エピソード8(脚本)
〇田舎の病院の病室
──どこか他人事な感覚で、目が覚めた
視界がはっきりしない
ぼやけているような、
遮られているような
──そんな感覚も、他人事
〇田舎の病院の病室
〇田舎の病院の病室
ソラ「──あ・・・はさみ・・・」
思い出すと同時──
指先に、金属の冷たさが触れた
ソラ(お兄さんは『気休めだ』って言ってたけれど)
指先から、感覚が澄んでいく
〇田舎の病院の病室
視界がはっきりして、
他人事だった感覚が
自身に戻って来るようだった
──その時
ソラ「・・・!」
〇大きい病院の廊下
〇田舎の病院の病室
・・・誰かが、廊下を歩いている
一人分、
決して大きな音じゃない、
でも──起こさないようにと潜めたような足音でもない
特別耳が利く訳じゃないわたしが、
ドア越しにだって聞こえる程度の大きさだ
ソラ(・・・夢遊病になっていた人みたいな歩き方)
ぼんやりしているというか
意識が半分ないような──
ソラ(でも今、入院している人で夢遊病はいない──誰も新しく発症してないなら、だけど)
夜勤の誰か──でもなさそう
──見回るには微妙な時間帯、
緊急なら一人のはずもないし
そもそもゆっくり歩いている場合じゃない
ソラ(・・・まさか、)
ソラ(お兄さんが捕まえに来た、オバケ・・・?)
オバケが足音を立てるのかは知らないが・・・
怖い話が好きな子が言うには、
誰かに気付いてほしいオバケは
音を立てたりもするし
物を動かすこともあるらしい
──それがもし本当で、
廊下にいるのがお兄さんが捕まえに来たオバケなら・・・
ソラ「・・・」
ソラ(わたしが確かめに行くのは危ない・・・かな)
お兄さんは、わたしの話を聞いて”今まで通りに過ごせ”と言った
──”わたしが何かに気付いている”ことを
オバケに気付かせてはならない、ということだ
ソラ(・・・それが当然だとわからないほど、 わたしは無知じゃない)
オバケから身を守るどころか
普通の運動すらできない病人だ
ショウ先生やリュウさんたちの心配ごとを一つでも減らしたいなら、
わたしが何かをすべきじゃない
ソラ(・・・でも、)
〇階段の踊り場
──あの日、わたしが何かをできていたら
〇田舎の病院の病室
ソラ「・・・」
ソラ「嘘を吐いた、から・・・なんて 言い訳にはならないかな」
わたしがすべきことは、わかる
でも──したいことができた
ソラ(正しいはずがない)
ソラ(でも・・・後悔すると、わかっている)
〇田舎の病院の病室
ソラ「──ごめんなさいで、終われるかなあ」