道玄坂 昏闇市(くらやみいち)

西瓜頭

エピソード1(脚本)

道玄坂 昏闇市(くらやみいち)

西瓜頭

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道玄坂 昏闇市(くらやみいち)
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〇道玄坂
咲田 千恵(サキタ チエ)「ホントにあった・・・」
  曰く、道玄坂には闇市がある
  戦後に生まれたそれは
  都市化の光に追いやられ
  しかして消えず
  昼夜の狭間、逢魔が時
  その入口を現す
  人呼んで
  「道玄坂 昏闇市(くらやみいち)」
咲田 千恵(サキタ チエ)「──」

〇皇后の御殿
咲田 千恵(サキタ チエ)「ここが──」
咲田 千恵(サキタ チエ)「あの、誰か」
咲田 千恵(サキタ チエ)「ひっ」
???「可愛いお客様ね」
店主「ようこそ、昏闇市へ」
咲田 千恵(サキタ チエ)(女の人?)
咲田 千恵(サキタ チエ)「あの、私」
店主「どうしても欲しい物があって 来たのよね?」
咲田 千恵(サキタ チエ)「何故それを?」
店主「強く欲する者だけを誘う」
店主「ここはそういう場所よ」
店主「非正規の危ない薬 ヤバい武器に新鮮な臓器」
店主「何でもお取り寄せできちゃうわよん♪」
店主「貴方は何が欲しいのかしら?」
咲田 千恵(サキタ チエ)「わた、私は──」
咲田 千恵(サキタ チエ)「・・・」
咲田 千恵(サキタ チエ)「私に、才能をください」
店主「──」
咲田 千恵(サキタ チエ)「みんなに認められる絵を描く才能を」
咲田 千恵(サキタ チエ)「次のコンクールで最優秀賞がとれる絵画の才能を」
店主「お嬢ちゃん 面白いわ〜」
店主「才能って概念じゃない? 売り買いできると思ったの?」
咲田 千恵(サキタ チエ)「ない、ですよね やっぱり」
店主「あるんだな、これが」
咲田 千恵(サキタ チエ)「バカにしてます?」
店主「やぁだ、怒った? からかっただけよ~」
店主「おふざけはおしまい」
店主「これは取引よ 代償が払えるかしら?」
咲田 千恵(サキタ チエ)「お金なら、いくらか」
店主「ここの原則は物々交換 貴方は才能に見合う何かを差し出す事になる」
店主「それでもいいの?」
咲田 千恵(サキタ チエ)「──」
咲田 千恵(サキタ チエ)「構いません」
咲田 千恵(サキタ チエ)「絵を描くより大事なことは 何もないから」
店主「・・・」
店主「商談成立ね 持っていきなさい」
咲田 千恵(サキタ チエ)「ひっ」
店主「惨死を遂げた画家の腕よ 幽界に溶けて彼の魂に交われ」

〇美術室
  1ヶ月後
美術部顧問「コンクールで咲田の絵が最優秀賞に選ばれた」
美術部顧問「みんな拍手!」
女生徒A「咲田さん凄い!」
女生徒B「凄い絵ね 鬼気迫るっていうかさ」
女生徒B「部長もそう思うでしょ?」
日野 真琴(ヒノ マコト)「え、あたし?」
日野 真琴(ヒノ マコト)「チエ、おめでとう」
咲田 千恵(サキタ チエ)「・・・」
咲田 千恵(サキタ チエ)「ありがと、マコ」
日野 真琴(ヒノ マコト)「私も嬉しい。でも」
女生徒A「どうやって描いたの?教えて!」
美術部顧問「次も期待してるぞ!」
日野 真琴(ヒノ マコト)「──」

〇部屋のベッド
咲田 千恵(サキタ チエ)「──」
咲田 千恵(サキタ チエ)「凄い。ホントに最優秀賞がとれちゃった」
咲田 千恵(サキタ チエ)「マコも嬉しいって言ってくれた」

〇教室
  マコと会ったのは小学校の頃
  彼女は勉強もスポーツもできる人気者で
  私は日陰者

〇教室の外
  でも、授業で絵を描いてた時
真琴・幼少期「・・・わぁ」
真琴・幼少期「その絵、すっごく綺麗だね」
千恵・幼少期「──へ」
真琴・幼少期「私、千恵ちゃんの絵、好きだな」
千恵・幼少期「・・・」
真琴・幼少期「ね、一緒に描いてもいい?」
千恵・幼少期「──」
千恵・幼少期「うん!」

〇部屋のベッド
  私達は仲良くなって
  授業以外でも一緒に絵を描いた
  中学生になって、美術部に入ろうって誘ってくれた時は嬉しかったな
  でも
咲田 千恵(サキタ チエ)「これで、追いつけるかな」

〇美術室
  1ヶ月後
美術部顧問「今度は日野が最優秀賞だ」
美術部顧問「流石部長だな!」
咲田 千恵(サキタ チエ)「──」
日野 真琴(ヒノ マコト)「あっ、チエ」
女生徒A「咲田さんの絵、今回も凄かったけど」
女生徒B「うん、なんか怖かったね コンクールのテーマに合ってないし」
日野 真琴(ヒノ マコト)「──」

〇屋上の入口

〇学校の屋上
  駄目だ
  駄目だ駄目だ駄目だ
  狡い事までして、この有様
  どうすれば
咲田 千恵(サキタ チエ)「どうすれば追いつけるの?」
日野 真琴(ヒノ マコト)「チエ?」
咲田 千恵(サキタ チエ)「マコ」
咲田 千恵(サキタ チエ)「・・・」
咲田 千恵(サキタ チエ)「笑いに来たの?」
日野 真琴(ヒノ マコト)「チエ、最近おかしいよ」
日野 真琴(ヒノ マコト)「絵だって、まるでチエのじゃないみたい」
咲田 千恵(サキタ チエ)「・・・」
咲田 千恵(サキタ チエ)「マコはいいよね」
日野 真琴(ヒノ マコト)「え?」
咲田 千恵(サキタ チエ)「友達も多いし、何でもできる 絵だってすぐ私より上手くなった」
日野 真琴(ヒノ マコト)「チエ・・・」
咲田 千恵(サキタ チエ)「私にはこれしかないの」
咲田 千恵(サキタ チエ)「絵まで、私からとらないでよ!」
日野 真琴(ヒノ マコト)「──」
日野 真琴(ヒノ マコト)「絵しかないって」
日野 真琴(ヒノ マコト)「なにそれ」
日野 真琴(ヒノ マコト)「バカ!知らない!」
咲田 千恵(サキタ チエ)「・・・」

〇美術室
咲田 千恵(サキタ チエ)「・・・」
咲田 千恵(サキタ チエ)「描かなきゃ」

〇教室の外
真琴・幼少期「私、千恵ちゃんの絵、好きだな」

〇美術室
咲田 千恵(サキタ チエ)「──」
咲田 千恵(サキタ チエ)「・・・私の絵?」
咲田 千恵(サキタ チエ)「私の絵って── 何だっけ?」
  思い出せない
  描けない
咲田 千恵(サキタ チエ)「えっ──何? 手が」
咲田 千恵(サキタ チエ)「ひっ──いやっ!」
咲田 千恵(サキタ チエ)「手が勝手に・・・!?」

  いやっ!何、何なのこれ
  こんなもの見たくない、描きたくない!
「嫌っ・・・」

〇手
「嫌ァァァアア!!」

〇皇后の御殿
咲田 千恵(サキタ チエ)「ひっ、ヒィッ」
店主「また来たのね〜 どしたの?息を切らして」
咲田 千恵(サキタ チエ)「戻して、戻して下さい!」
咲田 千恵(サキタ チエ)「才能は返します、だから」
咲田 千恵(サキタ チエ)「私の絵を、戻して!」
店主「あら〜気づいた?」
店主「お代は貴方本来の「絵」」
咲田 千恵(サキタ チエ)「お願い、戻して」
店主「ふふふ」
店主「だぁめ!!!」
店主「私はね? 貴方みたく若くて可愛い女の子が酷い目にあってるのがね?」
店主「大・好・物!なのよ〜!」
咲田 千恵(サキタ チエ)「──」
店主「ま、流石に可哀想だから 選ばせてあげる」
店主「戻す代償は」
店主「「利き腕」と「右目」」
咲田 千恵(サキタ チエ)「!」
店主「正当な代償よ 貴方だって楽しんだでしょ?」
咲田 千恵(サキタ チエ)「うぅ」
店主「さぁ選んで〜 偽物の才能と生きていくのか」
店主「目と腕を犠牲に自分の「絵」を戻すのか!」
咲田 千恵(サキタ チエ)「うぅう・・・!」
???「戻すに決まってるでしょ!」
咲田 千恵(サキタ チエ)「!」
日野 真琴(ヒノ マコト)「私の親友をいじめるのも 大概にしてよね!オバさん!」
咲田 千恵(サキタ チエ)「マコ、どうして?」
店主「オ、オバ・・・」
店主「マコちゃん、て言ったかしら」
店主「残酷なのね? 親友に片目片腕になれって言うの?」
日野 真琴(ヒノ マコト)「そんな事させないよ!」
咲田 千恵(サキタ チエ)「え?」
店主「へぇ?」
日野 真琴(ヒノ マコト)「代わりがあればいいんでしょ?」
日野 真琴(ヒノ マコト)「私の才能をいくらでも持ってってよ」
日野 真琴(ヒノ マコト)「それでチエの「絵」を返して!」
店主「あはっ 面白いわ〜」
日野 真琴(ヒノ マコト)「──」
日野 真琴(ヒノ マコト)「早くして」
店主「そう、じゃあ早速──」
咲田 千恵(サキタ チエ)「やめてよ!」
日野 真琴(ヒノ マコト)「──チエ?」
咲田 千恵(サキタ チエ)「そんな事されたら 私は一生マコに追いつけない」
咲田 千恵(サキタ チエ)「私はマコと対等でいたいの」
咲田 千恵(サキタ チエ)「友達で、いたいの・・・」
日野 真琴(ヒノ マコト)「──」
咲田 千恵(サキタ チエ)「片目でも、利き腕が無くても、絵は描ける」
店主「いいのね?」
日野 真琴(ヒノ マコト)「チエ!駄目だよ!」
咲田 千恵(サキタ チエ)「お願いします 私の「絵」を返してください」
店主「商談、成立ね」

〇SHIBUYA SKY
  数日後
日野 真琴(ヒノ マコト)「・・・」
???「一緒に描いてもいい?」
日野 真琴(ヒノ マコト)「チエ!」

〇空
  あのオバさん、何だったんだろうね?
  ──悪い人ではないんじゃないかな
  悪いよ!極悪だよ!チエ、目と腕を取られるとこだったんだよ!?
  それは──でも
  最後は許してくれたじゃない
  「お代は出世払い。2人で名画を描きなさい」──なんてね
  あはは

〇SHIBUYA SKY
日野 真琴(ヒノ マコト)「笑ってる場合じゃない!」
日野 真琴(ヒノ マコト)「何百、何千枚も描かされるかもだよ!?」
咲田 千恵(サキタ チエ)「うん、そうだね」
咲田 千恵(サキタ チエ)「頑張る!」
日野 真琴(ヒノ マコト)「──」

〇皇后の御殿
店主「あーあ」
店主「流石におまけしすぎたかしらん?」
店主「ま、しょうがないか 私ってば」
店主「可愛い女の子が仲良ししてるのも 大・好・物!なのよね〜」
店主「さて今日は・・・」
店主「どんなお客様がお越しかしらん?」

コメント

  • 店主さん好きです(告白)
    ホラーへの対抗手段が百合友情なの構成として美しいなと感じました。
    ヒロインにとって、彼女との関係性は「太陽」と「日陰者」でも、マコちゃんにとってはヒロインの存在が「太陽」なのではなかろうか。
    晴れた青空の下で描かれるふたりの絵はどんな作品になるのか。
    明るい気持ちになるラストでした。

  • ホラーテイストだったからエグいラストなのかと思いきや、キレイな終わり方。お見事。シリーズ化できそうなのも良いですね。
    微妙に百合っぽい気がしたのは気のせいでしょうか?(笑)

  • 何でも買えると言われて「才能」を望んだのと、対価に「自分の絵」を取られた所がオリジナリティがあってよかったです!
    流れ的にえげつない最後になるかと思いましたが、ホッとできる幕引きで安心しました 笑

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