灰色の教室に差す光

すたいりっしゅ

読切(脚本)

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〇教室
  第1章:灰色の教室 ― 色のない世界
  教室の隅。
  窓際から差し込む光が、埃を舞わせる。
  ユウは机に突っ伏し、ノートに
  小さな字をびっしりと書き込んでいた。
  周囲の笑い声や雑談は遠く、
  彼の世界はモノクロ。
ユウ(俺なんて、誰の目にも映らないんだ・・・ このノートだけが俺の居場所)
  突然、机に影が落ちる。
  派手なネイル、明るい髪色。
  天野ミサキが覗き込む。
ミサキ「ねえ、アンタさ」
ミサキ「ノートめっちゃ綺麗にまとめてるじゃん! 貸してくんない?」
ユウ「えっ・・・ 僕に?」
ミサキ「そうそう、アンタ。 字も綺麗だし、意外とマメなんだね」
ミサキ「私、授業中寝ちゃうから助かるわ~」
ユウ「いや・・・  そんな、大したことじゃ・・・」
ミサキ「大したことあるって! こういうのって性格出るんだよ」
ミサキ「アンタ、几帳面でしょ?」
ユウ「・・・・・・まあ、そうかも」
ミサキ「いいじゃん! 私、そういう人好きだよ。 真面目って安心するし」
ユウ「好きって・・・ そんな軽く言うなよ」
ミサキ「えー、軽くないよ? 私、結構本気で言ってるんだけど?」
ユウ(俺に・・・   話しかけてくれる人がいるなんて)
  その瞬間、ユウの世界に、
          一筋の光が差し込んだ。

〇学校の屋上
  第2章:屋上の風 ― 壁を壊す声
  風が抜け、空が近い。
  ミサキはユウを半ば強引に連れてきた。
ミサキ「屋上って気持ちよくない? 教室より静かだし」
ユウ「うん・・・ 風が気持ちいい」
ミサキ「アンタ、もっと喋りなよ。 黙ってると損してるって」
ユウ「俺、話すの苦手で・・・」
ミサキ「じゃあ練習! 私と喋ればいいじゃん」
ユウ「練習って・・・ 俺、そんなに変かな」
ミサキ「変じゃないけど、もったいない」
ミサキ「アンタ、意外とツッコミ上手だし」
ユウ「ツッコミ・・・ 俺が?」
ミサキ「そうそう!」
ミサキ「私が変なこと言ったら、 ちゃんと拾ってくれるじゃん」
ユウ「・・・じゃあ、今なんか言ってみろよ」
ミサキ「えっと・・・ この風、ユウの髪型、 ラーメンみたいに見える!」
ユウ「ラーメン!? どんな例えだよ!」
ミサキ「ほらね! ちゃんとツッコんでくれるじゃん!」
  (ポッキーを差し出す)
ミサキ「ほら、食べなよ。 シェアって大事でしょ?」
ユウ「え、いいの?」
ミサキ「いいのいいの。 友達ってそういうもんでしょ?」
ユウ(こんなふうに誰かと笑うの・・・ いつ以来だろう)
  ギャルは壁を壊す。
  モブの心に、初めて爽やかな風が吹いた。

〇住宅地の坂道
  第3章:放課後の帰り道 ―
             変わりたい気持ち
  橙に染まる街。並んで歩く二人。
  ミサキがスマホを開く
ミサキ「アンタ、髪伸びすぎ」
ミサキ「ちょっと切ったら絶対イケるって!」
ユウ「俺が・・・ 変わってもいいのかな」
ミサキ「いいに決まってるじゃん!」
ミサキ「素材は悪くないんだからさ」
ユウ「素材って・・・ 俺、野菜か何か?」
ミサキ「そうそう!」
ミサキ「地味な野菜も、 調理次第で最高の味になるんだよ」
ユウ「俺が・・・ 美味しくなるってこと?」
ミサキ「そう! アンタは隠し味タイプ」
ミサキ「目立たないけど、いると全体が良くなる。だからもっと自信持ちなって!」
ユウ「隠し味・・・ 俺がそんな存在に?」
ミサキ「そう。見た目ちょい整えたら、 内面の良さ、もっと伝わるよ」
ユウ(彼女の言葉は、俺を前に進ませる光だ)
  誰かに背中を押されるだけで、
  世界は変わる

〇美容院
  第4章:美容院の鏡 ― 新しい自分
  緊張で手を握りしめるユウ。
  鏡の前、ミサキが近くに座る。
「どうしますか?  前髪は短めに、スッキリと?」
ユウ「えっと・・・ 似合うようにお願いします」
ミサキ「緊張しすぎ! 大丈夫、絶対カッコよくなるから」
  カットが進み、ドライヤーの音、静かな間
ユウ(もし似合わなかったら・・・ もし笑われたら・・・)
ミサキ「だいじょぶ、私が笑わせる側だから」
  (カット後、鏡を見て驚くユウ)
ユウ「これ・・・ 俺?」
ミサキ「ほらね! やっぱイケてんじゃん!」
ユウ「いや・・・ でも、なんか恥ずかしい」
ミサキ「照れるなって!  その顔、もっと見せなよ」
ユウ「俺・・・ 変われるんだな」
  鏡の中の自分は、もうモブじゃなかった。

〇教室
  第5章:教室のざわめき ― 主人公の誕生
  ユウが教室に入る。
  ざわめきが波紋のように広がる。
「えっ・・・ 誰!? 佐藤・・・ だよな?」
「雰囲気全然違う! めっちゃ垢抜けてる!」
ミサキ「ほらね、言った通りでしょ?」
ユウ「ありがとう・・・ ミサキのおかげだ」
ミサキ「お礼はデートで返してもらおっかな?」
ユウ「で、デート!?」
ミサキ「冗談冗談。 でも・・・ ちょっと本気」
  (休み時間、数人が話しかけてくる)
「ユウ、その髪型どこの美容院?」
ユウ「えっと・・・ ミサキのおすすめで・・・」
「ミサキと仲良いの、ガチなんだ・・・」
ユウ(俺は・・・ もう隅の空気じゃない)
  ユウはもう、教室の隅にいない。
  彼の世界に、色が満ち始めた。

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