プロフェティック・ドリーム

坂道月兎

#16 早乙女雄星(脚本)

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〇屋敷の門
百瀬涼平「ここか・・・」
八神直志「すごいお屋敷だな・・・あそこに監視カメラあるし」
百瀬涼平「インターフォン押すのも勇気いるよな」
  ちょっと深呼吸して・・・と思っていたら、横からにゅっと手が伸びてきた。
  ピンポーン、とごくごくスタンダードな音が響く。
百瀬涼平「ゆ、結衣!?」
花ノ木結衣「あ、りょうくん押したかった?」
花ノ木結衣「ごめん、ボタンがカッコいいからつい押しちゃった」
  そう言って申し訳なさそうに笑う結衣を、アリスが背後から抱きしめた。
笹島アリス「あーもう、可愛い。何しても可愛い」
花ノ木結衣「あはは、アリスちゃんはそればっか」
  きゃっきゃとはしゃぐ女子に気を取られていると、年配の女性が出てきた。
須藤茂子「はい。あの、どちら様でしょう?」
八神直志「こんにちは。 俺たち早乙女君のクラスメイトなんです」
八神直志「しばらく学校休んでいるみたいなんで、心配になって・・・」
須藤茂子「まあ、坊ちゃんの? それはそれは・・・どうぞお入りになって」
須藤茂子「体調を崩しているわけじゃないんですよ」
  最初は警戒していた女性だったが、早乙女のクラスメイトと聞いて安心したらしい。
  一転、にこやかになって門を開けてくれた。
須藤茂子「坊ちゃんのお友だちなんて、初めてですねえ。っと喜ばれると思います」

〇シックなリビング
早乙女雄星「な、なんだよ、お前ら! 何しに来た!?」
  俺たちの突然の訪問に驚いた早乙女は、結衣の顔を見るとさらに動揺した。
早乙女雄星「はっ、花ノ木さん!? なんで?」
  須藤さんがにこやかにお茶とケーキを運んできてくれた。
須藤茂子「皆様、ぼっちゃんを心配してきてくださったんですって」
早乙女雄星「・・・・・・」
  家政婦さんである須藤さんには弱いらしい。早乙女はきまり悪そうに黙り込んだ。
八神直志「なあ、なんでずっと学校休んでんの?」
早乙女雄星「・・・どうでもいいだろ」
  そう言うと早乙女は立派なソファーにどかっと腰を下ろしてため息をついた。
早乙女雄星「須藤さんのケーキ、おいしいから食べれば?」
  すぐに追い返されるだろうと覚悟していたのに、早乙女の態度は意外だった。
早乙女雄星「張り切ってるんだよ、うちに客なんか来たことないし」
百瀬涼平「宮島とか後藤とか、いつもつるんでる連中は?」
早乙女雄星「わざわざこんなとこに来るわけないだろ。 父の会社には行ってるだろうけど」
花ノ木結衣「え? なんで宮島くんとか後藤くんが早乙女くんのお父さんの会社に行くの?」
早乙女雄星「・・・・・・」
  黙り込んだ早乙女の代わりに、八神が口を開いた。
八神直志「宮島と後藤の父親も、早乙女の親父さんの会社で働いてるんだと」
百瀬涼平「そうなのか?」
八神直志「つまり、宮島も後藤も父親に言われて早乙女と一緒にいるけど、友だちじゃない」
早乙女雄星「そうだ。あいつら、父から金をもらって僕の行動を逐一報告してるんだ」
百瀬涼平「そうか、それでバイトって・・・」
早乙女雄星「金のために我慢してるだけで、あいつらは僕のことが嫌いなんだよ」
  何でもないことのように言う早乙女だったが、その声にはわずかに切なさが混じっているように感じられた。
  アリスを見ると、複雑な表情で黙り込んでいた。
早乙女雄星「花ノ木さんのことだろ?」
  一瞬、早乙女が正夢のことを知っているのかと驚いたが、そうではかった。
早乙女雄星「この間は悪かったよ。・・・あの生方さんって人に色々話聞いてもらってさ」
  そういうと、早乙女は結衣に視線を投げた。
早乙女雄星「怖い思いさせて・・・悪かった、花ノ木さん」
花ノ木結衣「ううん、なんか、あの・・・ごめんね」
早乙女雄星「花ノ木さんは悪くないだろ」
  何となく気まずい空気が流れたのを察知したのか、八神が明るい声を出した。
八神直志「なあ、早乙女って結衣ちゃんのどういうとこが好きなの?」
早乙女雄星「なっ、なんでそんなこと、わざわざ本人の前で・・・」
八神直志「いや、本人の前だからいいんじゃないの? 悪いことじゃなくていいことなんだから、いいじゃん」
  早乙女はちらっと結衣を見て逡巡していたようだったが、やがてあきらめたように言う。
早乙女雄星「似てるんだ」
八神直志「似てる? 誰に?」
早乙女雄星「僕を産んだ・・・母親に」
  早乙女は携帯を取り出し、写真を見せてくれた。
早乙女雄星「写真は全部処分されたけど、このデータだけは残ってたんだ」
笹島アリス「確かに、似てる」
  やわらかな雰囲気が少し似ている気がする。
八神直志「小さい頃に離婚したんだっけ?」
早乙女雄星「ああ。それから一度も会っていない。 生きているか死んでいるのかもわからない」
  早乙女は、結衣の見た目だけではなく、片親しかいないという境遇にもシンパシーを感じていたのかもしれない。
花ノ木結衣「ねえ、早乙女くん。 私たちお友達になれないかな?」
  突然、結衣がぎょっとするようなことを言い出した。
八神直志「いや、結衣ちゃん、それはちょっと・・・」

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