解けない呪い

朝永ゆうり

「呪い」を解く方法(脚本)

解けない呪い

朝永ゆうり

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〇住宅街の公園
  ──あれは、私?
望月 理久(りく兄)「あ、いた!」
三好 伊沙「りくにい?」
望月 理久(りく兄)「帰ろ?」
三好 伊沙「うん!」
  ──ああ、こんなふうに、ずっと素直でいれば良かったんだ。

〇教室
  ──これは、高校生の頃?
望月 蒼空(そら)「付き合ってくれ!」
三好 伊沙(そらくんと付き合ったら、りく兄も意識してくれるかな?)
  ダメダメ!そんな打算的なこと・・
三好 伊沙「いいよ」
  よくないから!

〇通学路
望月 蒼空(そら)「あ、兄ちゃん!」
望月 理久 (りく兄)「2人、付き合い始めたんだって?」
望月 理久 (りく兄)「おめでとう!」
  だからダメって言ったのに。──そうか。
  こんな自分が嫌だったから、自分に呪いをかけちゃったんだ。
  ──「好き」って言えない呪いを。

〇黒
  だから、今も──

〇可愛らしい部屋
三好 伊沙(夢か・・)
三好 伊沙「もしもし?」
母「伊沙?お見合いの写真見た?」
三好 伊沙「お見合いはしないって言ったでしょ!」
母「恋人も出来ないくせによく言うわね」
母「もう30なんだから・・」
三好 伊沙「まだ29!」
母「あと1ヶ月だけでしょ」
母「文句言うなら恋人の一人でも作んなさいよ!」
母「・・30までに恋人ができたら、お見合い取り止めてあげる」
三好 伊沙「はあ?」
母「伊沙には無理ね。諦めてお見合いしなさい。じゃ」
三好 伊沙「ちょっと!」
  ツー、ツー

〇オフィスのフロア
三好 伊沙(お見合いかぁ)
望月 理久 (りく兄)「三好さん?」
三好 伊沙「望月部長!」
望月 理久 (りく兄)「今晩、飲みに行こっか?」
三好 伊沙(りく兄・・)

〇大衆居酒屋
望月 理久 (りく兄)「かんぱーい」
望月 理久 (りく兄)「で、何があったの?」
  私はお見合いのことをりく兄に話した。
望月 理久 (りく兄)「はは、おばさんらしいな」
三好 伊沙「笑わないでよ」
望月 理久 (りく兄)「ごめん」
三好 伊沙「りく兄は?弟が先に結婚しちゃって、色々言われない?」
三好 伊沙「ごめん」
望月 理久 (りく兄)「ま、望月家の未来はそらに託したってことで!」
望月 理久 (りく兄)「俺の恋人は”仕事”」
望月 理久 (りく兄)「恋愛は専門外」
望月 理久 (りく兄)「で、どうするの?」
望月 理久 (りく兄)「お見合い、したくないんでしょ?」
三好 伊沙「うん」
望月 理久 (りく兄)「じゃあさ・・」
望月 理久 (りく兄)「俺と付き合っちゃう?」
三好 伊沙「えっ!?」
望月 理久 (りく兄)「違う違う、恋人のフリ!」
望月 理久 (りく兄)「おばさんに彼氏がいると思わせればいいんでしょ?」
望月 理久 (りく兄)「善は急げ。スマホ貸して?」
  『黙っててごめん、本当は彼氏いるんだ』
望月 理久 (りく兄)「送信っと」
三好 伊沙「何してるの!?」
望月 理久 (りく兄)「おばさんにメール」
  『そんな手には乗らないよ。電話で声でも聞かせてくれるなら別だけど』
望月 理久 (りく兄)「おばさん厳しいー!」
  『嘘じゃないって。週末デートするから、電話しようか?』
  『そこまで言うなら。ただし、電話はこちらから掛けさせていただきます』
望月 理久 (りく兄)「おばさん納得した!」
三好 伊沙「いいの?」
三好 伊沙「週末も私と一緒に過ごさなきゃいけないじゃん」
望月 理久 (りく兄)「・・嫌だった?」
三好 伊沙「ううん、全然っ!」
望月 理久 (りく兄)「じゃ、決定。今週末デートね」
望月 理久 (りく兄)「場所は、伊沙ちゃんのお家!」

〇可愛らしい部屋
  週末
三好 伊沙(久々に掃除した・・)
  ピンポーン
三好 伊沙「いらっしゃい。お茶出すね」
望月 理久 (りく兄)「お構い無く」
望月 理久 (りく兄)「あ、コンセントだけ貸して?」
三好 伊沙「いいけど・・」
望月 理久 (りく兄)「サンキュ」
  カタカタ、カタカタ
三好 伊沙「仕事?」
望月 理久 (りく兄)「そ」
三好 伊沙(分かってたけど──)
三好 伊沙(私だけ特別、とか、ないよね・・)
三好 伊沙「あ、お母さん」
望月 理久 (りく兄)「早速!」
三好 伊沙「もしも・・」
母「伊沙?さっさと彼氏と代わんなさい!」
望月 理久 (りく兄)「おばさん、声デカすぎ!」
三好 伊沙「ごめん・・」
望月 理久 (りく兄)「もしもし、伊沙さんのお母さんで・・」
母「キャー!声がイケメン!」
  母はそのままマシンガンのように話し続け、気付けば15分が経っていた。
望月 理久 (りく兄)「はい、スマホ」
望月 理久 (りく兄)「おばさん、全然俺だって気付かなかったな~」
三好 伊沙「何かごめんね」
望月 理久 (りく兄)「いいよ、楽しかったから」
望月 理久 (りく兄)「・・またかかってくるかな?」
三好 伊沙「その時はよろしくお願いします」
望月 理久 (りく兄)「おう!」
  カタカタ、カタカタ
三好 伊沙(本でも読むか・・)

〇可愛らしい部屋
望月 理久 (りく兄)「いーさちゃん?」
三好 伊沙「ごめん!つい・・」
望月 理久 (りく兄)「いいよ」
望月 理久 (りく兄)「そろそろ帰るね」
望月 理久 (りく兄)「嘘、電車止まってる」
三好 伊沙「え!?」
三好 伊沙「うち、泊まってく?」
望月 理久 (りく兄)「え?」
三好 伊沙「嫌だよね、あはは・・」
望月 理久 (りく兄)「いや」
望月 理久 (りく兄)「お言葉に甘えさせて?」

〇可愛らしい部屋
三好 伊沙「りく兄もお風呂どーぞ」
望月 理久 (りく兄)「ぷっ」
望月 理久 (りく兄)「中学の芋ジャー」
三好 伊沙(しまった!)
三好 伊沙「これ一番楽なの!」
三好 伊沙「りく兄も着てたでしょ?」
望月 理久 (りく兄)「うん」
望月 理久 (りく兄)「でも芋ジャーって」
三好 伊沙「もう!」
  恥ずかしくなって、りく兄に背を向けた。
望月 理久(りく兄)「ごめん・・」
三好 伊沙「ひど・・」
  語尾は喉の奥に引っ込んだ。
  勢いよく振り返った先に、りく兄のどアップがあったのだ。
  少しでも動いたら触れてしまいそうな距離。
望月 理久 (りく兄)「伊沙ちゃん・・」
  初めて聞く、りく兄のかすれた男性的な声。
  顔にかかる、りく兄の吐息。
三好 伊沙「りく、にい・・?」
  爆発寸前の心臓。
  どんどん近づく、りく兄の顔。

〇黒
  ぎゅっと目をつむった。

〇可愛らしい部屋
望月 理久 (りく兄)「拒まなきゃダメでしょ?」
三好 伊沙(ダメじゃない)
三好 伊沙(でも言えない)
三好 伊沙(りく兄に振り向いてほしくて、弟と付き合ってた──)
三好 伊沙(最低な女だから)
望月 理久 (りく兄)「それとも」
望月 理久 (りく兄)「俺のこと好きになっちゃった?」
三好 伊沙「好き」
望月 理久 (りく兄)「冗談だったんだけど」
三好 伊沙「人として、ね」
三好 伊沙「りく兄は大事な幼馴染のお兄ちゃんだもん」
望月 理久 (りく兄)「あ~なるほど」
望月 理久 (りく兄)「そりゃそっか!」
望月 理久 (りく兄)「そらと付き合ってた時点で俺は圏外だよな」
望月 理久 (りく兄)「不覚にもドキッとした」
望月 理久 (りく兄)「でもありがとう」
望月 理久 (りく兄)「お兄ちゃんは、嬉しいです」
三好 伊沙「りく兄、恋人のフリ、もういいや」
望月 理久 (りく兄)「え?」
三好 伊沙「好きじゃない人と恋人ごっこするの、無理みたい」
望月 理久 (りく兄)「・・そっか」
三好 伊沙(『好きじゃない人』か)
三好 伊沙(言っといて、何傷付いてるんだろう)
  鼻の奥がつんとして、ぐっと唇を噛んだ。
  少しだけ、血の味がする。
望月 理久 (りく兄)「あー・・」
望月 理久 (りく兄)「やっぱ帰るわ。タクシー捕まるかな~」

〇可愛らしい部屋
三好 伊沙「好き」
三好 伊沙「大好き」
  こぼれ落ちた言葉と大粒の涙が、絨毯を丸く染めていく。
三好 伊沙(りく兄・・)

〇駅前広場
三好 伊沙「りく兄!」
三好 伊沙「びしょ濡れじゃん」
望月 理久 (りく兄)「傘持ってないし仕方ないよ」
望月 理久 (りく兄)「どうしたの?」
三好 伊沙「忘れ物」
望月 理久 (りく兄)「明日で良かったのに」
三好 伊沙「あとね」
三好 伊沙「あのね・・」
三好 伊沙「りく兄が好き!」
三好 伊沙「男の人として、好きなの!」
望月 理久 (りく兄)「・・マジ?」
三好 伊沙「・・大マジ」
三好 伊沙「迷惑だよね。でもどうしても伝えたくて」
望月 理久 (りく兄)「迷惑じゃねーよ」
三好 伊沙「え・・」
望月 理久 (りく兄)「俺も伊沙ちゃんが好きだ!」
望月 理久 (りく兄)「『仕事が恋人』っつったのは、伊沙ちゃん以外付き合いたくねーって思ってたから」
望月 理久 (りく兄)「勝ち目ねーから言えなかったんだよ」
三好 伊沙「違っ、私はずっとりく兄が・・」
望月 理久 (りく兄)「・・俺もずっと好きだった」
望月 理久 (りく兄)「なのに言えねーとか・・」
望月 理久 (りく兄)「ダッセー、俺!」
三好 伊沙(りく兄・・)
三好 伊沙「あのさ」
三好 伊沙「帰ろ?」
三好 伊沙「うちでよければ」
望月 理久 (りく兄)「おう!」

コメント

  • 名作ありがとうございます😄
    好きと言えない呪いというのは、最高のアイデアですね!!
    やはり上手い人は、最初から上手いのですね感服いたしました🙇

  • 本気の好きほど言えなくて、溜めれば溜めるほど重くなってしまいますね。
    だからこそのヒロインが言った時の開放的を感じたのかも。
    あと、弟が先に結婚のくだりが私と同じで親近感ありましたw

  • こちらの作品、未読だったようです💦
    すっごくキュンキュンしました♥️なるほど、こういうことですね、キュンって。
    幼馴染みものに大変弱いので、だんぜん、こちらの作品が好みでした😆 
    大賞となれる作品だと思います! 応援してます✨

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