望愛の方舟(ノアのはこぶね)

吉田芽生(よしだめい)

読切(脚本)

望愛の方舟(ノアのはこぶね)

吉田芽生(よしだめい)

今すぐ読む

望愛の方舟(ノアのはこぶね)
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇美容院
  美容師の望愛(ノア)と店長の陽(ハル)は、渋谷の美容室で働いている。
  陽は、明るく前向きな望愛が好きだった。
陽(ハル)(望愛、オレと付き合わないか?)
望愛(ノア)(ェ私とですか? ビックリしたぁ!!️ いいんですか、こんな私で 技術も中途半端だし 可愛くもないし・・・)
陽(ハル)(そんなに自分を見下げるな。 望愛にはオレにないものがある。 ひ弱に見えて、打たれて強い)
望愛(ノア)(そんな風に見えるんですか? でも、丸ごとバカです私!️ (なにいってんだろう私))
陽(ハル)(ハッハッ── 急かせないから、 望愛から切り出すまで 何も聴かない。 それとも、好きな人でもいるのか?)
望愛(ノア)(ち、違いますようぉ、陽さん、こんな 田舎者でオッチョコチョイに、いると思いますぅ?)
  決して陽が嫌いではなかった。
  むしろ仕事面で目標にしていた。
  スタッフに信頼されている
  ことも知っている。
  望愛には意中の人がいた。
  その人は、スクランブル交差点ですれ違う
  ビジネススタイルの似合う人。

〇渋谷駅前
  意中の人は、年上の同性。
  人混みの中から
  さっそうと現れる。
  望愛はチラッと見て、ドキッとして胸が弾んだ。
  たった数秒間の出来事に、
  アクティブな一日を、望愛はもらっていた。
  すれ違うだけの関係、こんな状態が
  半年も続いていた。

〇カウンター席
  休日、望愛は駅のカフェで
  ランチをしていた。
  すると視線を感じ、振り向くと
  その人が望愛を見ていた。
  突然のことで動揺し、戸惑いながらも
  会釈をしてしまった。
  (チャンスだ!!️)
  望愛は勇気を出して
  その人の席に向かった。
望愛(ノア)(あのぅ、初めまして望愛といいます)
紬(つむぎ)(よく会いますね、スクランブル交差点で、 私は紬(ツムギ)といいます、ヨロシク)
  その人は紬といい、望愛に気づいていた。
  紬も、すれ違う度に望愛の視線を感じて
  いたのだ。
望愛(ノア)(私は美容師です。 スクランブル交差点で紬さんを見かけて それでいいなあと、ずっと思っていて、 話してみたいと思って・・・)
望愛(ノア)(こんな奇跡が起こるんですね!️ 驚いています。ちょっと、上がっているんで あのっ、・・失礼なこといってすいません)
紬(つむぎ)(いいのよ、気を使わないで。 嬉しいわ、私のことをそんなに思って頂いて どうですか?一緒にお食事しませんか?)
  紬の好意を受け入れて、望愛は絶えずウキウキしていた。友達とも異性とも違う
  感覚を知ったのだった。
  痛みのない会話。身勝手にプライベートにも触れず、大人の女性だった。想像していた通りの人だった。望愛は唐突に切り出した。
望愛(ノア)(恐縮ですが・・・ これからも、 会っていただけますか?)
紬(つむぎ)(もちろんいいわよ。 望愛さん、あなたはピュアで 真っ直ぐな人ね。 一緒にいると心が癒されるわ)
  二人は、連絡先を教え合い
  用事のない、第三日曜日に
  ランチをしましょう!と、約束をした。
  それから半年以上が経った。
  紬は友達以上の関係をためらう態度で、望愛に接っした。でも望愛は、もっと深い関係を望んでいた。
  実は紬も悩んでいた。会う度に、エスカレートしていく望愛の態度に、困惑していた。
  ピュアで真っ直ぐな望愛を、傷つけたくはない。そしてある施策を考えていた。

〇テーブル席
  自分は変なのだろうか!紬さんは、そんな私を感じているのだろうかと望愛は思った。
  自分を否定したかったが
  理屈では割り切れない感情に
  動かされていた。
  今の想いを伝えるべきか?
  暗中模索の状態だった。
  その日は一月の、凍りづくような第三日曜日
  約束のカフェで、ランチをすることになっていた。望愛は二階の窓際に席を取った。
  予定の時間よりも早く着いた望愛は、
  本心を伝える覚悟で来ていた。
  やがて信号が青になり、紬の姿をとらえた。
  しかしいつもの紬とは違っていた。
  幼児を真ん中にはさんで、男性と
  三人で現れたのだ。
  予告のない、紬らしくない行為!️
  打ち砕かれた感情!️
  望愛は、紬のメッセージを読み取ると
  急いでカフェを出た。
  すると急に、心の叫び声を聴いた。
  (会いたい!️会いたい陽さん!️私を助けて!)浮かんだのは、店長の陽さんだった。
  そして5年の月日が流れた。
  あれ以来望愛と紬は、
  連絡を取ってはいない。
  スクランブル交差点で
  紬を見ることもなかった。

〇渋谷のスクランブル交差点
  そして望愛は、店長の陽さんと結婚した。
  それに翔(ショウ)という子供も授り、
  幸せに暮している。
  望愛の家系は代々、美容室を経営していた。そして現在、望愛と陽さんは数名のスタッフを雇い、美容室を経営している。
望愛(ノア)((田舎者の望愛が、陽さんと出逢い、東京で美容室を経営しているよ!本当だよ! パパとママに見せたかった、信じられる?))
  今は亡き両親に向かって望愛は、
  そう心の内を叫んだ。

〇睡蓮の花園
望愛(ノア)((紬さん望愛は、満ち足りた毎日を送っています。一月の凍りづくような第三日曜日、紬さんの行為が幸せを運んで来ました))
望愛(ノア)((今の幸せは、紬さんの深い愛の形によって与えられたものです。感謝しています、紬さんも幸せでいて下さいね))
  スクランブル交差点は
  多種多様な人生の、るつぼに違いない。

コメント

  • 人を思う気持ちは、人を動かしますよね。
    純粋な彼女の言動に、大人な紬さんはどうしていいのか考えたすえに、距離を置くことを考えたのかな?と思いました。
    彼女自身も幸せになれてよかったです。

  • 人が人を想う気持ちの尊さを、彼女達から教わった気がします。相手の将来を見据えて自ら辛い決断をするのも深い愛情の現れですね。ノアちゃんの素直でピュアな性格だからこそハッピーエンドだと思います。

  • 最後の展開ほっこりしました。とても読みやすいストーリで夢中になって読ませていただきました。ハッピーエンドの物語が読んでいて気持ちいいです。

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ