足を踏み入れたら

るか

読切(脚本)

足を踏み入れたら

るか

今すぐ読む

足を踏み入れたら
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇異世界のオフィスフロア
津田「お前、ふざけるな!! いい加減な仕事しやがって!!」
柳原 麻里「・・・どうしたら いいですか?」
津田「もう何もするな!! まったく、泣けばすむと思ってやがる」
  やっと入社できたにもかかわらず
  毎日のように怒られてばかり・・・
柳原 麻里(もう、消えたい・・・)

〇武術の訓練場
柳原 麻里「・・・ううっ」
  何でもした
  
  出勤も2時間早くして掃除
  ゴミ捨て・・・
  コピー機の紙補充
  郵便物の仕分け・・・
  
  でも、私が動けば上司は怒った
柳原 麻里(私、本当にダメ人間だな・・・ この夕日みたら・・・ 私は・・・)
「わわわ!! どいて!! どいて!!」
柳原 麻里「え!?」
  空から降ってきたのは・・・
  人!?
こん「いてて・・・」
柳原 麻里「大丈夫?」
こん「ここ、どこ?」
  キョロキョロと周りを見渡している。
  
  浴衣?
  
  今日、祭りなんてあったっけ?
柳原 麻里「大丈夫? 痛くない?」
こん「平気だよ!! それより、早く行かないと!!」
柳原 麻里「どこに!?」
こん「こっち!!こっち!! 早く!!」
柳原 麻里「ええっ!?」
  手を掴まれ私たちは走り出した──

〇渋谷の雑踏
こん「ここ・・・どこ!? こんなに人が・・・」
柳原 麻里「渋谷よ。 学校も仕事も終わって、みんな帰るとこ。 ま、今からの人もいると思うけど」
こん「家に・・・」
こん「違う!! ここじゃない!! 早く行こう!!」
柳原 麻里「そんな事言われても・・・」
こん「早く!!」
  いったい、どこに行けばいいのか・・・
柳原 麻里「はぁ・・・」

〇SHIBUYA109
こん「違う・・・」
柳原 麻里「ねぇ、何探してるの?」
  すごい体力だ。
  私より走ってるのに
  全然息が上がっていない。
柳原 麻里「待って!!」
  追いかけるのに精一杯だ。

〇東急ハンズ渋谷店
こん「違う、違う!!」
柳原 麻里「誰か探してるの?」
こん「早くしないと・・・」
柳原 麻里「ねえ、ちゃんと言ってくれないと、 力になれないじゃない!!」
  しまった・・・
  子ども相手に 怒鳴るなんて。

〇道玄坂
こん「ううっ・・・」
柳原 麻里「怒鳴ってごめんね ねえ、キミ名前は?」
こん「こん・・・ 探してるんだ。家」
柳原 麻里「家を探してたの!?」
  彼はうなずいた。
柳原 麻里「この辺なの?」
  首を横に振った。
柳原 麻里「いいわ、この柳原麻里が責任持ってあなたを家まで送ってあげる。 行きましょう!!」
こん「無いよ!! 家なんて!!」
柳原 麻里「え!? 無い!? あっ!! 待ちなさいよ!! こんっ!!」
  家を探してるのに 家が無い・・・
  帰りたいけど 帰れないってこと??
  訳もわからず
  無我夢中で彼を追いかけた──

〇警察署の入口
園部「そう言われても、名前だけじゃどうしようもないんですよ・・・」
  助けを求めて警察署に駆け込んだ──
柳原 麻里「こんな小さな子が困ってるんですよ!? 何とかしてください!!」
園部「とりあえず、何かこちらにも捜索願届けや連絡があれば対応しますから、お引き取りください」
柳原 麻里「必ず連絡くれます?」
園部(はあ・・・ 早く帰らないかな、この人たち)
こん「お前なんかに わかるはず無いよ!!」
柳原 麻里「こん!!」

〇道玄坂
柳原 麻里「こん・・・ 家の近くにあるの 何か思い出せる?」
  陽が落ち夜になり
  こんは・・・
  うなだれていた・・・
こん「僕が悪い子だから・・・ だから・・・見つからないんだ」
柳原 麻里「そんな事ないよ・・・ こんは、いい子だよ!!」
こん「僕・・・もう消えたい・・・」
柳原 麻里「こん!! そんな事言わないで!!」
柳原 麻里「今も、こんがいなくなって心配している人たちがいるんだよ」
こん「いないよ!! ここがどこかもわからない。 誰も探さないよ、僕のことなんて」
  私はこんを抱きしめた──
柳原 麻里「私は心配する。 もし帰るとこが見つからないなら 一緒にいたいって考えてた・・・」
こん「本当?」
柳原 麻里「ほ・ん・と」
こん「ありがとう」
柳原 麻里「やっぱり、こんは 素直でいい子よ」
「いい子じゃないもん」
  こんは
  照れを隠すように走り出した──

〇ハチ公前
こん「あっ!! ワンコだ!!」
柳原 麻里「こーんーっ!!」
  興味ある方にすぐ走り出した
  こん──
  彼の方が犬そのものだ・・・
こん「痛い!! 痛っ!!」
  こんが強い閃光に飲み込まれた後
  地面に這いつくばり苦しがる・・・
こん「うああっ!!!!」
柳原 麻里「こん!!」
  苦しむこんを抱きかかえて
  走った──
  でも目の前に現れたのは・・・
名もない尊い者「ナゼ・・・タスケタ・・・ キョウ・・・シヌモノヲ・・・」
こん「僕の家だからだ!!」
名もない尊い者「オマエニ・・・イエハ・・・ナイ!!!! オマエニ・・・バツヲ・・・」
こん「うああああっ!!」
  こんは・・・
  こんは・・・
  地面に倒れたきり動かなかった・・・
柳原 麻里「嘘よ!! 起きて!! こん!!」
名もない尊い者「イカサレタモノヨ・・・ シヲ・・・ノゾメ・・・」
柳原 麻里「いいわ!! 私を殺して、こんを助けなさい!!」
名もない尊い者「・・・・・・ソレハ デキヌ!!」
柳原 麻里「私は諦めない!!!!」
名もない尊い者「ウウッ・・・コヤツ・・・」
  私は必死で
  こんを抱き抱えて走った──

〇病院の廊下
  冷たい彼は すぐに手術室へ向かった──
  まだ10分しかたっていないが
  何日にも感じた──
柳原 麻里「こん・・・」
こん「麻里」
柳原 麻里「こん!!」
こん「実は僕・・・ さっきのヤツの分身なんだ・・・」
柳原 麻里「ええ!?」
こん「今日、あの公園で死ぬつもりだったでしょ?」
柳原 麻里「いいえ・・・」
  とっさに嘘をついた
  
  何もかもが嫌になって
  最後にあの夕日を見に行こうと決めたのは
  
  まぎれもない事実だ
こん「そっか・・・ よかった!! 僕の家は、麻里 麻里の家は、僕だからね」
  こんは恥ずかしそうに笑った・・・
「またね」
柳原 麻里「こん!!」
  院内に私の声だけが響いた──

〇異世界のオフィスフロア
津田「いつになったら仕上がるんだ!!」
柳原 麻里「すみません・・・」
近藤 直也「どうぞ、こちらですよね!?」
津田「そうだ」
柳原 麻里「ありがとう 助かったわ」
近藤 直也「麻里先輩のためなら 全力尽くしますから」
  頼りになる後輩もでき
  
  怒られても平気になった
  彼といるとなぜか
  
  こんを思い出した

〇沖合

コメント

  • 何をしても上手くいかない、自分への試練だと思って頑張ってもどうしても乗り切れなくなる気持ちもわかります。
    でもそんな時にこんな不思議な出会いができて、頑張れる力が見つかるのはすごく幸運なことだなぁと。パートナー含めて。

  • 「もう消えたい」という言葉の重みを考えさせられる作品でした。エフェクトが良い感じで効いていて読むもよし,見るもよしで面白かったです!

  • 何事もあきらめない気持ちがエネルギーを生んで前に進んでいける、なんか再理解させて頂けたストーリーでした。楽しいお話しで一気に読ませて頂きました。

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ