ゴミ屋敷の敦子(脚本)
〇CDの散乱した部屋
敦子「ハ・・・?嘘どうしてアンタが?」
賢治「ヤァ元気?」
敦子「えっ、何でここに居るのよ。アンタなんか大っ嫌い帰ってくれない?」
賢治「俺だって心配していたんだぜ」
敦子「フン、余計なお世話よ。私の事なんか放っといてよ。もう関係ないでしょ私達終わったんだからさぁ」
賢治「関係あるとかないとか寂しいな」
敦子「はぁ・・・しつこいなぁ。今更何しに来たのよ!?用はないはずだけどねぇ」
賢治「友人が心配してたぞ」
敦子「チッ、あの子ったらお節介なんだから。 まぁいいわ。取り敢えず入れば、お茶はそこのペットボトルがあるから呑みたければ適当に」
賢治「有難う、それでこそお前だよな」
敦子「へぇ~そう思ってるんだ昔はあんなにカッコ良かったのに・・・今じゃ見る影もないわね」
賢治「そうか?」
敦子「ええ、ガッカリしてるのよ。ほら座って。これ穴空いてるけど・・・」
賢治「有難う」
敦子「別にいいけどさ・・・あっペットボトル頂戴私も飲むわ」
敦子「ゴクリ。ふぅ・・・疲れちゃったわ。最近ずっとこんな調子なのよね」
賢治「燃え尽き症候群って奴だよそりゃ」
敦子「かもしれないわね(フフン・・・)でも私なりにちゃんと頑張ってるつもりなんだけどなぁ・・・上手く行かなくてさぁ」
賢治「俺にあれだけ尽くしたのに捨てられて燃え尽きちゃった・・・てわけだろ」
敦子「うるさい!アンタのせいじゃないわよ!ただ単に仕事がうまく行かないだけ」
賢治「そうか、現在の仕事に苛立っているって訳?」
敦子「ウンまぁそんなとこかな。毎日同じ仕事の繰り返しだし上司ムカつくし部下も言う事聞かないし・・・もうイヤになっちゃったわ」
賢治「中間管理職の悲哀だねそりゃ」
敦子「そう言う問題じゃぁないのよ。もっと深い所で悩んでいるって言うかさぁ・・・人生そのものに疑問感じちゃってるの」
賢治「へぇ~どんな疑問なんだよ」
敦子「生きる意味とか価値とかね。アハハ!バカみたいでしょ?」
賢治「何で?」
敦子「だってさぁアラサー女が一人で哲学的になるなんてさ」
賢治「自我に目覚めたんだよ」
敦子「フーン、そう言う見方もできるかしらね」
賢治「そうなんだ、昔の敦子ならテキパキして俺をどやしつけてたからそんな事考える暇なかっただろ」
敦子「そうかも、でも今は正直言って息苦しくてなにもする気になれないわ」
賢治「それでこのゴミ屋敷かよ。らしくねぇな」
敦子「うるさいわねぇ、このセリフ昔は散々賢治に言われた来たけど今判ったわ」
賢治「誰でも一度は感じるのもさ」
敦子「そうかなぁ・・・皆平気な顔して生きているように見えるけど・・・」
敦子「アタシだけ取り残されちゃった気がしてならないわ」
賢治「他人の心の中は見れないだろ・・・心の中で皆私って可哀想って思ってるかもな」
敦子「まぁ確かにそうかも・・・でも辛いもんは辛いわよ」
賢治「こりゃ重症だな・・・」
敦子「ねぇ賢治アンタは今幸せなの?」
賢治「独り身だよ君以上の彼女は居ないからね」
敦子「へぇ~意外ね賢治。じゃぁまだ私にもチャンスがあるって訳だ・・・冗談だけど」
賢治「俺を束縛しなければね。チャンスはあるぜ」
敦子「ハイハイ判ってるわよ。あの頃はゴメン若かったし・・・」
賢治「誰もがね」
敦子「ホントそうねでも後悔はしてない私。賢治と過ごした日々はかけがえのない私の宝物だから」
賢治「自分だけ充実してた訳か」
敦子「えっ、違うわよ。そういう意味じゃなくて・・・あぁもう!うまく言えないけど大切だったって事」
賢治「確かに敦子は素敵で何でも気がつく最高の彼女だった・・・束縛しなければな」
敦子「またそこに戻るの?しつこいわねぇ。今ではちゃんと反省してます」
賢治「そうか良かった早く彼氏見つけろよ」
敦子「大きなお世話。まだ当分はこのままかな・・・」
賢治「これから予定あるか敦子」
敦子「いえ別に・・・何よデートの誘い?」
賢治「呑みに行かねぇか居酒屋」
敦子「フフフ気が合うじゃない昔の元彼さん」
賢治「敦子にもうそんな気はねぇよ」
敦子「まぁいいわ・・・着替えて来るから」
敦子「お待たせ、いい店紹介するわね。行きましょ」
賢治「宜しくな」
〇大衆居酒屋
悪魔のロシェル「くそ──ルシファ部長無茶なノルマを儂にかけおってからに、いつかシバいたるで~ヒック、大将焼酎ロックで濃いめやでぇ」
敦子「さぁ賢治ここなの、入って」
店員「いらっしゃいませ──」
賢治「おっ、なかなか乙な店だね」
敦子「二人テーブル席空いてます?」
賢治「よっコラショ、なに呑む?」
敦子「そうねぇまずはビール。それに串カツ盛り合わせに枝豆・・・賢治は?」
賢治「おっ、がっつりゆくねぇ。俺は酎ハイにハムカツに刺身盛り合わせ」
敦子「いいわね、ねぇシェアしない?」
賢治「ダメ」
敦子「いいじゃない、元彼と元カノ同士。今更間接キスでオタオタする仲でもないでしょ」
敦子「済みませーん注文お願いしまーす」
敦子「生ビール一つに酎ハイ一つ串カツ盛り合わせと枝豆それにハムカツ刺身盛り合わせお願いしまーす」
賢治「常連なんだね」
敦子「まぁね週二回くるかな。一人酒ばっかりだけど」
賢治「女性の一人酒はお誘いが多いだろ」
敦子「酔っ払いの絡み酒に付き合わされて寂しくなるだけよ」
賢治「早く彼氏と子供を作れよ」
敦子「何言ってるの、賢治の子供なら産んでもいいけど」
賢治「止してくれ、誰の子供かわからず托卵されるのはゴメンだね」
敦子「失礼ね、私は尻軽女じゃないわよ子供は賢治の子供を産むってきめてるんだからプロポーズ早くしてよね」
賢治「プロポーズか・・・何回も告ったつもりだけど・・・まぁ今更愚痴っても仕方ない」
敦子「御免なさい私本当にバカだったわ気づかなくて、もう一度告ってくれないかな?」
賢治「おっ、きた来たさぁ吞もうぜ 再会を祝して乾杯」
敦子「ねぇ私を見てよ真剣なの賢治の全てを受け入れる覚悟はできてるわ」
賢治「そんな肩ひじはるなよ。ほら、カンパーイ」
敦子「ふー美味しい。今日は有難う賢治に会えてうれしかったわ」
賢治「そう?喜んでくれて嬉しい、少しは前向きな気持ちになれた?」
敦子「う~ん半々ってとこかな正直まだ不安だらけ、でも賢治に会えて希望が見えてきたわ」
賢治「そうか、来たかいがあった」
敦子「こっちこそ来てくれて感謝してるわ。このままずーっと一緒にいられたら・・・ハッ これはその~」
賢治「失言しやがって心がバレバレじゃねえか」
敦子「うっ、バレちゃった?恥ずかしい」
賢治「おっ、ハムカツ美味しい」
敦子「でしょハムカツと串カツはここの名物なの、串カツ食べる?ハイあーん」
敦子「冗談よ」
賢治「また騙された昔と変わらねぇな敦子」
敦子「えへへ、引っ掛かっちゃった、相変わらず甘えん坊さんね賢治」
賢治「敦子は昔からそうやって俺の心を弄んでスルリと躱すのが得意だね」
敦子「えー?そんな事したっけ~覚えてないなぁ・・・でも楽しかったな」
賢治「そりゃそうさ虐めた側は虐めた記憶を忘れてるって訳」
敦子「チョット待ってよ!!そんな酷い事した覚えないわよ。むしろ優しくしてたつもりだけど・・・勘違いしてない?」
賢治「まぁいいよ男の心理と女性は違うって事さ」
敦子「傷つけたならごめん」
賢治「気にしないで、過ぎた事さ」
敦子「ありがとう・・・優しすぎるよ賢治。これからは償わせて!!」
賢治「あー何で重たくするんだよー折角楽しんでいるのに」
敦子「ゴメン、つい癖で」
賢治「変わらねぇな昔と敦子は」
敦子「うるさいなぁ、だいたい昔の話は卑怯よ」
敦子「ハッ、あれまだ根に持ってるの?」
賢治「この露天風呂で男達とはしゃいでる写真・・・俺はショックだったぜ」
敦子「そ、それは誤解なの!ただの同期会のお泊り旅行の時・・・信じて、賢治あの時もアナタだけを愛していたの」
賢治「素っ裸で男と肩を組んでても?」
敦子「あ、あれは・・・確かに軽率だったけれどでも本当に何もなかったわ信じてよ賢治」
賢治「わかった、過去の話は止める」
敦子「ありがとう、これからは賢治だけを見詰めて生きて行くわ」
賢治「それを信用しろって!?」
敦子「ハイ、だからチャンスを下さい賢治」
賢治「トイレ行って来る」
敦子「あぁ、どうして・・・」
悪魔のロシェル「もしもしお嬢さん」
敦子「誰あんた?」
悪魔のロシェル「ワテは恋愛相談のロシェルだす」
敦子「なんだ、結構よ」
悪魔のロシェル「死相が現れてまっせ!!あんさん」
敦子「えっ、死相?」
悪魔のロシェル「はい、それも明日中に」
敦子「ウソ」
悪魔のロシェル「何か死ぬ前にやっておきたい事ありませんか?」
敦子「賢治と仲を戻したいんだけど・・・いくらかかるの」
悪魔のロシェル「へいそんなのタダで乗ってあげますがな」
敦子「じゃぁ試しにこの場で賢治とよりを戻させて」
悪魔のロシェル「判りました・・・では、さいなら」
賢治「じゃぁ帰ってやり直そうぜまた」
敦子「えぇ、それじゃぁ・・・」
賢治「やり直そうぜ、敦子の部屋に戻って話し合おうぜ俺達将来の事」
敦子「ウン」
〇CDの散乱した部屋
悪魔のロシェル「ホナ、敦子はんの魂を頂きまひょ・・・毎度おおきに」
賢治「あれ、敦子が冷たくなってる」
散らかった部屋が、彼女の混乱した心の中を表してるみたいでいいですね!
厄介な博士が出てきて、ますます混乱していきそうで先が楽しみです😃