オレはまだ犬の名前しか知らない

レモングラス

オレはまだ犬の名前しか知らない(脚本)

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〇道玄坂
北村一「いやあ参った。 死ぬかと思った」

〇道玄坂
星野なつみ「大丈夫でしたか。 シナモンが急に走り出しちゃて」

〇道玄坂

〇道玄坂
星野なつみ「いつもはこんなことないんですけどね」
シナモン「ワン❣️」

〇道玄坂
北村一「しっかりつかまえててね。犬がどうも苦手で」

〇道玄坂
星野なつみ「けががなくて何よりでした。 では、失礼します」

〇SHIBUYA109
北村一「いやあ、朝のランニングは最高だ」

〇ハチ公前

〇ハチ公前
北村一「走って今日で一か月。 ハチ公だけが僕の頑張りを知っている」

〇ハチ公前

〇ハチ公前
北村一「疲れたあー」
星野なつみ「あれ、あの時の」
北村一「えっ?」
星野なつみ「私、一度あった人の顔は忘れないんです。 唯一の特技です」
北村一「ごめん。覚えてないわ」
星野なつみ「シナモンが走り出して、なんかすごい怒ってましたよね」
北村一「飼い犬を離した女性か。思いだした。 今日はやけにおめかししているね」
星野なつみ「仕事の帰りなので。 あんなこと初めてだったんです。 わざとではないので。それだけはわかってほしくて」
  僕は彼女にいろいろ聞きたいことがあった。でも結局何も言い出せなかった。
  何処に住んでるの?
  仕事は何してるの?
  シナモンは雄雌どっち?
  彼女の顔をじっと見つめているしかなかった。
星野なつみ「あの、なんでハチ公? 犬嫌いなのに」
北村一「いや、その。ハチ公にいろいろ聞いてもらってるんだ」
星野なつみ「私でよかったら聞きますよ。 明日もこの時間に会えますか?」
北村一「明日?ええ。大丈夫です」
星野なつみ「良かった。では、明日」
  といって彼女は去っていった。
  そして気づいた。連絡先も名前も知らないことに。

〇ハチ公前
  オレは、次の日もまたその次の日も20時に、ハチ公前にいた。
  毎日毎日。2時間は待った。
  でも彼女には、会えなかった。

〇ハチ公前
  今日は日曜日だ。仕事で疲れていたのか、昼過ぎまで寝ていた。それでも走ろうとハチ公前まで走ってきた。

〇渋谷の雑踏
  日曜日の渋谷は人が多い。
  ぶらぶら帰ろうと歩き始めた。
  あの彼女は幻だったんだろうか?

〇商店街
  商店街を歩いていると、和菓子屋をみつけた。お袋があんこ好きだったのを思いだし、立ち寄ってみることにした。

〇商店街
星野和子「いらっしゃいませ」
北村一「これください」
星野和子「ありがとうございます。 1000円ちょうどです」
星野和子「ありがとうございました」
  品物を受け取って帰ろうとした時、お店の片隅に飾ってある女性と犬の写真が眼に入ってきた。
北村一「あのー失礼ですが、そこに写っている写真の犬、シナモンですか」
シナモン「ワン!️」
星野和子「あら、あらシナモン、出てきちゃダメですよ。 お客様、なんでシナモンのことご存知ですか?」
  オレは事のいきさつを目の前の女性に話した。
星野和子「そうだったんですね。 実は娘は、帰ってきてないんですよ。携帯もつながらなくて」
北村一「どうして?」
「わかりません。旅に出るといったっきり、連絡も途絶えていて」
北村一「連絡もないんですね。 オレもずっと気になっていたんです」
星野和子「娘を信じて待つしかありません。 でも不思議!」
北村一「不思議?」
星野和子「ええ。娘にしかなつかないシナモンが、あなたをみてお店にてでくるなんて。 声に反応したのかしら?」
  オレの方こそ戸惑っていた。
  でも次の瞬間次のセリフを言っていた。
北村一「シナモン、オレが面倒みていいですか? もちろん娘さんが帰ってくるまで。 オレもこの近くに住んでるので」
星野和子「そうしてもらえると助かるけど。 お店があるから散歩にもいけなくて。 主人は膝が痛いとかで動けないし」
北村一「任せてください。 何かあればすぐに連絡しますから。 娘さん絶対帰ってきますよ」
シナモン「ワン」
星野和子「シナモンもいきたがっているようね。 もし無理ならすぐ返してもらっていいからね」
北村一「はい。オレも無理しませんから」
  話し合いはついた。
  連絡先を教えてもらい、シナモンを連れて帰ることになってしまった。
  犬は怖いが、シナモンは妙にオレの心にスッとはいってきた。
  なついてくれるのが嬉しかったのかもしれない。

〇高架下
北村一「早朝、シナモンと一緒に渋谷の街を走りまくった」

〇東急ハンズ渋谷店

〇宮益坂

〇ハチ公前
北村一「一週間がすぎた。彼女には会えなかった。このまま時だけが過ぎていくのだろうか」

〇一人部屋

〇ハチ公前
北村一「・・・・・・」
星野なつみ「また会えたのね」
  また衣装が違う。でも今度は彼女だと確信があった。なんで、ここは天国?
星野なつみ「良かったわ。会えて」
北村一「君は元気なのかい?」
星野なつみ「見ての通り元気よ」
北村一「その恰好は?」
星野なつみ「なんか変かしら?ここではみんなこんな格好よ」

〇一人部屋
北村一「夢だったのか・・・・・・ それにしても・・・・・・」

〇商店街
  仕事帰りに和菓子屋に立ち寄ってみたが、シャッターが下りていた。
  連絡も途絶えた。

〇一人部屋
北村一「シナモン。君は現実だよね」
シナモン「わん!!」
  シナモンがいるということが、唯一の救いだった。

〇高架下

〇高架下
  渋谷駅を出て帰ろうとしたとき、人身事故で電車が遅れていると館内放送があった・・・・・・
北村一「まさか・・・・・・・・・」
  オレは足がすくんで動けなくなった。
  その場で地面に座り込んでしまった。
警官A「大丈夫ですか?」
北村一「あ、ええ、大丈夫です」
警官A「携帯鳴ってますよ」
北村一「ああ、はい。ありがとうございます」
北村一「もしもし、はい。え? 本当ですか? はい。今すぐ行きます」
  オレはうれしさのあまり、立てなくなった。
警官A「君!大丈夫!どこかで休んでいくかい?」
北村一「大丈夫、だと思います」
  といいながら、立って歩きだした。
  よろよろと立ち上がり、スキップを踏んで歩き始めたが、きっとただの酔っ払いにしかみえなかったと思う・・・・・・

コメント

  • 不思議なお話でしたが、ラストはあの後彼女に会えたのかな?と気になりました。
    シナモンだけが実在していたら、ちょっと怖いなと思いました。
    天使の姿をした彼女も気になります。

  • 出会いの形もよかったですし、最終的には無事だったのかな?
    和菓子屋が閉まっていたのは我慢できずに探しに行ったのか…、色々憶測で考えられる点もよかったです!

  • ワンちゃんのおかげの、素敵な出会いですね。ハチ公前での会話は特に、本当にこういうことがあるかもと思わせるリアリティがありました。なつみさんがなかなか見つからずに心細くなっていく中、シナモンちゃんの存在が一さんの救いのように感じられました。みんなが奇跡的に出会わなければ、もしかしたらなつみさんは見つけてもらえなかったかもしれないですね。皆さんの心に少しずつ暖かい繫がりが感じられてよかったです。

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