魂のストレート

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魂のストレート(脚本)

魂のストレート

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魂のストレート
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〇野外球場
審判「ボール、フォア! 一塁へ!」
玉山「・・・クソッ!」
実況アナ「ここでフォアボール!」
実況アナ「夏の甲子園決勝、 山田学園が浪速光陰を3対2と リードして9回裏、」
実況アナ「浪速光陰、ツーアウトから 同点のランナーが出ました!」
実況アナ「山田学園、キャッチャーの下川君が マウンドの玉山君に駆け寄ります」
下川「落ち着け、玉山 次のバッターを確実に押さえよう」
玉山「ああ・・・わかってるよ」
下川「あとひとり抑えれば優勝なんだ 慎重にいこう、な?」
玉山「・・・そうだな」
実況アナ「さぁ、試合再開! 打席には3番長谷川!」
玉山「・・・ここで決める!」
玉山「うおおおおおっ──!!」
下川「玉山!」
実況アナ「あーっと、打ち上げたぁーっ!」
玉山「オーライ!」
実況アナ「玉山君が落下地点に入る!」
玉山「オー・・・」

〇空

〇野外球場
玉山「ライ?」
実況アナ「あーっ!  なんと玉山君の頭にボールが直撃ー!!」
下川「た、玉山! なにやってんだ!」
実況アナ「転々と転がっていくボールを 下川君がキャッチ!」
実況アナ「しかしこの間にランナーは三塁、 打ったバッターも二塁へ到達!」
実況アナ「浪速光陰、万事休すの状態から 一打逆転サヨナラの大チャンス!」
実況アナ「山田学園にとっては一転して大ピンチー!」
下川「おい、玉山! なにやっ・・・」
下川「玉山──?」

〇野外球場

〇野外球場
下川「お、おい、玉山──」
下川「玉山あああああっ!!」
実況アナ「おおっとー! 玉山君・・・」
実況アナ「グラウンドで大の字に転がったまま ピクリともしませーん!!」
下川「玉山! 返事しろ、玉山!」
実況アナ「玉山君、今タンカで運ばれていきます──」
解説者「よほど打ちどころが 悪かったんですかねぇ・・・」
実況アナ「夏の甲子園決勝、9回裏! 球場は異様な雰囲気になって参りました!」
下川「玉山・・・」
解説者「いやー、しかしこれ、 どうするんですかね・・・」
解説者「山田学園は地方大会からここまで ずっと玉山君がひとりで 投げ抜いてきましたからねぇ」
実況アナ「確かにそうですね」
実況アナ「山田学園、優勝目前でまさかの絶体絶命!」
下川「・・・監督」
下川「オレが投げます!」

〇学校沿いの道
下川「玉山・・・オレさ、 キャッチャーに転向するわ」
玉山「えっ! なんで・・・」
下川「このままピッチャーやってても お前には勝てない」
下川「それに・・・」
下川「甲子園での優勝の瞬間・・・ グラウンドでお前と一緒に迎えたいじゃん」
玉山「・・・」
玉山「そっか──」

〇野外球場
実況アナ「さぁ、山田学園のマウンドには 先程までキャッチャーを務めていた 下川君が上がりました!」
解説者「下川君、最近の登板こそありませんが 2年生の夏までは ピッチャーだったようですからねぇ」
実況アナ「代わりのキャッチャーには 2年生の三木君が入ります」
三木「下川先輩、投球練習しときましょう!」
下川「わかった」
下川「・・・玉山、ここはオレがなんとか凌ぐ」
下川「だから・・・目を覚ましてくれ」
下川「生きていてくれ──!」
「・・・生きてるよ」
下川「え!?」
「大丈夫、ちょっと 気を失ってたみたいで・・・」
「それより、なんでオレのカラダ、 なにかに挟まってるんだ?」
下川「え? え?」
「おい、なんだよ、下川か オレを軽々と片手で持ち上げやがって」
「まるでボールみたいによ──」
下川「その声は・・・玉山──」
「なに当たり前のこと言ってんだ・・・ さぁ、早く試合の続きやろうぜ」
下川「い、いや、だからさ・・・」
下川「わかった──」

〇野外球場
「えっ!? ええっ!?」
玉山(魂)「ぎゃあああああっ──!!」

〇野外球場
三木「先輩、もう一球!」

〇野外球場
玉山(魂)「お、おかあさあああああん──!!」

〇野外球場
下川「玉山──」
玉山(魂)「・・・あのさ、オレ、もしかして」
玉山(魂)「ボールになってるうううううっ!?」
下川「集合だ! 全員集合!」

〇野外球場
実況アナ「山田学園、投球練習の途中で ナインがマウンドに集まっています」
梶「・・・ありえん」
波多野「・・・そんなバカな」
三木「つまり、ボールが頭にぶつかって 中身が入れ替わったってことですか!?」
下川「そういうこと・・・なんだろうな」
玉山(魂)「・・・オレが一番信じられねぇよ」
梶「どうやったら元に戻るんだ?」
波多野「マンガなら、もう一回ぶつかれば 元に戻るとかあるけど・・・」
三木「ひ、ひとまずその可能性に賭けるしか!」
下川「そうだな、つまり──」
下川「試合に勝ってこのボールを ウイニングボールとして持ち帰って・・・」
下川「思いっきり玉山の頭に ぶつけてみるしかない──!!」
玉山(魂)「なんてこった・・・」
梶「ってことはよ、ファールも 打たれちゃダメなんじゃ・・・」
波多野「あ、そっか! 審判にボールを替えられちゃうからな!」
下川「ああ・・・それ以前に」
下川「万が一サヨナラ負けでもしたら、 ボール自体持ち帰れない──」
三木「・・・なんて過酷なミッションなんだ」
下川「だけど・・・やるしかない──!!」
玉山(魂)「・・・あ、あのさ」
玉山(魂)「さっきさ、投球練習で投げられた時 めちゃめちゃ怖かったんだよ」
玉山(魂)「もしバットで打ち返されでもしたら・・・」
玉山(魂)「オレ・・・その時点で無事かな?」
下川「・・・」
下川「さぁ、しまっていこう──!!」
玉山(魂)「おい! 答えろって!」

〇野外球場
実況アナ「さぁ、試合再開!」
下川「玉山、あとワンアウトで優勝だ」
玉山(魂)「ああ」
下川「必ず優勝して、 お前を元のカラダに戻してやる」
玉山(魂)「・・・すまん」
下川「いくぞ!」
玉山(魂)「おうよ!」
実況アナ「浪速光陰、迎えるバッターは四番、 大森ブライアン!」
解説者「大森君、今日は玉山君に対して ノーヒットでしたからねぇ」
解説者「その鬱憤もあって ここは気合入ってると思いますよ!」
実況アナ「父は元プロ野球選手、 母はジャマイカの陸上100m金メダリスト」
実況アナ「今年のドラフト1位指名 間違いなしと言われるスラッガーです!」
大森「・・・必ず打つ!」
「・・・」
「そ、そうだった・・・」
下川「よりにもよって大森・・・」
玉山(魂)「圧倒的主人公感・・・」
下川「ええい、そんなこと考えても仕方ない!」
下川「全力で投げ込むのみ!」
実況アナ「下川君、振りかぶって ・・・投げたぁーっ!!」

〇野外球場
玉山(魂)「おんぎゃあああああーっ!!」

〇野外球場
大森「え、ええっ!?」

〇野外球場
審判「ストラーイク!」
三木「先輩、ナイスボール!」
実況アナ「これは驚きました! 下川君、145キロのストレート!」
解説者「大森君も面食らったんじゃないですかねー」
実況アナ「とても本職が キャッチャーとは思えません!」
大森(うなるようなストレート・・・)
大森(いや、実際に ボールがうなってなかったか──?)

〇野外球場
下川「ふぅ・・・」
玉山(魂)「もーいや! もーいやだ!」
玉山(魂)「ションベンちびるってぇっ!!」
下川「ボールでもちびるのかよ・・・」
玉山(魂)「うるせぇ! お前も145キロでぶん投げられてみろ!」
下川「そんなこと言われても・・・」
実況アナ「下川君、ボールになにか 語りかけてますねぇ」
解説者「気持ちが入ってますね」
下川「・・・じゃあ次はもう少し遅い球投げるよ」
下川「カーブだ!」
玉山(魂)「え、いや、ちょ、ちょっ──」

〇野外球場
玉山(魂)「回ってる! めっちゃ回ってりゅううううううっ!!」

〇野外球場
大森「・・・くっ!」

〇野外球場
審判「ストラーイク!」
三木「追い込みましたよ、先輩!」
実況アナ「2球目はカーブ! 大森君、タイミングをはずされ空振りー!」
解説者「いやー、いいボール投げますね」
実況アナ「かなり落差もありましたねー」
大森(うーん・・・)
大森(やっぱなんか声が聞こえるんだよな)

〇野外球場
下川「よし、あとワンストライク!」
玉山(魂)「マジでカラダが持たないってぇっ!」
玉山(魂)「あんなに回して落とされたら ・・・吐くぞ!」
下川「ボールが吐くってどういう・・・」
玉山(魂)「いいか、次の一球で決めろ! もう限界だ!」
下川「お、おう・・・」
実況アナ「下川君、またボールになにか 語りかけてますねぇ」
解説者「しっかり魂がこもってます」
下川「3球勝負か・・・」
下川「ならば最後は、渾身のストレートだ!」
玉山(魂)「終わって! もう終わって──」

〇野外球場
玉山(魂)「ぐぬうううううっ!!」

〇野外球場
大森「・・・ふんっ!!」

〇野外球場
玉山(魂)「え、え、え」
玉山(魂)「当たるっ! 当たるっ! だあああああっっっ──!!」

〇黒

〇野外球場
実況アナ「打ったぁーっ!!」

〇野外球場
下川「ぬうっ──!!」

〇黒

〇野外球場
実況アナ「・・・」
実況アナ「強烈なピッチャーライナアァァァァッ!!」
実況アナ「スリーアウト、ゲームセット! 山田学園・・・優勝ーっ!!」
下川「やっ・・・た」
下川「やったあああああっ──!!」
下川「玉山・・・」
下川「優勝の瞬間、 グラウンドで一緒に迎えられたな──」
下川「妙なカタチではあるけど」
下川「玉山・・・最高だな、この景色──」
下川「・・・玉山?」
三木「やりましたね、先輩!」
梶「おい、オレたちが優勝だってよ・・・」
波多野「夢見てるみたいだ・・・」
下川「・・・おい、玉山が」
下川「黙ったままなんだ──」
梶「・・・まぁそりゃ、 あんな強烈なライナー食らったからな」
波多野「また気絶してるんじゃないの?」
下川「いや・・・さっきまでは 確かにほんのりと温もりがあった」
下川「それが今は・・・ ひんやり冷たいんだ──」
梶「まさか、玉山・・・」
波多野「お、おい! 返事をしろ、玉山!」
三木「玉山先輩!」
下川「玉山・・・」
下川「せっかく優勝したのに・・・ そりゃないよ・・・」
下川「玉山! おい、玉山──!!」

〇黒
「・・・おーい」

〇野外球場
下川「・・・玉山?」
下川「まさ・・・か──?」

〇野外球場
玉山(魂)「めちゃめちゃ痛かったんですけど──」
大森「バ、バットが・・・バットがしゃべった!」

〇野外球場
下川「・・・」
下川「どういう体質──!?」

〇黒
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