エピソード2、村人Aから始める、親子スローライフ(予定)(脚本)
〇森の中
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「なあ柚月...このまま森で野宿なのか...?」
斎藤 柚月(さいとう ゆずき)「パパ、野宿って言葉、軽く使いすぎ。わたし10歳、小学生。ていうか虫、無理」
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「いや、父も無理です。ていうかもう蚊に刺されてない?」
森の中、完全に迷子。
さっきから方向感覚がグチャグチャで、コンパスもGoogle Mapもない。
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「なあ、異世界ってもっとこう...女神様が出てきて...」
〇幻想空間
女神「あなたにチート能力を与えましょう♡」
〇森の中
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「...みたいなやつじゃなかった?」
斎藤 柚月(さいとう ゆずき)「そもそも、なんの説明もなかったし。パパが神様にツッコミすぎたから、神様怒ったんじゃない?」
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「その可能性高いな...」
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「って俺のせいかよ?!」
言い合いながらも歩いてると――。
〇森の中の小屋
斎藤 柚月(さいとう ゆずき)「あれ、あれ見て! 小屋!!」
森の先、木々の切れ間から、小さな木造の小屋が見えた。
斎藤 柚月(さいとう ゆずき)「誰か住んでるかも。もしくは...」
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「魔女の家的なやつか!? それとも森のくまさん的な!? お菓子の家!? いやむしろ通報される!?」
斎藤 柚月(さいとう ゆずき)「うるさいから黙ってついてきてパパ!!」
恐る恐る近づくと、中からパタパタと軽い足音。
そして――。
ルド・クライネ「ほえ?旅のお人かにゃ?」
出てきたのは、猫耳の...少女?
ルド・クライネ「にゃ...?」
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「うわ、出た!! 人外系の村人A!!!」
ルド・クライネ「Aじゃないにゃ!ルド・クライネっていう立派な名前があるにゃ!」
〇暖炉のある小屋
ルド・クライネ「なるほどにゃ〜、異世界転生で、親子でここに落っこちてきたと...」
ルドの家は中も綺麗で、麦茶をもらいながら事情を説明する。
ルド・クライネ「けど、魔法もなくて、転がってきただけって、あんたら運悪すぎにゃ」
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「やっぱり!? 俺もなんか、強そうな称号とか欲しかったのに!」
斎藤 柚月(さいとう ゆずき)「じゃあパパ、称号あげるよ」
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「おっ、マジ? 何?」
斎藤 柚月(さいとう ゆずき)「“ただのサラリーマン(死亡済)”」
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「やめてくれぇぇぇぇぇ!!!!」
ルド・クライネ「ところで、今後どうするのにゃ?」
ルドが、お茶をすすりながら聞いてきた。
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「いや〜、それがわかれば苦労しないっていうか...」
斎藤 柚月(さいとう ゆずき)「パパ、転生してきてから“わかんない”しか言ってないよ。何もしない系主人公じゃん」
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「俺は...生きてるだけでギリギリなの!!!」
柚月に容赦なく突っ込まれながらも、ふと娘の手のひらを見た。
さっきから、ちょっとだけ光ってる。
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「柚月、それ...なんかスキル的なやつじゃない?」
斎藤 柚月(さいとう ゆずき)「え、何これ...え、え、光ってる!?」
斉藤 悠真(さいとう ゆうま)「まさか、主人公って柚月なのでは?」
斎藤 柚月(さいとう ゆずき)「え、わたし!? いや、困るんだけど!? せめて“パパ最強”とかでいてよ!? なんで小学生主導で異世界生活するの!?」
こうして、スキルなしのポンコツパパと、スキルっぽい何かを持つツッコミ娘の
異世界スローライフ(仮)が始まったのだった。