渋谷 銅像談義

のはら

渋谷 銅像談義(脚本)

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〇ハチ公前
  渋谷 ハチ公前
山口(・・・やべぇな)
山口(完全にミスったわ・・・)
山口(・・・さて、佐々木にどう切り出すか・・・)

〇ハチ公前
佐々木「よぉ!山口! 待ったか?」
佐々木「合コンの企画、サンキュー! 久々で、気合い入るよ~♪」
佐々木「前回は、宮本に持ってかれたからなー」

〇居酒屋の座敷席

〇ハチ公前
佐々木「今日は宮本に負けねーぞ!」
佐々木「あれ、宮本はまだか?」

〇ハチ公前
山口「俺さ、ハチ公前を 待ち合わせ場所にした時から」
山口「考えてることがあって」
佐々木「なんだ?」
山口「ハチってさ」
佐々木「馴れ馴れしさが唐突だな」

〇田舎駅の改札
山口「主人の死後、10年間」
山口「駅に迎えに行き続けたことで 有名になったよな」
佐々木「あぁ」

〇田舎の駅
山口「俺のばぁちゃんもさ」
山口「雨の日は じぃちゃんを駅まで迎えに行っててさ」
佐々木「いい話だな」
山口「じぃちゃん死んで10年経っても」
山口「雨が降ったら、ばぁちゃん」
山口「駅に行こうとするんだわ」
佐々木「え、それって・・・」

〇ハチ公前
山口「ばぁちゃん、銅像になんねーかな」
佐々木「愛の重さは銅像級・・・」
佐々木「って、なるか!」
山口「・・・」
山口「・・・そもそもハチってさ」
佐々木「え。俺渾身のノリツッコミ 流されちゃう?」

〇田舎町の駅舎
山口「ハチが有名になったのは ある新聞記者のお陰なんだ」
佐々木「その記者の社会的影響力、半端ねぇな」
山口「立役者である記者の方が 銅像になる功績があるよな」
佐々木「でもハチ公が銅像になったから その記者も功績ができたんだろ」
山口「ならば、ハチと記者のセットで銅像にしよう」
佐々木「・・・ハチ公の主人が蔑ろになってんぞ」

〇ハチ公前
山口「ハチもすごいやつでな」
佐々木「まだ続くのか・・・」
山口「戦争中に撤去されたのに 戦後、再建されたんだ」
佐々木「それだけ愛されてたってことだな!」
佐々木「みんなに愛されるなんて 宮本みてーな犬だ」
佐々木「それにしても宮本遅ぇな 連絡してあるだろ?」
山口「・・・ところが可哀想なのは、二宮金次郎だ」
佐々木「・・・お前のスルースキルには 全俺総出で遺憾の意を表したい」

〇ボロい校舎
山口「金次郎像も戦時中に鉛にされたんだ」

〇ハチ公前
佐々木「お前に対する不信感も 鉛のようだぞ」
山口「しかし金次郎像の多くは 戦後、再建されなかった」
佐々木「何でだ?」

〇ボロい校舎
山口「歩いて本を読む姿が 歩きスマホを助長するらしい」
佐々木「まじか」

〇渋谷のスクランブル交差点
佐々木「・・・つまり渋谷界隈の歩きスマホ達も 金次郎像に感化されてたってことか?」
山口「そういうことになる」
佐々木「社会的影響力、半端ねぇな・・・」

〇ハチ公前
佐々木「銅像・・・ 奥が深いな・・・」
佐々木「てかさっきから この銅像談義、何だ?」
佐々木「宮本はどうした!?」

  ピコン
  山口のスマホにメッセージが届く

〇ハチ公前
山口「・・・」
佐々木「お!宮本からか?」
山口「いや・・・」
山口「時に佐々木・・・ お前の地元は下関だったな」
佐々木「そうだけど・・・ さっきから何なの?」
山口「まぁ、聞け」

〇海岸の岩場
山口「下関といえば」
山口「武蔵と小次郎の決戦があった 巌流島があるとこだな」
佐々木「よく知ってるな」
山口「銅像もあるんだろ」
佐々木「また銅像か・・・ あるよ」
佐々木「武蔵が宙を舞っててな 小次郎、覚悟!って瞬間を切り取ったやつ」
佐々木「武蔵、かっこいいぞ!」

〇ハチ公前
山口「佐々木!よく考えろ!」
山口「武蔵は、小次郎との戦いに わざと2時間遅刻してきたんだ!」
山口「そんなやつが勝って銅像になった。 悔しくないのか?!」
佐々木「・・・テンション、どうした?」

〇空
山口「今日は、お前に勝ってほしい」
山口「待ち合わせ日時を宮本にLINEするとき 俺は無意識にそう思ったのだろうか──」
佐々木「・・・何これ 自分語り?」

〇ハチ公前
山口「佐々木、聞いてくれ」
佐々木「さっきから延々聞いとるわ」
山口「どうやら宮本に・・・」
山口「誤った集合時間を伝えた、俺ガイル」
佐々木「言いづらいのは分かるが 日本語が妙だぞ」
山口「16時と伝えるところを 6時と送ってしまった」
山口「つまり、やつは18時にやってくる」

〇ハチ公前
  午後4時・・・16時
  午後6時・・・18時

〇ハチ公前
山口「凡ミスだ」
山口「全てはスマホに記録させてある」
佐々木「できる男風に釈明すんな」

〇居酒屋の座敷席
山口「佐々木、前回の悔しさを思い出せ」
佐々木「はっ・・・!」
山口「合コンという戦の場で 遅刻・宮本との戦いに勝ってほしい」
佐々木「・・・宮本が遅刻すんのはお前のせいだろ」

〇ハチ公前
佐々木「ま、いーや」
佐々木「とりあえず、女の子達に連絡して 店に行こうぜ」
山口「佐々木、落ち着いて聞いてくれ」
山口「お前がここに来る前 宮本が遅れることを女の子達に伝えた」
佐々木「そうなの? じゃあ早く行こうぜ!」
山口「そしたら、さっき女の子から 恐ろしいメッセージが届いてな・・・」
佐々木「ま、まさか・・・」

  宮本くんが遅れるなら
  スタートは6時にしてほしい──

〇ハチ公前
佐々木「おのれ、宮本・・・」
佐々木「社会的影響力、半端ねぇな・・・」
山口「今日の合コンは、打倒宮本だ」
佐々木「宮本め・・・ 俺の闘魂に火を着けたな・・・」
山口「奇しくもお前は佐々木 ヤツの名は宮本」
山口「宮本を倒し、 先祖の屍を越えていけ!」
佐々木「・・・俺、小次郎の子孫じゃねーけどな」

〇ハチ公前
山口「佐々木!合コン会場で 宮本と決闘だ!!」
佐々木「まかしとけ!!」

〇大衆居酒屋
  佐々木の妄想──

〇ハチ公前
佐々木「ッシャアーー!!」
佐々木「山口! ひとつ頼みがある!」
山口「受けて立とう!」
佐々木「俺達が繰り広げる死闘を 銅像にしてくれ・・・!」

〇ハチ公前

〇ハチ公前
山口「承知した!」
山口「俺からも、ひとつ頼みがある!」
佐々木「受けて立とう!」
山口「お前達の銅像の中に」
山口「俺のばぁちゃんの銅像も置かせてくれ!」

〇ハチ公前

〇ハチ公前
佐々木「・・・うん、実にシュールだな」
佐々木「社会的影響力、半端ねぇよ」

〇黒
  完

コメント

  • 銅像ってそこにあるのが当たり前すぎて改めて考えてみることなかなかないですが、その歴史や背景を知るのはとても面白いと感じました。日本全国銅像めぐりしてみたいなと、ふと思いました。

  • 社会的影響があるのかどうかわかりませんが、銅像になったら面白そうですね笑
    宮本武蔵達の像があるのは今知りました!
    楽しく読ませていただきました!

  • 確かに昔は学校とかにも銅像ありましたよね。
    あまり小学校に行くことがなくなったから見なくなったわけではないのですね…。
    にしてもやりとりがとても面白くて笑ってしまいました!

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