読切(脚本)
〇おしゃれなキッチン(物無し)
私の名はリョウコ。
しがないJKである。
そんな私は今、過去最大の危機に陥っていた・・・・・・
リョウコ「閉じ込められてる──?!?!」
周囲にあるのは小綺麗なキッチン。見たところ、設備の手入れも行き届いていそうだ。
一方で、出口と思われるドアは開かない。
リョウコ「え、誘拐?」
リョウコ「しかも、知らない間に服も着替えさせられてるし・・・・・・」
私、制服着てたはずだよね・・・・・・?
リョウコ「・・・・・・えーっと、そもそも私、 何してたんだっけ・・・・・・?」
〇住宅街の道
トモミ「それじゃあ、また明日ねー!」
リョウコ「うん、バイバーイ!」
なんの変哲もない、一日のおわり。
リョウコ「あれ、なんか落ちてる・・・・・・?」
リョウコ「フライパン、だよね・・・・・・?」
リョウコ「えっ、なっ、なに──?!」
〇おしゃれなキッチン(物無し)
リョウコ「・・・・・・」
思い出したところで、何か意味があるわけでもなかった。
むしろ、混乱が深まったような気さえする。
リョウコ「光るフライパンに誘拐されたJK、流石に私だけ説・・・・・・」
リョウコ「というか、これそもそも誘拐なの・・・・・・?」
・・・・・・考えてみても仕方がない。
リョウコ「とりあえず、周りの探索を・・・・・・」
〇おしゃれなキッチン(物無し)
・・・・・・一応手がかりっぽいものは見つけたんだけど、この紙・・・・・・
料理せよ。
リョウコ「アバウトすぎる・・・・・・」
リョウコ「こういうのってもっとさぁ・・・・・・ なんかあるでしょ・・・・・・?」
リョウコ「そもそも一人とか心細すぎる・・・・・・ いや、二人だったらいいってわけではないけど・・・・・・」
料理せよ。
・・・・・・じっとしていたところで現状が好転はしない、よね
リョウコ「やるしかない、料理!」
リョウコ「・・・・・・」
リョウコ「料理って具体的に何すればいいの・・・・・・?」
リョウコ「うーん・・・・・・」
リョウコ「あ」
リョウコ「なんかレンチンすれば料理した判定になるのでは?」
リョウコ「早速試してみよーっと!」
リョウコ「ふっふーん!」
リョウコ「卵を入れるなんてありきたりなミスは犯さないよ!」
リョウコ「とりあえずその辺にあったトマト!」
リョウコ「加熱しても美味しいし、なんかやらかしてもケチャップになるから問題ない、はず!」
リョウコ「時間は適当にセットして・・・・・・」
リョウコ「それでは行ってらっしゃーい!」
ピッ
〇おしゃれなキッチン(物無し)
──数分後
リョウコ「そろそろ時間かな〜?」
チーン!
リョウコ「あ、できたっぽい」
リョウコ「いざ、オープン!」
リョウコ「トマトめっちゃ爆発したーーーー!!!!」
リョウコ「え、卵以外は大丈夫なんじゃないの?!」
【注釈】
皮のある食品は破裂するかもしれないので危険です。ウインナーとかも避けましょう。
リョウコ「なんか事件現場みたいになっちゃった・・・・・・」
リョウコ「あ、レンジ壊れてる」
リョウコ「レンチン作戦は失敗かぁ・・・・・・」
リョウコ「・・・・・・よし、もう行き当たりばったりで勝負だ!」
リョウコ「さっきレンチンしなかった卵を使えば、なんか作れるはず!」
〇おしゃれなキッチン(物無し)
リョウコ「卵料理なら、やっぱTKGでしょ!」
リョウコ「・・・・・・でも、創意工夫は足りないか」
リョウコ「そうだ!焼いちゃえばいいんだ!」
リョウコ「卵焼きだと巻くのが難しいけど・・・・・・ご飯もまとめて炒めちゃえばそれは卵焼きじゃないもんね!」
リョウコ「なんか希望が見えてきたぞ〜!」
リョウコ「とりあえずコンロにフライパンをセットして・・・・・・」
リョウコ「・・・・・・確か、油を引く?んだっけ?」
リョウコ「材料をまとめて入れたらスイッチオン!」
リョウコ「生卵も食べれるとはいえ、ちゃんと火が通ってた方が安心感あるよねー」
リョウコ「ご飯ともしっかり混ぜながら炒めて・・・・・・なんか炒飯っぽくなってきた」
リョウコ「この辺で醤油で味付けしてみよーっと」
リョウコ「目分量で・・・・・・えーっとこんな感じ?」
リョウコ「うわ、醤油入れたら茶色くなっちゃった」
リョウコ「まあ、なんとかなるでしょ!むしろ香ばしくて美味しそうじゃない?」
リョウコ「ついでにさっきのトマトの残骸も入れとこ〜」
リョウコ「せっかくちょっとは残ったんだもん、食べなきゃもったいないよね」
リョウコ「風味付けに胡椒・・・・・・あっ振りすぎた」
リョウコ「塩足しとけば中和できるでしょ!」
リョウコ「塩を入れすぎたら次はお砂糖!」
──数十分後・・・
リョウコ「お皿にざざーっと盛り付けて・・・・・・」
リョウコ「できた〜!!」
〇おしゃれなキッチン(物無し)
リョウコ「いやー、ほんと頑張った・・・・・・!」
リョウコ「これでここからも出られ・・・・・・」
リョウコ「・・・・・・ん?」
ようせいさん「リョウコちゃん、おめでとです!」
リョウコ「なんかいる──?!」
ようせいさん「はい、ここにいるですよ!」
リョウコ「えっ、誰・・・・・・というか何?!」
ようせいさん「あたしは“ようせいさん”です!」
ようせいさん「世界の平和を守るため、いつでも密かに暗躍してるですよ!24時間営業中です!」
リョウコ「コンビニの妖精だ・・・・・・」
ようせいさん「とっても便利なお店と一緒にしないでほしいです!ようせいさんはようせいさんです!」
ようせいさん「リョウコちゃんにここでりょーり作ってもらったのも、世界平和のためですよ!」
リョウコ「・・・・・・世界の平和に関係ないよね?」
ようせいさん「甘いですね〜、もっともっと、未来のことも考えてくださいです」
リョウコ「未来・・・・・・?」
ようせいさん「せっかくなので、ちょっと見せちゃうです」
ようせいさん「えーいっ!」
〇崩壊した訓練場内
宇宙人「ワレワレハ ウチュウジンダ」
宇宙人「コノホシ ホシイ ヨコセ」
宇宙人「ウバウ ウバウ ウバウ」
リョウコ「これが未来?!」
ようせいさん「未来と言ってもちょっとだけ先の話です!」
ようせいさん「色々あって地球が宇宙人に侵略されかけちゃうですよ!」
リョウコ「えーっ?!」
〇おしゃれなキッチン(物無し)
ようせいさん「・・・・・・と、こんな感じです!」
リョウコ「なんか大変なことになるのはわかったけど・・・・・・それと私の料理と、なんの関係があるの?」
ようせいさん「それはですね〜・・・・・・」
ようせいさん「リョウコちゃんのりょーりには、潜在的なエネルギーがあるからです」
リョウコ「エネルギー?」
ようせいさん「これを一撃喰らわせると、宇宙人はたちまちダウンするです!」
ようせいさん「あ、ここでの『喰らわせる』は投げつけるって意味です!」
リョウコ「物理攻撃!?」
ようせいさん「あの宇宙人の惑星特有の物質と化学反応を起こしてどっかん!です!」
ようせいさん「それを作れるのは世界でリョウコちゃんだけですよ!誇るです!」
リョウコ「それでわざわざ私を閉じ込めてまで作らせたのか・・・・・・いや、信じがたいけど・・・・・・」
リョウコ「でも、これで未来が救われるんでしょ?ならよかったよ」
ようせいさん「安心は早いです!今後の平和のためにも、リョウコちゃんにはまだまだ協力してもらうですよ!」
リョウコ「え」
ようせいさん「リョウコちゃんはもう魔法少女ですよ! 契約は魔法のフライパンを拾ったときに完了済みです!」
リョウコ「まさかこれが・・・・・・変身アイテム?!」
ようせいさん「そのとーりです!」
ようせいさん「大丈夫ですよ!ようせいさんがリョウコちゃんのこと、立派な魔法少女に養成してあげるです!」
ようせいさん「そのための”ようせいさん”なのです!」
リョウコ「そんな〜!!」
・・・・・・こうして、私の普通じゃない日常が始まった。
〇住宅街
──後日・・・
リョウコ「あなたのハートをデンジャラスクッキング☆ マジカルリョウコだぞ☆」
リョウコ「・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・やっぱりこれ、めちゃくちゃ恥ずかしいよ〜〜〜〜!!
おわり