関所(脚本)
〇青(ライト)
関
門に並ぶ人や馬、荷牛の列
道化「七口が一つ竹田の関」
戌丸「・・・え? 字、読めたのか」
道化「京に入るは銭がいるそうです」
戌丸「字は覚えてるのに名は忘れてんだな」
英林「都に入るに銭がいるとは」
英林「どうする?」
と、申楽の一座が、
関所を守る武士の前で踊り出す
武士達は手を叩いて囃したてる
一座は芸を頼みに、都に入ってゆく
道化「よい方法があります」
英林「まさか我らも踊れと申すのか?」
道化「それよりも楽な方法です」
武者「並べい並べい!」
武者「大君様の命じゃ! 都に入る者は並べい並べい!」
道化「並べい並べい♪並べい並べい♪」
武者「もの狂いめが。討ち取るか?」
武者「よせ。七道者を討てば刀が汚れるぞ」
道化「並べい♪並べい♪」
戌丸「並べい並べい♪」
英林「な、並べい・・・並べい・・・」
武者「・・・待て」
関の武士、英林の抱く
藁で包んだ長物に目を向ける
武者「それは何だ」
英林「さ、触るでない!」
藁の中から、太刀が現れる
武者「貴様!乞食ではないな!」
武者「何故、正体を隠す? さては西陣の郎党か!」
武者「曲者なり!侍所にひったてい!」
関の武士たち、三人を取り囲む
『ええい!どけどけい!』
武者「なんじゃ!あっちもこっちも!」
都の口より現れるは
派手な輿を守る武者の一団
斯波弟「大君が弟君、義視様の輿である」
畠山弟「関の武者共道を開けい!」
輿より、下界を垣間見る義視
義視「まかり通る」
武者「これはこれは西方大君様」
武者「それとも偽方大君様ですかな?」
義視「何が税か?ここは天下の往来ぞ」
武者「弟君様ほどのお方が 御政道に異を唱えられまするか?」
武者「まこと由々しきもの言い」
義視「御台所が金集めの何が政か? 富子如きにくれてやる金なぞないわ」
義視「往来の者どもよ、我が西幕府が許す! 自由に都に入るがよい!」
西方の武者、高札をへし折る
武者「貴人とてバサラ者の世迷言! 聞けば大君の名の下処罰するぞ!」
英林「おのれ武者ども・・・民を怯えさせおって」
英林「義は西方にあり。我らもいざ」
道化「はっ!いざいざ!いざいざあ~!」
「・・・・・・?」
道化、突如としてとんぼを切ってみせる
道化「ささ、戌殿も」
戌丸「できるか!」
道化「では私に続いて下され」
道化「西方、東方、そして往来の皆々様!」
道化「非人道化がお祭り踊りにございます!」
戌丸「そういうことなら俺だって・・・」
戌丸「田舎仕込みの田楽舞じゃい!」
戌丸「こしにましますをほどのおおきみ! ぬかるみかためてはなさかす~!」
殺気だっていた武者共は呆気に取られる
道化「太刀を・・・」
英林「うむ?」
太刀を手に舞い踊る道化
道化「こしにましますをほどのおおきみ。 はなをさかせてみをおとす~!」
道化「この身ひとつの河原者。 都への立ち入り、 お目こぼしを~!」
「お目こぼしを~」
武者「通れ。 芸人は優遇せよとの大君のお達しである」
道化「有難き幸せ」
戌丸「ありがたやありがたや~」
武者「ふん、ナマクラ以下の玩具であったか」
英林「・・・」
義視「戦意も削がれた。 はした金など富子に恵んでやるわ」
義視「いずれは我が手に収まる都ぞ」
「はっ!」
続


