アンドロイドに、恋(脚本)
〇研究所の中
友希「ねえねえ、博士。 どうしたの?」
友希「どうして、そんなに 悲しそうな顔をしているの?」
友希「ボクならここにいるよ? だから元気だして」
友希「ほら、笑顔、笑顔──」
真緒「やめて。 私のことは放っておいて」
友希「そんなことできないよ」
友希「だって、大好きな 博士のことだもん」
友希「ボクは 博士を幸せにするために 生まれてきたんだから」
友希「博士の笑顔が 一番大事なんだよ」
真緒「嘘つき」
真緒「そんなこと、ぜんぜん 思ってないくせに」
友希「思ってるよ!」
友希「だってボク、博士のこと だーい好きだもん」
友希「だから、ほら、 こっちを向いて」
友希「好きだよ、博士」
友希「「トモキ」は、世界中の誰よりも 博士を愛して──」
真緒「いい加減にして!」
真緒「「トモキ」のマネはやめてよ、 ユウくん!」
友希「・・・ハイハイ、そうですか」
友希「じゃあ、博士様は どうすりゃ元気になるんだよ?」
真緒「・・・トモキが 戻ってきてくれたら」
友希(出たよ、「トモキ」)
友希(結局あいつじゃん)
友希「いい加減にしろよ」
友希「あのアンドロイドは もう修復不可能なんだろ?」
真緒「そんなことない!」
真緒「「トモキ」のこと 絶対なおしてみせるもん!」
真緒「絶対・・・絶対に・・・」
友希「はぁぁ・・・」
友希「お前さぁ・・・ あいつのどこが そんなに好きなんだよ」
真緒「決まってるでしょ。 全部だよ」
真緒「外見も、内面も」
真緒(私のこと、必ず「好き」って 言ってくれるところも・・・)
友希「見た目は 俺そのまんまだけどな」
真緒「・・・っ い、いいでしょ!」
真緒「ユウくん、外見だけは 私の理想だし!」
真緒「あくまで 「外見だけ」だけど!」
友希「ハイハイ・・・ どうせ俺は、どこかの誰かみてーに 優しくないですし?」
友希「「好き好き」「愛してる」 なんて簡単に言うわけねーし?」
真緒(そのとおりだよ)
真緒(ユウくん、一度も「好き」って 言ってくれなくて・・・)
真緒(だから、私・・・)
友希「はぁぁ・・・ やっぱ、わかんねーわ。 天才様の考えることは」
真緒「いいよ、 わかってくれなくても」
真緒「ユウくんに わかってもらいたいなんて 思ってないし」
真緒(そんなの、もうとっくに あきらめたし)
友希「俺で我慢しろよ」
真緒「・・・えっ」
友希「俺で我慢しとけって」
友希「外見だけは そっくりなんだから」
真緒「・・・っ、冗談でしょ」
真緒「ユウくんじゃ トモキの代わりにならないよ!」
友希「そうとも限んねーだろ」
真緒「限るの! ユウくん、なにもわかってない!」
真緒「トモキは、私の理想なの!」
真緒「外見も内面も すべて完っっっ璧な 理想の恋人なの!」
友希「でも、もういねーじゃん」
真緒「そういうとこ!」
真緒「トモキなら絶対 そんな意地悪なこと言わない!」
友希「ああ、そうかよ、 ったく・・・」
友希「・・・じゃあ、これ」
真緒「・・・なに、この手紙」
友希「トモキに頼まれた」
友希「あいつが壊れる 少し前にさ」
友希「「もしも」のことがあったら これをお前に渡してくれって」
真緒「うそ・・・」
友希「嘘じゃねーって! まあ、読んでみれば?」
真緒「・・・わかった」
──「博士へ」
〇研究開発室
「今まで、優しくしてくれて
ありがとう」
「『好き』っていっぱい
言ってくれてありがとう」
「ボクもね、博士のことが好き。
世界で一番大好き」
「博士は、そんなふうに
プログラミングしたせいって
思ってるかもしれないけど」
「そんなことない。
そうじゃないってこと、
今ここで証明する」
「ねえ、博士
もしもボクが壊れたら
ボクのことは忘れてね」
「今度こそ、ボクそっくりの彼に
ちゃんと『好き』って伝えてね」
「以上!
じゃあね、バイバイ、博士」
〇研究所の中
真緒「・・・知らない」
真緒「こんなの プログラミングしてない」
真緒「「バイバイ」とか 「ボクのこと忘れて」とか・・・」
真緒(「ユウくんに告白して」とか・・・)
真緒(こんなの・・・絶対に・・・)
友希「でも、言ってんだろ、げんに」
友希「マスターのお前が どんなに否定したとしても」
友希「あいつには あいつの意思があったって 俺は認めるけどな」
真緒「・・・じゃあ」
真緒「「私のこと好き」なのも トモキの意思ってことでいい?」
友希「・・・は?」
真緒「私のプログラミングの せいじゃないって」
真緒「本当に 好きになってくれたって 思ってもいいよね?」
友希「・・・ああ、まあ・・・」
友希「そういうことになんのか、 いちおう・・・」
真緒「・・・ふふっ、そっか・・・」
真緒「そっかぁ・・・」
友希(こいつ・・・ やっと笑いやがった・・・)
真緒「決めた! やっぱり私、トモキをなおす!」
真緒「何年かけても トモキのことなおしてみせる!」
友希「ああ、そうかよ だったら俺は・・・」
友希「あいつがなおるより先に お前を振り向かせてみせる」
真緒「・・・えっ」
友希「お前、もともとは 俺のことが好きだったんだろ」
友希「だったらよゆーだろ、 それくらい」
真緒「そ、そんなことない!」
真緒「私の理想はトモキだもん! ユウくんなんて 外見がそっくりなだけだもん!」
友希「だから何だよ?」
真緒「ちょっ・・・」
真緒「待って・・・顔・・・っ!」
真緒「ユウくん、顔、近すぎ・・・!」
友希「でも、好きなんだろ? この顔が」
真緒「そ、それは・・・」
友希「覚悟しとけよ?」
友希「そのうち、俺の全部を好きって 言わせてやっから」
真緒「ユウくん・・・」
友希「見てろよ、負けねーから!」
友希「トモキには、絶対!」
”トモキ”への想いを抱く博士と、そんな博士に思いを寄せる”ユウくん”、しかも”ユウくん”は”トモキ”と同じ外見、、せつない三角関係ですね。博士の心情の揺れが伝わってきて心に響きます。
“ユウくん”と“トモキ”は根の部分では同じなんじゃないかなぁ、なんて思いながら拝読させていただきました。人間では恥ずかしくて出来ないストレートな表現をアンドロイドに実現させる……だからこそ、最後の“ユウくん”の台詞にキュンとさせられました!
“トモキ”が先が“ユウくん”が先か、はたまた博士は研究を止めてしまうのか。二人の未来はどうなるのか気になります~!
AIの心も進化していくのですかね。
私はAIの心より女心の方が理解に難しいような気もします笑
でもなんだかんだで、良い相性の二人なんだろうなぁとも思います。