Sparking Carats!

西園寺マキア

第35章 過ちと過去(脚本)

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西園寺マキア

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〇個別オフィス
  サルビアプロダクション内──
さとこ「やっぱり納得できません!」
  さとこは代表の部屋を訪れていた
  部屋の空気はすでに重いようだ
さとこ「私思ったんです、不満を抱えたままステージには立ち続けられないって 答えてください」
さとこ「メインボーカルは・・・いや、センターはずっと私だったはずです! どうして・・・」
むつみ「だから何度も言っているでしょう、きりはレッスン時間も足りないし、まだダン・・・」
さとこ「それは何度も聞きました!!」
  さとこが机をバンとたたいた
さとこ「それだけじゃないですよね? それだけが理由じゃないですよね?」
むつみ「・・・」
  代表は言葉を詰まらせ、一点を見つめている
むつみ「・・・確かに、彼女のスター性は目を見張るものがあるのも事実だけど・・・」
さとこ「・・・」
  さとこは唇を噛んだ
さとこ「・・・それだけじゃないですよね」
むつみ「・・・」
  さとこはキッと代表を睨みつけた
さとこ「・・・代表、私と初めて会った時のこと、覚えてますか」

〇立ち飲み屋
むつみ「あなたがさとこちゃん?」
さとこ「は、はい・・・」
「毒親に暴力で脅されて働かされていたボロボロの私をみつけてくれて・・・」
むつみ「やっと見つけた、あなたは天才よ」
むつみ「今度、ここの事務所にいらしてくれない?」

〇個別オフィス
むつみ「アップロードされていたストリートダンスの動画を見たの」
むつみ「あなたのダンスには人を惹きつける力があるわ」
むつみ「私がプロデュースするアイドルグループで一緒に頑張ってくれない?」
さとこ「で、でも、私、働かないと・・・ レッスンとかしている時間、なくて・・・」
むつみ「あなた、中学生よね? どうして?」
さとこ「親に金を渡さないと殴られるんです・・・ 今も年齢を偽って無理やり働いてて・・・」
むつみ「アイドルになって売れれば、今の何倍だって稼げるわ、そうでしょう?」
むつみ「デビューするまでは私が立て替えてあげる」
むつみ「ご両親には新しいバイト先にした、といってウチに来てレッスンすればいいわ」
「私を暗闇から救い出してくれた・・・」

〇個別オフィス
むつみ「デビューシングル大ヒットおめでとう! CRESCENT、好調の滑り出しね!」
さとこ「あの、代表、これ・・・」
さとこ「今まで立て替えていただいていたお金です」
むつみ「・・・受け取れないわ」
さとこ「そんな、でも・・・」
むつみ「CRESCENTはあなたの輝きが生んだグループなの 感謝してるのはこちらのほうよ」
むつみ「それに、ここまで苦楽を共にしてきたのよ、あなたは私の娘同然」
むつみ「大切な娘からのお金なんて受け取れないの!」
さとこ「代表・・・」
「今まで親からの愛情なんてひとつも貰えなかった」
「でもあの日、私は初めて思ったんです」
「ああ、これが母の目なんだと、愛なんだと・・・」

〇個別オフィス
さとこ「・・・代表はきりと話してるとき、あの日と同じ目をしてますよね」
さとこ「・・・あの日よりも、深く、温かい」
さとこ「もう私には向けてくれない、愛のこもったまなざしで──」
むつみ「・・・」
  代表は観念した表情で椅子に座りなおした
むつみ「・・・私、実はね」
むつみ「・・・娘がいるのよ」
むつみ「いや、正確には「娘がいた」と言うべきかしらね・・・」
  代表は財布から古びた写真を取り出した
  若いころの代表と、生まれたばかりの赤子が映っている
  赤子の手には紫色のペンダントが握られていた
むつみ「DIAmondが解散するつい直前にね・・・」
さとこ「そんな・・・知りませんでした」
  代表は少しだけ寂しそうに笑った
むつみ「ねえ、当時無名だったデビューしたての私が突然世間に注目されて、」
むつみ「ダイヤフェスでリカと並んだなんて・・・ 冷静に考えたらおかしいと思わない?」
さとこ「それは、代表のスター性があったからだって・・・」
むつみ「芸能界は甘くない 私は当時、のし上がるためならなんでもした」
むつみ「父親が誰か、今だってわからない」
さとこ「・・・」
  代表は再び写真に目を落とした
むつみ「ねえ、私、そんなわが子でもね 心の底から愛していたのよ」
むつみ「かわいかった・・・ 私の指を握る小さな手のぬくもりを、今でも覚えてる」
さとこ「今、その子は・・・?」
むつみ「さあ、生きているのかすら・・・」
むつみ「トップアイドルにスキャンダルはいけないって、無理やり引き離されちゃった」
むつみ「当時18歳・・・ 私は周りの大人に逆らうこともできなかった」
さとこ「そうですか・・・」

〇空
「結局アイドルは辞めたけど、そのあとも結局娘の居場所はわからず仕舞い」
「今思えば私はずっと・・・行き場のない母性を抱えていたのかもしれない・・・」

〇個別オフィス
むつみ「なんとなく気づいてたけど、ずっと目をつむってきた」
むつみ「アイドルを導くのが今の私の立場だなんて大義名分を掲げて、」
むつみ「みんなを娘代わりに見立てて勝手に母親ヅラなんかしちゃったりして・・・」
むつみ「身勝手だったわね、私・・・」
  代表は顔をあげた
むつみ「ねえ、さとこ、あなたが一人暮らしを始めて、両親と仲直りして、すごく嬉しかった」
むつみ「そして、寂しかった」
むつみ「もう私なんかいなくたって、あなたは一人で歩いて行ける」
さとこ「で、でも、私が立ち直れたのは間違いなく代表のおかげなんです!!」
むつみ「ふふふ、どうもありがとう」
  代表は寂しそうにさとこの頭を撫でた
むつみ「あなたがステージのあと、両親と笑って話してるのを見て嬉しかったの、でも、」
むつみ「今思えば無意識に考えたのかもしれないなって、次の子を探さなきゃ、って・・・」
  代表は窓の外を見た
むつみ「私・・・最低ね」
むつみ「あなたに言われるまで、無意識に酷いことをしてたのに、気が付きもしなくって・・・」
さとこ「・・・」
むつみ「きりが・・・あの子が可愛くて仕方がないのは事実、」
むつみ「でもね、プロデューサーとして冷静に考え直しても、彼女はセンターに相応しいと思う」
むつみ「あなたたちをより輝かせるために、必要な判断だと思って、今回は納得してくれるかしら」
  代表がさとこの手を取った
  金色に輝く瞳に吸い込まれそうだった
さとこ「・・・はい」
  さとこは絞り出すように返事することしかできなかった

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