっているのよ！
　　アンタが猫の話題を出した理由は？
健吾「読者に男の人が動物好きな良い人って 印象を持たせて、安心させたかった」
　　でもこれだと男の人の周りに
　　女の影がチラついてしまう
　　全くの逆効果と言えるわ!!
　　これでよし、と
　　いい？
　　エンタメ小説は読者に無用な不安を
　　抱かせてはいけないの
　　「鬱展開来そうだなー」
　　とか思わせてはいけないの
　　『神は細部に宿る』よ
　　覚えておきなさい！
にゃん吉「・・・」

〇テーブル席
　　あのさあ
健吾「はい？」
　　なんでデートに使うイタリア料理店に
　　ドリンクバーがあんのよ!!
健吾「俺、サ◯ゼしか行ったことないし」
　　これじゃ後輩の女を連れてきた
　　イケメンがバカみたいでしょ
　　ドヤ顔で『僕が奢るよ』って
　　300円くれーだろって!!
健吾「ドリンクバーは消すよ」
　　ミ◯ノ風ドリアってのもＮＧな!!

〇見晴らしのいい公園
　　んじゃ最後ね
　　ここも致命的な問題があるわ
健吾「もう俺には分かんないから 教えてくれる？」
　　最後にキスして終わりでしょ？
　　そこがダメ
健吾「ありきたりすぎるってこと？」
　　違う！
　　過激すぎるのよ！
健吾「か、過激？」
　　キスってどういう行為？
健吾「口と口をくっつける行為？」
　　違うわ
　　粘膜と粘膜をくっつける行為よ！
　　二次元に癒しを求めている読者にとって
　　キスはあまりに肉感的なのよ！
健吾「キスってそんなに大げさなもの？」
健吾「まあ、姉ちゃんは男の人に免疫ないもんね」
　　ハアァ？
　　こう見えて新歓の時期には
　　３回も声かけられてるんだが？
健吾「3年も前だし・・・ しかもただのサークルの勧誘だよね？」
　　殺すぞ❤️（暗黒微笑）

〇ファンシーな部屋
健吾（けんご）「ありがとう 後は自分で書き直してみるよ」
　　ま
　　選外でも責任は持てないけどね
健吾（けんご）「5万円でいいから 賞金欲しいんだよなあ・・・」
　　何
　　カノジョでも出来た？
健吾（けんご）「い、いや そんなんじゃねえし」
　　何よ
　　この際だから喋っちゃいなさいよ
健吾（けんご）「うーん」
健吾（けんご）「姉ちゃんて今 就活中だからバイト減らしてるじゃん？」
　　そうだけど？
健吾（けんご）「姉ちゃんが好きな刀のアニメ」
健吾（けんご）「今度出るＢＤ欲しいけど 金欠だから諦めるって言ってただろ？」
健吾（けんご）「姉ちゃんには・・・ いつも世話になってるからさあ」
健吾（けんご）「俺の高校バイト禁止だけど」
健吾（けんご）「賞金がもらえれば 買えるかな・・・って思ってさ」
　　なによー
　　アンタ可愛いとこあんじゃん！
健吾（けんご）「や、やめろって 頭は撫でなくていいよ」
　　ところで
健吾（けんご）「ん？」
　　私が欲しいのは通常版じゃなくて
　　豪華絢爛超ウルトラＤＸ完全限定版
　　あれ15万よ
健吾（けんご）「!?」
　　おわり