歯が痛い!

カズー

読切(脚本)

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〇渋谷のスクランブル交差点
仙崎(歯が痛い)
仙崎(油断していた)
仙崎(まだ大丈夫だって・・・)
仙崎(とうとう 耐えきれなくなってきた)
仙崎(もう だめだ 限界だ)
仙崎(歯医者・・・歯医者・・・)
仙崎(予約なしでも行けるところ・・・ ここは渋谷だから あるはず)

〇渋谷の雑踏
  街の音が・・・
  スピーカーから流れる音楽が・・・
  歯に響く・・・
  人混みに流されながら
  スマホで歯医者を 検索する
  ああ 歯が痛い・・・
  その時 ふと気付いたのだ

〇センター街
  あれ? 痛くない?
  いや? 痛い!
仙崎(なんだこれは?)
仙崎(これだ このスピーカーから流れる 大音量の音楽のせいだ)
仙崎(音楽と 街のざわめきで)
仙崎(歯の痛さが 変わっている!?)
  嘘でもなんでもいい
  この痛みがなくなるなら!!
  俺は この渋谷の中で
  一番 歯が痛まない場所を探し始めた

〇街の宝石店
仙崎(ここだ ここが一番 痛くない)
仙崎(音楽と街の音が中和されているんだ)
仙崎(ここで歯医者を探そう!!)
  あの
チカ「何か用ですか?」
仙崎「え?」
仙崎「俺?」
チカ「うん、店の前にずっと立ってるから」
  俺は周りを見渡す
  雑貨屋だ
  ちょっと個性的な
  つまりこの子は店員か
チカ「おうい! 聞いてんの!?」
  やばい 機嫌が悪い
チカ「あのさ もしかして?」
  俺は言い訳を探した
  何か、うまい言い訳は・・・
チカ「もしかして、歯、痛いんじゃない?」
  信じられない気持ちを抑えて
  俺は声を絞り出す
仙崎「そうなんだよ!!」
チカ「うん やっぱり」
仙崎「なんでわかった!?」
チカ「だって めちゃくちゃ歯痛そうにしてるから」
チカ「そんなに 顎に手を当ててる人いないでしょ」
チカ「で、ここで何してるわけ?」
  俺は正直に打ち明ける
仙崎「信じられないかもしれないけど」
仙崎「スピーカーの音を 歯に近づけると 痛くなくなるんだ」
  店員はすこし考えてから言った
チカ「へえ、そっか」
仙崎「え?・・・疑わないのか?」
チカ「別に」
チカ「ま、そんなこともあるよ」
チカ「あたしも踊りすぎて 足 痛いの気づかないことあるもんね」
仙崎「信じてくれるのか?」
チカ「うん」
チカ「まあ あまり邪魔になんないようにしてよ」
  彼女は店に入っていった
  ありがたい
  まさか理解されるなんて・・・
  俺は涙目になりそうなのを我慢する
  苦しいときに優しくされると
  人は泣きたくなるんだな・・・
  俺はスマホで歯医者の予約を取る
チカ「ねえ」
チカ「店の中のほうを見てなきゃいけないの?」
チカ「すごい怖いんだけど」
  そうだな
  俺なんか泣いてるし・・・
仙崎「悪いが 左の歯が痛いんだ」
仙崎「スピーカーの向きに合わせて」
仙崎「こっち向きじゃなきゃだめなんだ」
チカ「そっか」
仙崎「信じてくれるか?」
チカ「うん こんな堂々とした変態はいないもんね」
チカ「歯医者みつかるといいね」
仙崎「もう みつかった」
チカ「予約とれた?」
仙崎「とれたよ」
チカ「え?」
チカ「じゃあ、今、何してんの?」
仙崎「悩んでる」
仙崎「歯医者に行くかどうかを」
仙崎「ここに立っていれば 痛くないし」
仙崎「何か、もしかして別の方法が あるのかもしれない」
チカ「ねえよ!!」
仙崎「俺は歯医者が本当に嫌いなんだ」
チカ「ええ・・・怖いの?」
仙崎「めちゃくちゃ怖い!!」
チカ「うーん・・・」
  彼女は店の奥に消え、戻ってくる
チカ「はい」
  彼女が差し出したのはハンカチだった
仙崎「なにこれ?」
チカ「店の香水を数種類ぶっかけたハンカチ」
チカ「すんごい匂いだから」
チカ「一瞬で 痛いとかもう関係なくなる」
チカ「これ持って、さっさと歯医者に行ってこい」
チカ「ほら!! さっさと行け!!」
仙崎「はい・・・」

〇渋谷駅前
  もう優しい 俺の理解者は いないのだ
  俺は彼女の ハンカチの匂いをかいだ
  すごい
  ものすごく くさい
  気が遠くなる
  いかん 倒れている場合じゃない
  朦朧とした意識の中
  俺は 歯医者へと走りだす

〇街の宝石店
チカ「ありがとうございましたー」
チカ「今日はこれくらいかな」
「あれ?」
仙崎「どうも」
チカ「歯医者終わった?」
仙崎「うん」
仙崎「まだ麻酔効いてるけど、とりあえず」
仙崎「もう大丈夫」
仙崎「ありがとう 助かった」
チカ「そりゃよかった」
仙崎「あ」
仙崎「ハンカチの代金払ってなかった 買うよ」
チカ「まいど」
仙崎「それで・・・」
仙崎「だいぶ虫歯がひどかったから」
仙崎「あと何回か来なければいけないらしい」
仙崎「その時」
仙崎「また歯医者が怖くなったら ここに来てもいいかな?」
チカ「うーん」
チカ「来週は水木金はいる」

〇渋谷のスクランブル交差点
  あのさ
  朝から歯が痛くて何も食べてなかった
  このあと、どう?
  麻酔がきれた後で

コメント

  • 歯が痛いときは歯が痛い時にしか気持ちはわからないものですよね。あの激痛…本当に早く治したくて治したくて…。
    そんな気持ちが伝わってくるのと、新たな始まる出会いが思った以上にマッチしててよかったです!

  • 「歯が痛いの?」って聞いてきた時、最初は他の人にも歯痛に効くのかな?と思ってしまいました。笑
    歯が痛いと辛いですよね。
    でも、いい出会いもあったみたいでよかったですね。

  • 楽しいお話しでした、歯が痛い、歯医者が怖い、行きたくない(笑)可愛いですね、でもそれが結果を導いて、、、楽しいお話しでした。

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