死にたいアタシと死んじゃうアナタ(脚本)
〇渋谷の雑踏
彼氏に振られた・・・
長年一緒にいて家族みたいな人だった・・・
きっとこのまま結婚するんだろうなって思ってたけど彼はマンネリ化したこの関係に未来を見ることができなかったみたい・・・
〇ハチ公前
ヒナ「はぁ、、、」
コウ「人多いですね」
ヒナ「えっ」
コウ「あっすみません、つい口に出てしまいました」
ヒナ「新手のナンパですか?」
コウ「ナンパ、、、そうか、ナンパもしてみたいな」
ヒナ「は?」
コウ「僕近々死ぬんですけどね」
ヒナ「待って待って、なんの話してんの」
コウ「余命です、治らない病気で」
ヒナ「そういうことじゃなくて、なんで急に話しかけてきたの」
コウ「返事があったから、、、」
ヒナ「してないよ」
コウ「えって言ったじゃないですか」
ヒナ「言ったけど、、、」
コウ「独り言に返事が返ってきたらそれは会話の始まりです」
ヒナ「変なの。それより余命って、、、」
コウ「治らない病気で、多分一年以内に死にます」
ヒナ「一年、、、」
コウ「死ぬまでに色々したいなって思って」
ヒナ「それで渋谷に何しに来たの?」
コウ「そこの横断歩道渡りに」
ヒナ「それだけ?」
コウ「はい、テレビでよく見てたんで」
ヒナ「やっぱり変だね」
コウ「そうですか?ビートルズ好きな人はアビーロード渡りたいって思うじゃないですか」
ヒナ「あの四人で並んでるやつ?」
コウ「そうです。だからそんな感じです」
ヒナ「そっか、死ぬの怖くないの?」
コウ「どうなんですかね、最初は辛かったですよ。でも今はしょうがないなって、それに、、、」
ヒナ「それに?」
コウ「んー、例えばお姉さんは自分がいつ死ぬと思います?」
ヒナ「そんなのわかんないでしょ」
コウ「じゃあ今やりたいこととかってあります?」
ヒナ「急に言われても、、、」
コウ「余命を宣告されるとね、そういうのが明確になるんですよ、死ぬまでにやりたいことにちゃんと動ける」
ヒナ「・・・」
コウ「人っていつ死ぬかわかんないじゃないですか、みんな理解してるのに意外と目を背けてる」
ヒナ「そうだね」
コウ「明日やろうは馬鹿野郎ってよく言ったもんです」
ヒナ「前向きなんだ」
コウ「下向いてても寿命は伸びませんし」
ヒナ「アタシも見習わないと、、、」
コウ「なんか長々とすみません、誰かと待ち合わせですよね」
ヒナ「ハチ公の周りにいる人間がみんな誰かを待ってると思ったら大間違いだよ」
コウ「え?」
ヒナ「ちょっと色々あってね」
コウ「いろいろ、、、」
ヒナ「ここっていっぱい人がいるでしょ?」
コウ「はい」
ヒナ「人の数だけいろんな人生があって、みんな悩んだりもがいたりしながら生きてる」
ヒナ「嫌なことがあったらここに来て自分だけじゃないって思うようにしてるんだ」
コウ「お姉さんも変な人ですね」
ヒナ「そうかな?」
コウ「はいっ」
ヒナ「それよりもう横断歩道渡ったの?」
コウ「いえ今からです、一緒に渡ります?」
ヒナ「アタシにとっては日常茶飯事だけど、、、」
コウ「余命宣告された男と渡るのは非日常です」
ヒナ「確かに、、、」
コウ「行きましょう」
〇渋谷のスクランブル交差点
コウ「青になったら一番最初に一歩目踏み出します」
ヒナ「それは無理だね」
コウ「どうしてですか?」
ヒナ「みんなせっかちだから」
コウ「それでも僕は・・・」
〇渋谷のスクランブル交差点
〇渋谷のスクランブル交差点
コウ「あっ、青になっちゃった」
ヒナ「残念だったね」
コウ「しょうがない、渡りましょう」
ヒナ「うん」
〇渋谷のスクランブル交差点
コウ「なんか感動です。死ぬまでにしてみたいことが一つできました」
ヒナ「ふたつだよ」
コウ「え?」
ヒナ「さっきナンパもしてみたいって言ってたでしょ、知らない女の人に声かけて一緒に歩くってそれはもうナンパだよ」
コウ「ほんとだ、じゃあふたつ」
ヒナ「あといくつあるの?」
コウ「数え切れないです。だから毎日を大事にしないと」
ヒナ「そうだね」
コウ「タワレコってあっちですか?」
ヒナ「うん、そうだよ」
コウ「じゃあ僕タワレコにも行ってみたかったんであっちに」
ヒナ「うん」
コウ「なんか相手してもらってありがとうございました」
ヒナ「こちらこそだよ。気をつけてね」
コウ「じゃあ」
ヒナ「じゃあ」
〇渋谷の雑踏
人の数だけ人生がある。
この景色の中にもいろんな人生がある。
アタシの人生はこの先どうなるかわからないけど
少しだけ前を向いて生きようと思った。
自分が余命申告されたらどうしょうと思いました。やはり毎日の時間を大切に生きるでしょう。このストーリーで改めて、生命や時間の大切さを教わりました。ありがとう
実際のところ、余命宣告されていても、それは目安に過ぎなくて、それより早いか遅いかはあると思うんですよ。
その中で残された時間にやりたいことを考えている彼はすごいなぁと思いました。
彼女もこれからは大切な時間を生きると思います。
この物語を読んだことで私自身も今を大切に生きなければと改めて感じることができました。余命宣告されなくとも自分たちの余命は誰もわからない。最後の時に後悔しないよう、彼のように自分と向き合って、やりたいことをひとつづつやっていきたいと思います。