読切(脚本)
〇炎
アルビス「君を守るために私は──」
アルビス「剣をとる!」
紗代(中校生)「はあ、アルビス様かっこよすぎる・・・」
〇ラジオの収録ブース
琴吹紗代「奏役を演じさせていただきます。琴吹紗代です」
新海和樹「誠役の新海和樹です。よろしく」
琴吹紗代(新海さん、素敵・・・)
新海和樹「シカ娘ハマってるよ。オジロジカ可愛くていいよね」
琴吹紗代「私のキャラ・・・嬉しいです」
成瀬ケイ「お疲れ様です」
新海和樹「なる君、お疲れ」
琴吹紗代「奏役の琴吹紗代です。よろしくお願いします」
成瀬ケイ「想太役の成瀬です」
〇名門校の校門(看板の文字無し)
キャー!誠先輩!
誠先輩「おはよう」
奏(誠先輩・・・)
想太「おはよう、奏」
奏「想太、おはよう」
想太「またあの先輩見てたの?」
奏「前に助けてもらったお礼がしたいんだけど・・・」
想太「女子が群がってるな」
想太「さすが学園の王子」
奏「あんなに素敵なんだもの」
想太「はいはい・・・今日日直だろ、早く行こう」
〇結婚式場の廊下
奏「きゃっ」
誠先輩「ごめん、怪我はない?」
奏「だ、大丈夫です」
奏(ま、誠先輩!?)
誠先輩「それなら良かった──」
奏「あ、あの!先輩!」
〇ラジオの収録ブース
新海和樹「琴吹さん、お疲れ様」
琴吹紗代「お疲れ様です!」
新海和樹「さっきのシーン良かったよ」
琴吹紗代「ありがとうございます」
琴吹紗代「誠先輩もすごく素敵で、かっこよかったです!」
新海和樹「はは、ありがとう」
他のキャスト「成瀬くんお疲れ様!私、わかる?養成所で同期だった──」
成瀬ケイ「お疲れ様です」
他のキャスト「あっ・・・」
新海和樹「ははは、なる君人見知りだから」
琴吹紗代「そうなんですね。私もご挨拶しか」
新海和樹「気にしないで。俺も最近、ようやく仲良くなれたし」
他のキャスト「たしか養成所でもほぼ一人でいたような・・・」
琴吹紗代(あ、手帳が落ちてる。確かここに座ってたのは・・・)
琴吹紗代(成瀬さんよね)
琴吹紗代(今なら追いつけるかしら)
琴吹紗代「それでは、お先に失礼します」
新海和樹「ん、お疲れ様」
〇エレベーターの前
琴吹紗代「成瀬さん」
成瀬ケイ「・・・なにか」
琴吹紗代「これ、お忘れでは?」
成瀬ケイ「あ・・・ありがとうございます」
琴吹紗代「いえ、間に合ってよかったです」
ピンポーン
琴吹紗代「・・・乗らないんですか?」
成瀬ケイ「・・・乗ります」
〇エレベーターの中
琴吹紗代「成瀬さんは新海さんと仲が良いんですか?」
成瀬ケイ「まあ」
成瀬ケイ「たまに飲みに行きます」
琴吹紗代「えっ羨ましい!事務所の先輩でしたっけ?」
成瀬ケイ「はい」
成瀬ケイ「一応、尊敬しています」
琴吹紗代「ふふ、素敵な先輩なんですね」
琴吹紗代「私、新海さんに憧れて声優を目指したんです」
成瀬ケイ「へえ・・・」
琴吹紗代「中学生の時、大好きなアニメの主演が新海さんで」
成瀬ケイ「騎士物語ですか」
琴吹紗代「あ、ご存じですか」
琴吹紗代「新海さんの声が宿ったことで、大好きなアルビスに現実で会えたような気がして、すごく感動したんです」
成瀬ケイ「・・・」
〇名門校の校門(看板の文字無し)
誠先輩「奏ちゃん、今帰り?」
奏「あ、はい!」
誠先輩「もう遅いし、送るよ」
奏「ありがとうございます」
誠先輩「そういえばさ──」
奏(さ、さりげなく車道側に)
奏「あ、雨・・・」
誠先輩「傘持ってないや」
奏「すみません、私も──」
想太「奏?」
奏「想太」
想太「傘忘れたのか?」
奏「あはは・・・」
想太「・・・これ、使えよ」
奏「え、でも想太は──」
誠先輩「走って行っちゃったね」
奏「もう・・・」
誠先輩「せっかくだし使わせてもらおうか」
奏「は、はい」
〇居酒屋の座敷席
新海和樹「お疲れー」
琴吹紗代「お疲れ様です」
新海和樹「琴吹さん、突然誘ったのに来てくれてありがとう」
琴吹紗代「いえ、お誘いありがとうございます」
成瀬ケイ「俺のこともいつも直前に誘うじゃないですか・・・」
新海和樹「あはは、なるくんはいつもなんやかんや言って来てくれるから」
琴吹紗代「ふふ、本当に仲が良いですね」
新海和樹「こ、琴吹さん結構飲むね・・・」
琴吹紗代「ふふふ、お酒好きなんです」
琴吹紗代「私この現場で新海さんにお会いするの本当に楽しみにしてたんです〜」
琴吹紗代「食事までご一緒しているなんて、一ファンとしてあるまじき行為ではありますが」
琴吹紗代「憧れの存在が目の前にいて、平常心を保つのがやっとなんですよ〜」
新海和樹「あはは、もしかして琴吹さん酔ってる?」
成瀬ケイ「めっちゃ喋りますね」
新海和樹「ほ、他にも好きな声優さんとかいるの?」
琴吹紗代「そうですねえ、東山さんとか」
琴吹紗代「声優演歌プロジェクト!東山さんの色気のある関西弁が最高ですね〜」
琴吹紗代「あとは角田さん」
琴吹紗代「イケメン芸人養成ゲーム大好きなんです。角田さんの穏やかな優しい声に癒されますね〜」
琴吹紗代「そして、外せないのが新海さん」
琴吹紗代「騎士物語のアルビス様が私の新海さんとの出会いで〜」
成瀬ケイ「また新海さんの話に戻った」
新海和樹「あはは、素直に嬉しいよ」
成瀬ケイ「・・・」
〇ハチ公前
奏「すみません!お待たせしました!」
誠先輩「ううん、俺も今来たところ」
誠先輩「じゃあ行こっか」
奏「は、はい」
奏(誠先輩とデートできるなんて、夢みたい・・・)
〇エレベーターの前
新海和樹「琴吹さん、ちょっと疲れてる?」
琴吹紗代「え!そんなことは・・・」
新海和樹「隈できてるよ」
琴吹紗代(し、新海さん!近いです!)
琴吹紗代「台本を読んでいて・・・」
新海和樹「頑張り屋さんなのもいいけど、無理はしないでね」
琴吹紗代「は、はい」
新海和樹「そういえば、ようやく原作読み終わったんだ」
琴吹紗代「お忙しい中、全部読まれたんですね」
新海和樹「やっぱり奏は一生懸命なところが可愛いよね。惹かれる誠の気持ちがわかるよ」
琴吹紗代「ふふ、そうですよね」
新海和樹「うん、ちょっと琴吹さんに似てる」
琴吹紗代「え!そんな・・・」
〇結婚式場の廊下
想太「奏、どうした?」
奏「先輩とちょっと・・・」
想太「奏らしくないなあ」
想太「正直な奏の気持ちを伝えればいいんだよ」
奏「そっか、そうだよね」
奏「想太ありがとう。私もう一度先輩と話してみる」
想太「・・・」
〇ネオン街
成瀬ケイ「琴吹さん?」
琴吹紗代「な、成瀬さん」
成瀬ケイ「カラオケですか」
琴吹紗代「ちょっと歌の練習を」
琴吹紗代「新しいキャラソン、あまり自信がなくて・・・」
成瀬ケイ「俺、琴吹さんの歌好きですよ」
琴吹紗代「え!」
成瀬ケイ「養成所時代しんどかった時、琴吹さんの歌を聴いて頑張れました」
成瀬ケイ「上手いとかどうとかより、琴吹さんの歌だから前向きになれたんです」
琴吹紗代「あ、ありがとうございます」
成瀬ケイ「あの歌、歌ってくれますか」
琴吹紗代「はい」
〇フェンスに囲われた屋上
誠先輩「俺の奏への想いと、奏の俺への想いはきっと違うんだ」
誠先輩「奏が本当に大切に思っているのは誰なのか、気づいてるんじゃない?」
奏「わ、私・・・」
誠先輩「奏が笑顔になるなら、俺はいいんだ」
誠先輩「今までありがとう、またね」
奏「先輩、ごめんなさい・・・」
想太「奏?誠先輩に呼ばれてきたんだけど」
〇ラジオの収録ブース
琴吹紗代「想太、私──」
成瀬ケイ「奏、俺も──」
他のキャスト「お二人、いい演技ですね」
新海和樹「うん、本当に」
作品内の人間模様と劇中劇の内容が交錯していって最後完全に交わるという展開に唸りました。練習と恋習をかけているタイトルもしゃれてますね。
キュンキュンする作品でした。読んでいるこちらまで、どっちが現実だったか、わからなくなるような錯覚が起き、作品の世界に入った様な気持ちになりました。他の作品があれば読んでみたいです!
アニメの声優さんはすごいなぁと、思います。
俳優や女優も同じかもしれませんが、声だけをそのキャラクターになりからって中々難しいですよね…。