ホラーコーディネーター

赤井景

エピソード20 幽々舎復讐篇③(脚本)

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〇制作会社のオフィス
出水華「はぁ・・・全然片付けが進まないわね・・・」
  幽々舎のオフィスは、立ち退き準備の真っただ中にあった。
  乱雑に積み上げられた段ボール箱のなかには、撮影機材やら美術小道具の類がびっしり詰め込まれている。
  その多くは処分することになるだろう。
出水華「釈池さんも少しは手伝ってよ」
釈池駿夫「おいおい、無理言うな。 こっちは事故で腕折っちまってるんだぞ」
出水華「じゃあお茶くらい入れて」
釈池駿夫「片手でか? やれやれ、おっさん使いが荒いねぇ・・・」
奥根久志「にしても、幽々舎もこれで終わりかぁ。 楽しく仕事できてたんだけどなぁ」
出水華「仕方ないわ。当麻さんも、鏡也くんも・・・みんな亡くなっちゃったんだもの」
  「由宇勇、当麻朱人、筑紫鏡也の3名が、山奥の廃村にて遺体で発見された」と連絡があったのは、今からつい半月ほど前のことだ。
釈池駿夫「しかしまあ、なんだって由宇たちはあんな山奥の廃村になんか行ってたんだ? ロケ現場とは違う場所だったんだろ?」
出水華「そうよ。おかげで私と奥根くんは、現地でタレントさんたちと待ちぼうけくらったわよ」
  動画配信サービスの番組作りのために、幽々舎は信州ロケへと向かった。ところがその現場に、由宇たちは現れなかったのだ。
  予定では、私や奥根くんより先に到着しているはずだったのだが。
奥根久志「もっといいロケ地でも見繕ってたんじゃないかな?」
出水華「あの3人、なにかとつるんでは、好き勝手やってたものね・・・」
釈池駿夫「ま、あいつらは幽々舎ができる前からの付き合いらしいからな。あいつらだけの間で通い合うものがあるんだろうよ」
奥根久志「ここ2年程度の僕らとは、関係の深さが違うってことかぁ」
釈池駿夫「とはいえ、そのおかげで難を逃れたと言えなくもないぞ」
出水華「そうね・・・。もし由宇さんたちと一緒に居たら、私たちもきっと、土砂崩れに巻き込まれてたんでしょうし・・・」
釈池駿夫「とくに当麻は酷い死にざまだったようだしな」
  由宇さんや鏡也くんは即死だったそうだが、当麻さんはそうではなかった。
  土砂に埋もれた民家に閉じ込められ、飢えと渇きの果てに死んだのだ。
  どうにか外へ出ようと、必死に土砂を掘ったのだろう、指先は骨までボロボロの状態であったという。
出水華「どうしてこんなことに・・・。そりゃあ、人としてどうかと思う部分はあったけど」
出水華「こんな酷い目に遭わなきゃいけないような人たちじゃなかったのに」
奥根久志「・・・・・・」
出水華「なによ」
奥根久志「いや、あくまでネットでの無責任な噂なんだけどさ」
奥根久志「由宇さんたちが『ホラー映像のために本当に人を殺したことがある』『その呪いで無残な死に方をした』なんて言われてて・・・」
出水華「なにそれ、いくら何でも、そんなはずないじゃない!」
釈池駿夫「まあまあ、映像屋には昔からつきものの中傷さ」
釈池駿夫「お客さんからすりゃあ、『ホラー映画を撮るようなやつは異常』であってほしいのさ。その方が『それっぽい』からな」
奥根久志「中傷、かぁ・・・」
釈池駿夫「なんだ、ずいぶんと歯切れ悪いな。まさかその噂を信じてるわけじゃねぇだろうな?」
奥根久志「実はさ、僕もムカついたからその噂の投稿者の身元を割り出してやろうと思ったんだよね」
奥根久志「それで、その手のことに詳しい友人に、ちょっと頼んでみたんだけど・・・」
奥根久志「その投稿、壬継氏の携帯からされたものだったんだ。それも、今から3日前に」
釈池駿夫「おいおい、ちょっとまて。 そりゃありえないだろ」
出水華「そうよ。だって・・・だって、3日前だったらもうとっくに──」
  八代壬継は、
  死んでいるはずではないか!
釈池駿夫「それ、お前の友人とやらが間違えただけじゃねぇか?」
奥根久志「そ、そうだよね。 そうじゃないとおかしいよね」
釈池駿夫「当たり前だ。死んだ人間が、どうして携帯の操作なんぞできる」
釈池駿夫「あいつは死んだんだ。それも1か月も前にだ。由宇たちより早く死んでるんだぞ」
  八代くんが幽々舎を無断欠勤するようになったのは、およそ1か月前のことだった。
  バイトが嫌になって逃げたのかと思ったが、取材旅行から戻った礼香ちゃんが下宿先を訪ねてみると
  八代くんは変わり果てた姿となっていた。
  警察の話では事件性はなかったらしく、自殺ということで処理されたという。
釈池駿夫「まさかそのあと、礼香のやつが後追い自殺するとは思わなかったが」
釈池駿夫「そのうちくっつきそうだなとは思っていたが、まさかもうそこまで深い仲になってたとは意外だったな」
出水華「気づいてみれば、幽々舎で生き残ってるのは私たちだけ・・・なんてね」
奥根久志「呪われた映像プロダクション』なんて、うちのことを言ってるやつらもいてさ・・・」

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