渋谷に空いた穴

京サリ

その穴の先には(脚本)

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渋谷に空いた穴
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〇テレビスタジオ
アナウンサー「今日未明、渋谷駅前のスクランブル交差点にて、突如巨大な穴が出現しました」
アナウンサー「なぜこのような穴が空いてしまったのか」
アナウンサー「現在その原因を調査しています」

〇温泉の湧いた渋谷
警察「信号渡られる方!危ないですから近づかないでください!」
警察「ちょっと君!ちゃんと前見て歩いて!」
勇斗「わ!すみません!」
勇斗(こんなことになってるなんて聞いてねえよ・・・)
勇斗(だりい・・・また店長に怒られちゃうよ)
勇斗(にしてもこの穴なんなんだろ・・・)

〇テーブル席
勇斗「んでバイト遅れて店長にすげー怒られたんだよ」
美咲「それは大変だったね」
勇斗「ほんとだよ、俺がやりたくてやったわけでもねえっつーの」
美咲「・・・」
勇斗「どうした?姉ちゃん」
美咲「あ、ううん、なんでも」
勇斗「そうだ、最近渋谷に変なくまが出没してるらしいよ」
美咲「変なくま?」
勇斗「白黒でツギハギの」
美咲「え!知ってるの?」
勇斗「いや、知らないけど・・・」
勇斗「姉ちゃん知ってんの?」
美咲「あ、あんまり知らないかな」
勇斗「やっべもうこんな時間」
勇斗「そろそろバンドの練習行かないと」
美咲「頑張ってね」
勇斗「ありがとう!」
美咲「・・・」

〇温泉の湧いた渋谷
???「キキキ・・・」
???「もっと・・・もっとだ・・・」
???「おや、よく来てくれましたね」
美咲「あの、本当に大丈夫なんですか・・・?」
???「もちろん」
???「この先はみんなが笑うワンダーランド」
???「きっとあなたも笑顔になれますよ」
美咲「・・・わかりました」
美咲(どうせ死ぬつもりだったしいまさら変わんないよね)
???「さあ、ワンダーランドへようこそ」

〇ナイトクラブ
チャラ男「ウエーーーーーーーーーーーーイ!!!!!!」
チャラ男「カンパーーーーーーーーーーーイ!!!!!!!!」
チャラ女「いえーーーーーーーーーーーい!!!!!!」
チャラ女「アゲーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
チャラ男「お!おねーさん一緒に飲もうぜ!」
チャラ女「ぐいっといきなちょーーー楽しいよ」
美咲「え、な、なんですかここは・・・」
チャラ女「ちょーぜつたのしーワンダーランドだよ!」
美咲「ワンダーランド・・・?」
美咲「私、穴に落ちて死んだんじゃ・・・」
チャラ女「おねーさんウケる~ちょー生きてんじゃん」
美咲「そ、そっか」
チャラ男「ほら、にっこりぐいっといってみよう!」
「一口飲んだらパーラダイス! ほらにこにこにこにこにこにこにこにこ」
美咲「あ・・・なにこれ、顔が、熱くなって・・・」
美咲「ごちそうさまでした!!!!」
「ワッショイ!!!」

〇男の子の一人部屋
  ──数週間後
勇斗(姉ちゃんから全然連絡返ってこないな)
勇斗(どうしたんだろ)
勇斗(あーそろそろバイト行かなきゃ)

〇温泉の湧いた渋谷
警察「黄色いテープには近づかないでください!」
勇斗(はあ・・・疲れた・・・)
警察「君!危ないよ!」
勇斗「わ!ごめんなさい!」
女子高生「ねえ知ってる?この穴に落ちたら戻って来れないんだって」
女子高生「なにそれこわーい」
女子高生「あと穴の中には魔物が住んでて、そのせいで地震が起きてるんだって!」
女子高生「それは流石に嘘くさくなーい?」
女子高生「確かめたかったら落ちるしかないのかな」
女子高生「行ってみなよめっちゃ面白そうじゃん」
女子高生「やだよ!きゃはは!」
勇斗(帰ってこれない、かあ)
勇斗(姉ちゃんまさか・・・)
勇斗(流石に疲れてんな、ちょっとスタジオでも寄って帰るか)

〇温泉の湧いた渋谷
  ──深夜
???「キキキ・・・時はやってきました」
???「さあワンダーランドのみんな、地上の人たちも笑顔にするのです!!」
チャラ女「みんなー!あたしらとちょー楽しくなろ?」
チャラ女「一回落ちれば」
チャラ男「ワンダーランド」
チャラ女「そこはこの先」
チャラ男「アンダーグラウンド」
チャラ女「君も一緒に!」
チャラ男「はい!」
「にこにこにこにこにこにこにこにこにこ!」
???「キキキキキ・・・」
???「これでますますみんな笑顔です・・・!!」
???「キキキキキ!!!!」

〇温泉の湧いた渋谷
勇斗(やっべ、終電なくなる前に帰んねーと)
勇斗(ん・・・?なんだあれ)
勇斗「え?」
勇斗「姉ちゃん?」
???「さあ、あなたもどうぞご一緒に!」
美咲「にこにこにこにこにこにこにこにこ!!!」
勇斗「おい!姉ちゃんに何やってんだよ!」
???「おや?弟さんですか」
???「君のお姉さんに少しお手伝いをしてもらってるまでです」
勇斗「なんだよそれ・・・」
???「彼女私のところに来た時は死にたがってましたよ」
勇斗「・・・え?」
???「おや?家族なのに知らないんですか?」
勇斗「・・・」
???「今の彼女を見てください」
???「こんなにも笑顔だ」
???「私はその手助けを少ししたまでです」
勇斗「・・・手助け?」
???「ほんの少し薬を、ね」
勇斗「・・・てめえ!!」
???「おっと落ち着いてください。野蛮なのは嫌いなので」
???「ではこうしましょう・・・」

〇男の子の一人部屋
美咲「あれ?ここ・・・」
勇斗「おはよ」
美咲「勇斗!?どうして」
美咲「私くまと話してて、それで・・・」
勇斗「姉ちゃん夢でも見てたんじゃないの」
美咲「夢、なのかな」
勇斗「うん、でもあんまり具合よくないと思うからもう少し休んでな」
美咲「ごめんね迷惑かけて」
勇斗「何言ってんだよ」
勇斗「姉ちゃんは俺にとって大事な家族なんだから」
美咲「・・・」
勇斗「姉ちゃんさ、悩んでることがあったらなんでも言ってね」
勇斗「俺にとって姉ちゃんはたった一人の最高の姉ちゃんだからさ」
美咲「・・・」
美咲「ありがとう」
勇斗(あのくま、次会ったら絶対ぶっ殺してやる・・・)

〇温泉の湧いた渋谷
  ──昨晩
勇斗「取引?」
???「ええ、私はみんなの笑顔が見たいだけですから」
???「お姉さんを返してあげる代わりに」
???「君がずっと笑顔でいてください」
勇斗「は?笑顔?」
???「ええ、辛いときも悲しい時もずっと笑顔でいてください」
???「笑顔が増えればそれで満足です」
???「そのためには手段は選びません」
勇斗「いてっ・・・!」

〇男の子の一人部屋
勇斗(いてて・・・表情筋きっつ・・・)
勇斗(もしかして俺ライブの時も笑顔でいなきゃいけないのか?)
勇斗(やっちまった・・・)
勇斗「・・・」
美咲「・・・どうしたの?」
勇斗(姉ちゃんが帰って来たならいっか)
勇斗(今度こそ姉ちゃん守らなきゃ)
勇斗「なんでもないよ」
  ──完

コメント

  • 狂気の中に真実があるような、独特の不思議な感じがしました。
    笑顔って大切ですが、誰かに強要されるものでもありませんよね。
    妙に怖い話でした。

  • くまぁ何かすごい悪いことを企んでいて彼がそれを阻止する…という話だと思ったら、違ったみたいでした。くまに謝ります(笑)

  • なんだかんだ言って、このツギハギくまは悪いやつじゃないのか…?
    確かに社会に出ると笑うことって忘れがち…作られた笑いばかりのような気もします。
    大切なものを再確認できたし、ハッピーエンドなのかな?

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