読切(脚本)
〇諜報機関
人影「今からゲームを開始するけど」
人影「いい?ログインしたら動かないこと!」
PC「わかってるって!もー」
人影「本当か?」
人影「じゃあ、今回のゲームモード分かってる?」
PC「バッチリ!」
PC「『コンピューター相手』じゃなくて 今回は『プレイヤーと戦う』んでしょ?」
人影「PvEとPvPな」
PC「ピーブイ?」
人影「いいよ、忘れて」
人影「それじゃ、始めますか」
〇黒背景
〇電脳空間
ログイン画面
エリク太「ようこそ!」
エリク太「MMORPGの『ショウタイの塔』へ!」
エリク太「俺は案内役のエリク太。君は?」
ロボット犬「マホガンだ。よろしく」
エリク太「ええ!?」
エリク太「スゲー。ロボット犬のスキンだ・・・」
エリク太はまじまじとロボット犬を見た。
エリク太「超高難易度クエストのやつじゃん」
エリク太「えー・・・と」
エリク太「やり込みプレイヤーさんなら、教えることないかも・・・」
ロボット犬「今日は初心者をつれてきた」
かほり「どもっ。かほりです」
かほりの姿も、まじまじと見るエリク太。
エリク太「え!犬のスキン!?強っ」
エリク太「これもイベントクエストの最難関のやつじゃん」
かほり「ロボット犬に強くしてもらった!」
かほり「中身は素人です!」
エリク太「・・・えーと」
エリク太「アカウントの譲渡はBANの対象になって──」
ロボット犬「違う違う。PvEモードで組んでたの!」
かほり「ピー・・・?」
ロボット犬「コンピューターと対戦するアレだよ! 今まで遊んでたモード!」
エリク太「まあ」
エリク太「違法譲渡とかじゃないなら良いけど」
ロボット犬「かほりちゃん、ゲームよく分かってなくて」
かほり「さっきの会話、1ミリも分かんなかった!」
かほり「転がるしか出来ないんで、色々教えてください!」
エリク太「あ、だから案内役をリクエストしたんだね~了解!」
エリク太「じゃあ、今から案内するねー」
エリク太「んー・・・初心者で高性能スキン、ねぇ?」
エリク太「ふーん?」
エリク太は、手元にタブレットを召喚した。
エリク太「デフォルトモードOFF ライアーコード発令」
プログラム「実行完了」
エリク太「お手並み拝見、と」
〇近未来の廊下
バトルフィールド
ロボット犬「上から来るぞ!気を付けろっ」
ロボット犬「かほりちゃんは?」
かほり「あ~」
かほり「お~わ~」
転げ回っているだけのかほり。
ロボット犬「かほりちゃんはそのまま転がってて!」
敵「ハイジョ、ハイジョ」
敵の弾丸をローリング回避し、距離を詰めるロボット犬。
お返しとばかりに、ロケットランチャーを取り出し、敵に照準を合わせる。
エリク太(んー、ロボット犬の人は、動きに無駄がないし、普通に強い)
エリク太(で、問題の方は)
かほり「前転!後転!ローリング回避!」
エリク太「戦わないの?」
かほり「くるくる回るの楽しい」
かほり「それにボタン操作が難しいから、ムリ」
エリク太「慣れれば簡単ですよ!練習あるのみ!」
エリク太(でもしっかりタゲ取りはしてるんだよなぁ)
エリク太「よし!」
エリク太「二人とも~、次はこっちですよ~」
かほり「はーい」
ロボット犬「ここのフィールド、結構やり堪えあるな」
〇研究施設の守衛室前
エリク太「ここから先は二人で頑張ってくださいね!」
エリク太「僕は、『ショウタイの塔』の最深部で待ってますので!」
エリク太が消えたとたん、敵が湧いて出てきた。
あっという間に敵に囲まれる二人。
ロボット犬「かほりちゃん!避けてて!」
かほり「イエス、マム!」
ロボット犬「当たらなければ、どうということはない!」
ロボット犬の背がガバッと開き、巨大なレールガンが現れた。
新手の攻撃をかわし、すぐさま別の武器を構えるロボット犬。
武器を背中に格納して、ロボット犬が辺りを見渡した。
ロボット犬「ふう、ひととおり片付いたかな?」
かほり「ただいま!」
フィールドを転げ回っていたかほり。
ロボット犬「お帰り。なにか見つけた?」
かほり「なんか、さっき扉が光って開いたよ?」
ロボット犬「でかした!次のステージへ行ける」
かほり「・・・」
ロボット犬「どうした?」
かほり「これ、新しいモードなんだよね?」
ロボット犬「PvP ──プレイヤー同士の戦いね。 かほりちゃんは初めてでしょ」
かほり「んー、いつもとあんまり変わんないなーって」
ロボット犬「ああ、PvE──」
ロボット犬「ごめんごめん、牙剥かないで。 コンピューターと対戦するモードと変わんない?」
かほり「んー、敵はメチャメチャ強いけど、強いだけって言うか・・・」
かほり「なんか、画面の向こうに人がいる感じがしない!無機質ってやつ?」
ロボット犬「いや、んー、でも・・・確かにプレイヤーが敵を動かしてるにしては」
ロボット犬「挙動がワンパターンと言うか、既視感があると言うか」
かほり「なんか違和感だなー。 さっさと終わらせちゃおうよ」
かほり「光ってた扉はこっち!」
ロボット犬「・・・まさか、運営に目をつけられた?」
ロボット犬「いやでも、だったらすぐ垢BANするだろうし・・・」
かほり「おーい」
ロボット犬「今行く」
〇実験ルーム
別エリア
ロボット犬「敵が多いし、強いから、裏道を使おう」
かほり「えぇー、裏道に行くの?表の道だってまだやったこと無いのに」
ロボット犬「なんか違和感あるし、ちゃっちゃとクリアしたいでしょ」
ロボット犬「確か・・・RTA勢が──ごめんて。 『クリアのタイムアタック』をしてる人がいてね」
鼻にシワを寄せて唸るかほり。
ロボット犬「この道を使えば一気に最上階に行けるはず・・・」
ロボット犬「あ、あったあった。かほりちゃん、このボタンポチっとして」
黄色と黒のしましまのボタン。
かほり「う、うまく押せない・・・」
ロボット犬「かほりちゃん、ガンバって!」
ロボット犬「かほりちゃんのスキン──見た目じゃないと、押せないのよ、このボタン」
かほり「お、行けたか?」
かほり「おわわわ、揺れてるるる」
地面から水が吹き上がり、二人を吹き飛ばした。
〇仮想空間
最上階
ロボット犬「着いたな」
かほり「暗いなー」
ロボット犬「こっちはくっきり見えるよ」
ロボット犬「暗視機能ついてるから」
かほり「あん?だまれ下郎!」
ロボット犬「どこで覚えたの、そんな言葉」
エリク太「わっ!!」
エリク太「あはは!驚いた?」
かほり「エリク太じゃん」
かほり「も~、ビックリしてノド笛を咬みちぎるところだったじゃん」
エリク太「え・・・こわっ」
エリク太「ともかく、よくここまで来たね!」
ロボット犬「さあ、『ショウタイの塔』に招かれたんだ」
ロボット犬「どんなご褒美があるんだい?」
エリク太「んー、じゃあ教えるよ」
エリク太「『ショウタイの塔』の正体を」
〇仮想空間
一斉に明かりがついた。
人影「これが『ショウタイの塔』」
エリク太「アバターの向こうの、本当の君を写し出す、『正体の塔』だ」
現れたのは、ラフな格好の青年だった。
エリク太「改めて、管理人のエリク太です」
エリク太「さて、お姉さんは・・・一体どんな姿をしているのかな?」
そこに居たのは、小太りのナイスミドル。
エリク太「え・・・と」
マホガン准将「僕はマホガンだ。よろしく」
マホガン准将「安心したまえ。僕は『ロボット犬』を担当していた」
エリク太「あの・・・えーと」
エリク太「お姉さんは?」
かほり「まぶしいっ」
エリク太「え?ウソだろ」
エリク太「犬(アバター)のまま!?」
エリク太「『正体の塔』のプログラムは作動してるはずなのになんで」
かほり「おっと、こりゃあマズい」
かほり「正体がバレる前にずらかりますかな」
かほり ログアウト
マホガン ログアウト
エリク太「強制ログアウト!?」
エリク太「くそっ、逃した」
エリク太は息を目一杯吐いて──
それから一気に吹き出した。
エリク太「してやれた!悔しいなぁ」
エリク太「お姉さんの正体、拝みたかったのになー」
エリク太「どんな人だったんだろ」
エリク太「すっげー・・・気になるなぁ」
〇電脳空間
〇諜報機関
現実世界
とある部屋
かほり「あっぶね~、詰むとこだった」
現実世界のかほり。犬である。
マホガン准将「がっつりアウトだよ。かほりちゃん」
ロボット犬こと、マホガン。
階級は准将。
マホガン准将「バッチリ正体バレてたよ。 犬の姿、映ってたよ」
かほり「ロボット犬は黙っててください」
ムキッと牙を剥くかほり。
マホガン准将「だからなんでそんなに塩対応なのよ」
かほり「私が、歌って踊れるスーパードッグだからですよ」
かほり「他になにが?」
マホガン准将「あるでしょうよ、いろいろ」
かほり「えー?」
かほり「こんなに出来た犬、居ないでしょう?」
マホガン准将「しゃべる時点で、どこにもいないよ多分」
かほり「”白いカラス”は否定できないんだよ?」
かほり「知らないの?」
かほり「私より長く生きてるのに?」
マホガン准将「だから、なんで僕に当たりが強いのよ」
かほり「だって──」
かほり「だって、ゲームの中なら」
かほり「私みたいにしゃべる犬もいるって言ってたじゃん」
マホガン准将「アバターね」
マホガン准将「ロボット犬とか犬とか、特殊スキンだから、取れる人少ないのよ」
マホガン准将「だから、プレイ中も会えなかった」
マホガン准将「マッチ層が外れたからかな・・・」
かほり「・・・・・・」
かほり「それなのに、準備してくれたの?」
マホガン准将「え?」
かほり「犬の見た目、使えるようにするの大変だったんでしょ?」
かほり「なのに・・・」
かほり「私と遊ぶためだけにわざわざ?」
マホガン准将「・・・・・・うん」
マホガン准将「かほりちゃんが楽しめるかなって」
かほり「──はぁ」
かほり「ありがとう”兄さん”」
かほり「兄さん、早く犬の姿に戻れると良いね」
マホガン准将「ん?なに?ゲームの話し?それとも──」
かほりはマホガンのズボンを噛んでこれでもかと引っ張った。
マホガン准将「あははは。もとの姿に戻るまでは・・・それまでは人間の姿を楽しむさ」
かほり「バカバカバカバカ!」
こうして、兄妹の仲は深まるのだった。
〇配信部屋
現実世界
同時刻、別の場所にて
エリク太「ふぅ」
ゴーグルでボサボサになった髪を掻き上げるエリク太。
エリク太「しゃべる犬、かほりちゃん・・・か」
キーボードを打ちながら、ふっと口の端を上げた。
エリク太「探し概がありそうだ」


