スクLOVEる交差点!!

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〇雲の上
  昨今の日本の婚姻件数の低下を嘆いた天使たちは、何を考えたか
  渋谷にキューピットの矢を放った
  この行為が世の理すら捻じ曲げてしまうことも知らずに。

〇渋谷駅前
わたし「ねー、今日も帰りに109に行こーよー」
美春「ムリムリ。もう今月のお小遣いないもん」
  あたしは今をときめく女子高生。隣にいるのは友達の美春同じく女子高生だ。
  今日も今日とてダル〜い学校に行ったあと渋谷でルーティンワークを洒落こもうとしていた。
  でも
美春「いたっ!」
  前を歩いていた美春が突然鼻を押さえてうずくまる。
わたし「どしたの?」
美春「何か壁にぶつかったぁ」
わたし「冗談とかウケる〜、壁なんてどこにも」
  ぺたっ
わたし「・・・・・・へっ?」

〇渋谷駅前
  場所は渋谷スクランブル交差点。私たちの通学路はここを通らなければいけない。
  でも横断歩道に透明な壁のようなものがある。押しても避けようとしても前に進むことが出来ない。
男「なんだこれ!?」
男「前に進めない・・・!」
  周りの人たちもこの状況に気づいてるみたいで、まさに〝サンシャサンヨウ〟にあたふたしている。
  そのとき誰かが叫んだ。
おっさん「おい! あれを見てみろ!」
  交差点にいる皆が電光掲示板を見た。
  そこには──
「スクLOVEる交差点!!?」

〇渋谷駅前
  ざわざわ
  がやがや
  誰一人通れない交差点に
  人が集まってくる。
  このまま渋谷中の人たちが集まって潰れちゃいそう!
  そのとき
男子学生「・・・・・・!? お、おい! 通れたぞ!!?」
女子学生「私も! でもケイくんどうして!?」
わたし(えっ!?)
  隣に来てた2人の男女が交差点に足を踏み入れていた。
  ペアルックのパーカーを
  制服に着込んでる。
  たぶん学生カップルだ。
わたし「(ん、カップル・・・・・・?)」
  ここにいるほとんどの人が気づいた。
  スクLOVEる交差点という名前
  交差点を通過できた2人のカップルの風貌・・・。
(もしかして・・・)
((スクールラブしてるペアじゃないと通れない!!?))

〇渋谷駅前
  そこに気づいてからはみんな早かった。
老人「ええそうです! 御社・・・・・・じゃなかった御校に入学します! よし準備はいいか鯖江!!」
老婦人「私も聖マリモンヌ学園へ入学出来ましたわ! 行きましょ歳三さん!!」
男子生徒「本来ライバル同士だがテストに間に合わなければ元も子もない・・・ 結婚するぞ卓!」
男子生徒「ちっ仕方ねぇな・・・ 今回だけだぞ聡!!」
腐女子生徒「きゃー!! 美男×美男のカップルよー!!」

〇渋谷駅前
  瞬く間に成立するスクールラブカップル
  夕方になる頃にはペンギンの群れみたいにガヤガヤしていた人混みも私たちだけになっていた。
  ちなみになぜ私たちだけなのかと言うと
  この混乱に乗じて私はイケメンと、美春は岩のようにゴツイマッチョとくっつこうとして失敗したからだ。
わたし「・・・・・・はぁ。まあそう簡単にいかないわね、美春一旦私と組んで交差点渡ろ〜」
美春「えっ無理。私この人と渡る」
わたし「は?」
  目の前に居たのは
???「どうもコンニチワ」
  私は彼のことを写真で見たことがある。でも写真よりも数段、迫力があった。
  硬い鉱石のごとき重々しさと鋭さが漲っている顔。
  どこからどこまでも引き締まっていて輪郭の正しい目鼻立ちの隈々には、針金のように力強い筋が通っている。
  でも心の中からわいて出るような微笑の影が、彼の人の良さを自然と表しているようで──
わたし「いやモヤイ像じゃん!!?」
美春「そう! ようやく見つけたの私の理想の彼ピ♡」
わたし「いやいやいやいや!!? それ人じゃなくて岩!! 彼ピになれないよ!!?」
モヤイ像「僭越ながらこの度、天よりお力をいただき人としての機能も与えられましタ」
わたし「人としての機能!?」
モヤイ像「えぇ、こちらをご覧くださイ!」
  そう言うとモヤイ像はすくっと立ち上がった。
  顔に負けないくらいのゴツゴツした肉体が〝ありのまま〟で晒される。
  文字通り岩のような大胸筋、カレールー並に割れたシックスパック、そして──
わたし「◎△$♪×¥●&%#〜〜〜ッ?!」
  ウブな私は下まで見れなかった。
  堪らず目を覆っているといつの間にか2人は居なくなっていた。

〇渋谷駅前
わたし「嘘でしょ美春・・・・・・」
わたし(ずっとムキムキのマッチョメンを探してるのは知ってたけど・・・・・・)
わたし「でも・・・・・・、まあここは友達として祝福してあげますか!」
  私は交差点へ向き直った。
  立ち往生してるのは私だけ。
わたし「もうスクールラブしてない人なんていやしない。でもだから、今度は確実にいける・・・・・・!」
  力強く指を指す。
  その先には岩ではなく
  銅で出来た像が1つ。
わたし「ずっと何年も何十年も待ち続けた忠犬・・・・・・ハチ公像!」
わたし「モヤイ像がありならこっちもアリでしょ?」
ハチ「・・・・・・」
  私の呼び掛けに応えるようにハチが台座から降りてくる。
わたし「私、犬好きなんだよね、飼い主には敵わないかもしれないけど優しくしてあげるよ?」
ハチ「くぅーん」
  そのとき
  ふとハチ公の後ろに人影が見えた。
見覚えのある紳士「ハチ、行こうか」
ハチ「わん!」
  私に目もくれず、ハチは見覚えのある紳士と歩き去っていく。
わたし「嘘ぉ・・・」
  とうとうスクLOVEる交差点にいるのは私だけになった。

〇渋谷駅前
  そのまま時は過ぎ・・・・・・
  ハチ公とモヤイ像を失った人々は
  代わりに動けない私の前で待ち合わせるようになった。
わたし(・・・)
わたし(そう。 今や私こそが 新たな渋谷の待ち合わせスポット──)
わたし「犬山ハチコよ」

コメント

  • 男同士でもいいんだ!って思いました。笑
    でも、動物でもいいなら当然ですよね。
    残された彼女のオチで笑いました!
    待ち合わせポイントになってしまうとは、誰も想像出来ません!

  • すごい発想です。スクラブルってそういうことだったんですね。それにしてもラストはスケールの大きな(?)終わり方でしたね。

  • カップルじゃないと通行できないなんて、なんという残酷な交差点!じゃあ僕はその交差点には永遠に近づかないようにしなければ…ぴえん

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