私の彼は、宇宙人(脚本)
〇教室
宇宙「はじめまして、宇宙人です」
宇宙「名前も宇宙と書いてそらと読みますが、名前とかけているわけじゃなくて」
宇宙「マジで宇宙人なので、すぐにまた転校しちゃうと思いますが、それまでのあいだよろしく!!」
私は、そんな彼に一目で恋をした――。
〇まっすぐの廊下
麗香「ちょっとあんた、邪魔よ!!」
恵「ご、ごめんなさい・・・」
達夫「てか、そこに誰かいんの?」
達夫「俺には何も見えないんだけど」
麗香「ふふ、確かにね」
恵(私、恵は通っている高校の〇×学園で、こんなふうにいじめを受けている)
恵(自由な校風が売りで、だからこそ制服も指定のものはないぐらいだけれど)
恵(いじめは・・・どこにでもあるんだなと思わされる)
恵(私は、小学校からいじめを受けていたから、それは痛いほどよくわかっていた)
麗香「さっさと行きましょう。こんな子、相手にする価値もないわ」
達夫「そうだな、麗香お嬢様」
麗香「達夫、その呼び方はやめなさい!!」
達夫「へいへーい」
〇個室のトイレ
恵「ふぅ・・・」
恵(私は、情けないことに生徒のあまり来ないトイレで落ち着いていた)
恵(それはこの学園に入学してから、ほとんど毎日のことだ)
恵(・・・いや、中学のころには、もうすでにそうだったっけ)
恵(でも今日は、いいことがあった)
恵(宇宙くん・・・あんなイケメンが転校してくるなんて)
恵(でも、どうせ私は一生宇宙くんとは話せないままで終わるんだろうな)
恵(宇宙くん、自分のことを宇宙人とか言うとか、かなり個性的みたいだし・・・)
恵(いいな。私も、あんな明るい個性が欲しいや)
〇華やかな寮
恵(私は、今日もいつもどおり、一人で帰っていた)
宇宙「あれ? 恵ちゃんじゃん」
恵「宇宙くん!?」
恵「どうして私の名前を知ってるの?」
宇宙「そりゃ、俺は宇宙人だから」
宇宙「クラスメイトの名前、すぐに全員覚えたよ」
恵「そ、そういう問題なんだ」
宇宙「それより、恵ちゃん一人?」
宇宙「よかったら、一緒に帰らない?」
恵「ええっ!?」
宇宙「あっ、嫌だったら別に大丈夫だからね」
恵「嫌なわけないよ!!」
宇宙「よかった。じゃあ、この町の案内とかしてよ」
恵「あっ、う、うん」
恵(近くで見る宇宙くんの笑顔、威力半端ないな・・・)
恵(私は、わかっていなかった)
恵(イケメンの宇宙くんと、いじめられっ子の私が二人で帰るということが)
恵(どのくらい、まずいことなのかを)
〇教室
麗香「ちょっとあんた!!」
麗香「昨日、宇宙くんと二人で帰ったって本当なの!?」
恵(誰かが見ていたのか)
恵(昨日のことは、すぐに噂になってしまっていたのだ)
恵「ご・・・ごめんなさい」
麗香「謝れなんて言ってないわよ」
麗香「私は真実かどうかを聞いてるの!!」
達夫「あーあ、麗香お嬢様を怒らせたら」
達夫「もうこの学園ではやっていけないね」
〇教室
宇宙「おっはよー」
麗香「あっ、宇宙くん!!」
麗香「おはよう、そしていきなり質問だけれど」
麗香「昨日恵と二人で帰ったっていうのは、嘘か同情よね?」
麗香「ほら、この子、ぼっちで根暗じゃない」
宇宙「それ以上言うと、許さないよ」
麗香「えっ?」
宇宙「恵ちゃんと一緒に帰りたいって言ったのは俺からだし、嘘でも同情でもない」
宇宙「昨日はめちゃくちゃ楽しかった」
宇宙「誰だか知らないけど、恵ちゃんの悪口を言うなよ」
麗香「あの、私はクラスメイトの・・・」
宇宙「知らないね。俺にとってはあなたはクラスメイトじゃないから」
宇宙「恵ちゃんに心から謝ったら、クラスメイトとして認めるよ」
麗香「えーっと、恵さん、ごめんなさいね」
恵「あっ、う、うん・・・」
宇宙「恵ちゃん、行こう」
恵「えっ、どこに?」
宇宙「俺の住んでる星」
宇宙「恵ちゃんには、この星は合ってないんだよ」
恵(そう言って、宇宙くんは私の手を引っ張ると)
恵(いきなり、学園の外に飛び出した)
〇幻想空間
恵「わわわ、あわわわ・・・」
宇宙「驚いた? こうやって俺の住んでる星に行くんだよ」
恵「理屈でどうなってるのとか、考えないほうがよさそうだね・・・」
宇宙「恵ちゃん、黙ってたけど」
宇宙「実は俺、故郷では王子なんだ」
宇宙「だから、俺の・・・お姫様になってくれませんか?」
恵「えええっ!?」
宇宙「俺、恵ちゃんのこと、好きになっちゃったから」
宇宙「でも、あの学園は嫌いだ」
宇宙「だったら、結婚して俺が一生、恵ちゃんのことを守るよ」
恵「私も・・・宇宙くんのことが好きだよ」
恵「まだ出会って二日目なのに、早すぎるかもしれないけど」
宇宙「よっしゃー、じゃあ、俺と結婚してくれるんだね!!」
恵「ごめんね、でも、それとこれとは別なんだ」
宇宙「えっ?」
恵「私、思えばいじめをどうにかしようとか、自分で全然何もできてなかった」
恵「まず、自分が変わらなければ、何も変わらない」
恵「だから私、戦ってみる」
恵「そう思わせてくれたのは、宇宙くんだよ」
宇宙「そっか・・・」
宇宙「恵ちゃんがそう決めたなら、俺は応援するよ」
宇宙「違うところに行っても、恵ちゃんのこと、見守ってるから」
恵「うん、ありがとう!!」
宇宙「それじゃあ・・・さようなら」
恵「えっ?」
〇教室
麗香「あら、存在自体が邪魔な人が、今日も学校に来てるわ」
達夫「存在感薄すぎて、気が付かなかったぜ」
恵「あれ・・・?」
恵(気が付けば私は、教室に戻っていた)
恵(どうも、宇宙くんの存在自体がなかったことになっているようだった)
恵「あっ、あのっ」
麗香「あら、何か文句が?」
恵「いい加減にして! 私だって人間の心はあるのよ!!」
麗香「い、いきなり何よ」
いじめは簡単になくなるものじゃない
だからこそ、戦う
恵「私、これからは負けないからね」
恵「私には、宇宙人が味方についてくれているんだから」
麗香「とうとう頭、おかしくなったのかしら・・・」
ほかの人に、なんて言われたっていい
私の彼は、宇宙人
宇宙くんの嫌味のない明るさ、物語を通しての主人公の成長、そして、キュンが2000字の物語全体から感じられて、とてもハッピーな気持ちになれました!
素敵な作品ありがとうございます😊
まさか本当に宇宙人だったとは!笑
守られるだけの可愛い存在ではなく、困難に立ち向かって戦うかっこいいヒロインって魅力的ですよね。
宇宙くんが本当に居たのか、恵の妄想だったのか、にしても、結婚は早すぎですね(笑)
恋愛系のキュンかと思わせておいて、イジメに立ち向かう恵の話しだったとは。意外性が好きです。