絶対に離すな!(脚本)
〇地下広場
隊長「いいか! 絶対に離すんじゃないぞ! 少したりとも気を抜くなよ!」
隊員1「し、しかし隊長! 水の勢いが強すぎます! これでは──」
隊長「泣き言を言うな! せき止められなければ、我々の威厳と誇りは失墜すると思え!」
かつてないほどの激流によって、ダムは決壊寸前だった。
もしも流れ出てしまえば、甚大な被害を受けることになる。
隊長「ここまでなんとか耐えてきただろう! あと数分――いや、あと数十秒でいい! 耐えるんだ!」
隊員2「も、もう限界です! これ以上は――!」
隊長「駄目だ! 離すな!」
その時──
ぐらり、と。
大きな揺れが、隊員たちを襲った。
隊長「・・・・・・よし、もういい」
隊員1「え?」
隊長「もういいんだ――離せ。 放せ! もう、放してやるんだ!」
隊員2「は、はい!」
〇結婚式場のレストラン
こうして、男の涙腺は崩壊した。
娘にも妻にも見せられない、『男泣き』だった。
男はゆっくりと席を立つ──
娘と、そのパートナーの新しい門出を、心の底から祝いながら。