疾走

こうちゃん

エピソード1(脚本)

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〇センター街
  渋谷──。
  夢と現実が交錯する場所。
  お笑いに人生を賭ける漢たちの物語。
藤井「渋谷初めて来たな〜」
安本「昨日お笑いのライブで来たやんけ!」
藤井「いや〜、昨日のことなんて忘れちゃったよ」
安本「新人コンテストで優勝したのもか?」
藤井「それは覚えてるよ。 別脳だからな」
安本「別腹みたいに言うな! それよりも昨日の副賞見たか?」
藤井「まじウケるよな! 某有名時計店10万円割引券って!」
安本「3万円の時計買ったら7万円戻って来るんかな?」
藤井「あの店にそんな安い腕時計置いてないって! まあ俺らもああいう時計買えるように稼ぎたいな!」
安本「まあな、先輩はみんないい時計つけてるもんな!」
藤井「先輩っていっても売れてる人限定な。 この間『ミルキーイェイ』の川崎さんと会ってさ」
安本「おう」
藤井「『芸人が高級腕時計なんてダサいわ。 スマホで充分やん。』とか言っててさ」
藤井「いざ川崎さんのスマホ見たら画面割れてパキパキになってんのよ!」
安本「ワハハハハ!!」
藤井「画面が歪んでて1が7に見えたことあるって」
安本「さすが川崎さん、私生活までギャグだな」
藤井「だから俺らもそう言うお店に行った時に恥ずかしい思いしないように練習しときたいよな!」
安本「いきなり即興ネタか? よし、やってやるぜ」

〇宝石店
  コント:時計屋さん
藤井「いらっしゃいませ〜、お客様にお似合いの時計ございます!」
安本「えっ、もうあるの? まだ何も条件言ってないけど。 どんなの?」
藤井「ホッ時計キです!」
安本「駄洒落じゃねえかよ! しかもこう見えて甘いの嫌いなんだよ!」
藤井「失礼致しました。 お客様みたいな五段腹の方は甘党が多いので」
安本「三段腹! 柔道部か!」
藤井「ちなみに私はサッカー部のマネージャーでした」
安本「意外だね!!」
藤井「男女平等の校風が強かったので。」
安本「サッカー部のモチベーションだだ下がりだな!」
安本「まあ色んな時計があるな。 巻いていい?」
藤井「時間をですか?」
安本「時計をだよ! 全然急いでないし! あと5時間は居てやるからな!」
藤井「すいません、そんな暴言吐かれるならつまみ出しますけど。」
安本「へえ、やってみろよ」
藤井「はい、つまみです」
安本「そう言うつまみ!? 退店の方じゃなくて?」
安本「いや、別に退店しないけど」
安本「まあいいや これ、着けさせて」
藤井「かしこまりました」
藤井「いかがですか?」
安本「うん、悪くないね。 これ、おいくら?」
藤井「今の価値にして大体──」
安本「骨董品か!」
安本「間違っちゃないけど」
藤井「200万円です」
安本「結構するな。 でもこの時計もだんだん価値が上がってくんだろ? 最近腕時計投資みたいなの流行ってるじゃん」
藤井「そうですね。 ただお客様が着けたことで価値が手ぬぐい、、、半価値になりました」
安本「わかりづらいボケすな!」
安本「さっきからおかしいだろこの店! もういいよ!帰るから!」
藤井「待ってください!」
安本「なんだよ! もう他の店行くからいいよ!」
藤井「先ほどのおつまみお持ち帰りされますか?」
安本「いい加減にしろ!」

〇渋谷のスクランブル交差点
安本「即興にしては上手くいったよな」
藤井「次のコンテストも楽しみだぜ」
藤井「お前これからバイト?」
安本「いや、今日は休み」
藤井「これからどっかで飯でも食うか?」
安本「いいよ。 何食おうか?」
藤井「じゃあさ、ハチ公前でピザ食べようぜ!」
安本「嫌だよ!」
藤井「配達の人分かりやすくてすぐに届けてくれると思うけど」
安本「なんであそこで食べなきゃいけないんだよ!」
安本「YouTuberか!」
藤井「嫌か〜 この辺で美味しいお店ないかちょっと聞いてみるわ」
  なにやら辺りをキョロキョロする藤井。
藤井「すいませ〜ん、この辺で美味しい飲食店探してるんですけど、知ってますか?」
安本「街の人に聞くな! ドラクエか!!」
藤井「どっか行っちゃったな〜 まあ俺たち売れない芸人だもんな」
安本「関係ないわ! とりあえず歩きながら探そうぜ」
藤井「そうするか」

〇ネオン街
藤井「あっ、此処いいじゃん! 飲み放題1時間で1000円」
安本「安すぎないか」
藤井「お前今あれか? キン消しか?」
安本「金欠な! 空前の大ブームか!」
安本「でも確かに雰囲気良いな 入ってみるか」

〇焼肉屋
川崎さん「いらっしゃいませ〜 何名様ですか?」
川崎さん「あっ!」
川崎さん「藤井じゃん!」
川崎さん「お前らがいなかったら昨日俺らが優勝できたのに」
川崎さん「お前ら今何してんの?」
藤井「ご無沙汰です。 川崎さんここでバイトしてるんですね」
川崎さん「そうだよ。 今日も仕込みから締めまで」
川崎さん「だから全然ネタ作れなくてさ〜」
川崎さん「お前らちょっと手伝ってくれない?」
藤井「いや、俺ら今日は客としてきてるんで。」
安本「表のPOP見て安かったから来たんですよ」
川崎さん「お前らは知り合いだから割高にしとくよ」
藤井「わ、割高ですか? 冗談ですよね?」
川崎さん「いやマジだよ。 今は『芸人』じゃないからな」
安本「そんな。。。 こいつ川崎さんのこと慕ってて さっきもすべらない話聞かせてもらったんですよ」
川崎さん「じゃあロイヤリティよこせ」
藤井「勘弁してくださいよ。。」
  すいませ〜ん、ビールまだ〜?
川崎さん「はい、すぐ伺います」
川崎さん「じゃあそういうことだから。 そこの席座って」
藤井「す、すいません! 用事思い出したので帰ります!」
安本「お、おい! ちょっと待てよ!」

〇渋谷のスクランブル交差点
安本「なんだよ、川崎さんの奴」
藤井「変なところ見せちゃって悪かったな」
安本「これからどうするよ?」
藤井「とりあえずハチ公前まで徒競走しようぜ?」
安本「なんでだよ!って言いたいところだけどさ 俺も同じこと思ってた!」
安本「無性に走りたくなる時あるよな」
藤井「じゃあ勝った方が夜飯の牛丼奢りな」
安本「いいぜ!」
藤井「行くぞ!」
藤井「よ〜い」
藤井「DQN!」
安本「DQNって川崎のことか!」
  こうして二人は人混みの中をかき分けるように疾走した──。
  明日という名の栄光に向かって──。

コメント

  • テンポよく進んでいく二人の会話が面白かったです。このフタリは、間違いなくいいコンビです。夢に向かって一ミリでも前へ!というメッセージに感動しました。

  • 日常笑うことがないので、クスッと笑えておもしろか
    った。会話の中が、ボケとツッコミ。仕事になると大変だろうけど、夢があるって良いですね。

  • こんな私生活からボケとツッコミが絶えない生活をしてたら、天才の漫才師なのかもしれません笑
    夢を追いかけて、叶うまでが大変ですよね。
    バイトで食い繋いでって話は、漫才師にはよく聞きます。

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