読切(脚本)
〇CDの散乱した部屋
悪魔のロシェル「オカシイな、敦子はここで亡くなったはずやで・・・管理部の奴らまたなんぞ、ミスりおったんとちゃうやろか」
賢治「おい、なにしてる!?」
悪魔のロシェル「あ、ワテは怪しいもんとちゃいますよロシェルといいます ほら居酒屋であんさんたちの隣にいたでっしゃろ、ワテ」
賢治「人の家に上がり込みやがって」
悪魔のロシェル(そうだ、この人に聞いてみまひょ)
悪魔のロシェル「ここで敦子はんは亡くなったのでっしゃろ?」
賢治「縁起の悪い、敦子なら俺と暮らしてるぜ」
悪魔のロシェル「えぇっ、そんなアホな」
賢治「ウソだと思うならついて来な」
〇シンプルな一人暮らしの部屋
賢治「ほら、ちゃんと敦子は生きてるぜ」
敦子「出てって・・・あんたなんか知らないわ」
賢治「敦子そんなに怒らなくても」
悪魔のロシェル「イテテ、止めとくれなはれ敦子はん」
賢治「生きてる事が判ったろ。悪いが帰ってくれ」
悪魔のロシェル「帰りまんがな、ほなさようなら」
賢治「大丈夫か敦子!?」
敦子「ううん、私の傍を離れないでね賢治」
賢治「勿論だよ。夕飯お願い出来る?」
敦子「夕飯?どうやって作るんだったっけ?」
賢治「オイオイそれはフライパン」
敦子「え、えーっとどうやってご飯作るの?教えてお願い」
賢治「炊飯器はここ、それでコメを洗ってから・・・」
敦子「ウン、有難う書き留めとくね」
賢治「大丈夫か? 昔はテキパキとこなしてただろ」
敦子「あっ、そうだったっけ・・・忘れちゃった、もう一度教えてくれる?」
賢治「もういい夕飯は俺が作るからよく見ておきな」
敦子「ハイ、有難う忘れないようにメモるわね」
賢治「ひょっとして掃除も洗濯も忘れたのか?」
敦子「ち、違うの。ただ・・・記憶が曖昧で、待って頑張って思い出すから・・・本当よ、お願い見捨てないで」
賢治「そうか」
敦子「う、ウン。大丈夫思い出せるはず・・・多分」
賢治「判った飯は当分俺が作るから見て覚えろよ」
敦子「有難う、しっかり見て学ぶわ!!見てらっしゃい。いつか賢治より上手くなるから」
賢治「じゃぁ、洗濯を頼む敦子」
敦子「ウン、任せなさい賢治・・・」
賢治「大丈夫か敦子」
敦子「大丈夫、チョット躓いただけ。ゴメンねドジで」
賢治「敦子、お、お前まさか認知症!?」
敦子「そんな、違うわ・・・ただ少し物忘れが酷いだけよ」
賢治「病院行った方がいいぜ」
敦子「ウン、でも賢治と離れるのがイヤ」
賢治「付き添ってやるからさ」
敦子「本当に?・・・有難う賢治が一緒なら頑張れるわ私」
賢治「ハムエッグできたぜ。食おう」
敦子「わぁ、美味しそう、頂きます」
敦子「んー最高!毎日作って欲しいな・・・エヘヘ」
敦子「ねぇ明日休みでしょデートしようよ賢治」
賢治「じゃぁ買い物がてら散歩して病院に検査受けに行こうぜ敦子」
敦子「うん、有難う賢治・・・何がってもずっと一緒でいようね!!約束だよ」
賢治「あぁ、指切りでもするか?」
〇アーケード商店街
敦子「うぁ~凄い人込み」
賢治「休みだからな」
敦子「ねぇ、賢治はぐれるのが怖いから手を繋がない?」
賢治「いいよ」
賢治「そうだ、芳香剤とオーデコロンを買わなきゃ」
〇ドラッグストア
敦子「わぁ~凄い選ぶのに迷っちゃうわ賢治」
賢治「コラ敦子走り回るな」
敦子「賢治これ買っていい?」
賢治「しょうがねぇなぁ全く・・・いいよ」
敦子「わーい、大事に使うね賢治」
賢治「疲れたろうからお茶でも飲むか」
敦子「うん、賢治有難う」
〇テーブル席
賢治「よっこらせ。あぁ疲れた女の買い物に付き合うもんじゃないぜ全く」
敦子「そんな寂しい事言わないの賢治」
賢治「何飲む?」
敦子「紅茶お願い」
賢治「じゃぁ俺はコーヒー」
敦子「でも何でこんなもの買うの?賢治」
賢治「敦子ゴミ屋敷状態だったろ!!何か匂うんだよな」
敦子「もう、酷い」
賢治「付き合ってた頃の敦子は俺の尻を叩く綺麗好きだっただろ」
敦子「ごめんね賢治。賢治が去った後私・・・何もする気が起きなくて、でもこれからは以前みたいにするから」
賢治「あぁ」
賢治「じゃぁ病院行くか」
敦子「うん」
〇病院の廊下
賢治「どうだった検査は?」
敦子「ウン、何でもないって」
賢治「よかった~」
敦子「ゴメンね心配かけて」
賢治「いいよ・・・帰ろうか」
敦子「ウン・・・ねぇ賢治、ずっと傍に居てね」
賢治「あぁ」
敦子「よかった。私賢治が傍に居る事がどんなに大切な事なのかわかったような気がする」
賢治「止してくれ、照れるぜ」
〇シンプルな一人暮らしの部屋
敦子「は~いどなた?」
悪魔のロシェル「失礼しま!!敦子はん」
敦子「あぁ、貴方はロシェル」
悪魔のロシェル「良かった忘れずにいてはったんですね」
敦子「何の御用?」
悪魔のロシェル「困りますがな、あんさんはもう死んでるんでっせ」
敦子「死んでなんかいません。脚だってほらあるでしょ」
悪魔のロシェル「オーデコロンに芳香剤・・・匂いきついでんな」
敦子「な、何が言いたいの?」
悪魔のロシェル「ワテと一緒にあの世へ戻りまひょ」
敦子「嫌よ・・・帰って!!」
悪魔のロシェル「賢治はんに本当の事言いまっせ」
敦子「や、止めてそれだけは・・・三回忌2年だけ賢治さんと居させて、お願い!!」
悪魔のロシェル「別れがつろうなるだけでっせ敦子はん」
敦子「この幸せな状態を少しでも味わっていたいの・・・お願いロシェル」
悪魔のロシェル「んん・・・三回忌まででっせホンマに」
敦子「判ってる」
悪魔のロシェル「じゃぁ帰りますよってから」
敦子「有難う」
〇シンプルな一人暮らしの部屋
二年後・・・
敦子「あぁ、とうとうこの日がやってきてしまったわ」
敦子「賢治と別れられないわ・・・どうすればいいの」
賢治「敦子、どうしたんだ」
敦子「お別れね賢治」
賢治「待ってくれ、俺とずっと一緒って指切りしただろ敦子」
敦子「ええ・・・でも」
賢治「俺は敦子とずっと一緒だ」
敦子「遠いところに行くの私・・・ついて来てくれる賢治?」
賢治「当り前だ、約束しただろ。ずっと一緒だって」
敦子「有難う賢治」