紫の縁

月屋コノ

あなたと、あなたといる街(脚本)

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〇紫(ライト)
  渋谷が怖かった私を
  変えたのはあなた

〇改札口前
(東横線が丸々移って、副都心線が渋谷デビューかぁ 地下鉄の進化が凄い)

〇広い改札
(何があった銀座線!?異世界転生か!?)

〇地下街
(ここシブチカ!?時が消し飛んだの? 昭和から令和に時が消し飛んだの?)

〇渋谷ヒカリエ
(工事終わってたのか)
(って中ひっっろ吹き抜け高っっっか あと連絡通路めっちゃ透けてる)

〇渋谷駅前
(あんな大きい百貨店が閉店!? そんな、駅と一心同体だと思ってたのに)

〇モヤイ像
(い、色白になった?なったよね? 洗顔?)

〇ハチ公前
(・・・)
ミナ「逆に何故そのままなんだハチ公!!!!!!」

〇渋谷駅前
  進学による引越で東京と縁が切れたはずのミナは、10年ぶりの渋谷駅に泡を食っていた
  地下と地上を行き来して、駆け回って早一時間
  待合せ場所にようやく落ち着いた
  本来なら知るはずのなかった数々の変化
  今またこの地に降り立つ理由は
ミナ(会いたい人に会うためだ)

〇紫(ライト)
  ユカリ

〇センター街
ミナ(過去)「・・・」
ミナ(過去)(また置いてかれた)
ミナ(過去)(せっかくの校外学習、そりゃ私なんかより仲良い子と回りたいよね)
ミナ(過去)(だから『二人組作って』は嫌なんだ)
ミナ(過去)(帰りの電車、どっから乗ればいいんだろ とりあえず歩き回って──)
通行人1「ちょっ、マジでぇー??」
通行人2「ウケんだけど!!」
ミナ(過去)「・・・っ!」
ミナ(過去)「・・・」
「ミナ?」
ミナ(過去)「えっ」
ユカリ(過去)「やっぱりミナだ!」
ミナ(過去)「立花、さん」
ユカリ(過去)「ユカリでいいよ、私も名前呼び捨てだし」
ユカリ(過去)「一人でどうしたの? 今日の美術館鑑賞、A子と組んでたよね」
ミナ(過去)「・・・あ・・・」
ユカリ(過去)「あっ・・・」
ユカリ(過去)「・・・私もね、B子が風邪でお休みだからさー、どっかの組に混ぜてもらおうと思って!」
ミナ(過去)「そ、そう」
ユカリ(過去)「ミナ、一緒に見てよ」
ミナ(過去)「!」
ユカリ(過去)「前からミナと話したいと思ってたんだ、お願いっ」
ミナ(過去)「・・・!」
ミナ(過去)「う、うん」
ミナ(過去)「よろしくね──ユカリ」

〇紫(ライト)
  騒がしくて、ぎらついて、

〇Bunkamura
ユカリ(過去)「こういう所でフラッとオペラ見てサクッとフレンチしばける大人になりたいね〜」
ミナ(過去)「あ、あの、あんまり喋れなくてごめんね」
ユカリ(過去)「そう? ロビーに植えてあるお花がどれも本物だって楽しそうに話してたじゃない」
ミナ(過去)「そうだっけ」
ユカリ(過去)「ミナってあんな顔もするんだね」

〇紫(ライト)
  輝いてる人のための街だと

〇公園通り
ミナ(過去)「渋谷の服って豹柄とミニスカ以外も売ってるのか」
ユカリ(過去)「この辺はミナ好みも多いよ 今日買ったシャツはシックな感じでミナに似合ってたでしょ」
ミナ(過去)「ユカリが選んでくれたからだよ」
ミナ(過去)(私に似合う服、あるんだ)

〇紫(ライト)
  私がいては駄目な場所だと

〇宇宙空間
ユカリ(過去)「生解説付きで星見たの初めて!」
ミナ(過去)「星空から一番縁遠そうな街なのに 天の川まで見れちゃったね」
ユカリ(過去)「縁遠いからこそのプラネタリウムじゃない? 憧れ、みたいなさ」
ミナ(過去)「憧れか」

〇紫(ライト)
  そう思ってた渋谷の

〇東急百貨店

〇本屋
ミナ(過去)「話題の本が集結すると、こんなに熱気を放つんだ」
ミナ(過去)「古典文学コーナーは言わば休息所か」
ユカリ(過去)「何買ったの?」
ミナ(過去)「!?」
ユカリ(過去)「『与謝野晶子歌集』?ミナってば文学少女!」
ユカリ(過去)「何々、『髪五尺──」
ミナ(過去)「や、あのっ、そこ開かないでっ」

〇紫(ライト)
  懐の深さを知ったのは

〇スペイン坂
ユカリ(過去)「赤煉瓦の小道を眺めつつ、みかんソーダを嗜む私達」
ユカリ(過去)「これは放課後の優雅なひと時、買い食いなどではない」
ミナ(過去)「買い食いだよ」
ユカリ(過去)「ダメかー」
ミナ(過去)「ダメだねー」
ユカリ(過去)「二人だけの秘密ね?」
ミナ(過去)「二人だけ・・・」
ミナ(過去)「うん」

〇紫(ライト)
  あなたがいたから

〇渋谷のスクランブル交差点
  永遠と思われた日々は
ミナ(過去)「ユカ──」
知らないイケメン「ユカリ!」
  あっけなく終わった

〇渋谷のスクランブル交差点
ミナ(過去)(私がもっと頑張ってれば、まだ)
ミナ(過去)(──いや)
ミナ(過去)(夢だったんだ。全部夢)

〇田舎駅の改札
  進学後 都外

〇大学

〇大衆居酒屋
  進学、そして就職先の交友関係はオフでも地続きだった
  いつものメンバー。いつもの飲み屋。休日にはいつものショッピングモールにいつもの車が集う
  順調で平穏な毎日だ
  男友達の誰かと家庭を持つ未来を楽々見通せるほどに

〇綺麗な一人部屋
  しかし、付き合いで始めたSNSで見かけた”その人”にメッセージを送る時
  久しぶり
  胸が震えた

〇渋谷駅前
ミナ「ここでユカリと会うんだ」
ミナ「今の私はちゃんと」
ミナ「言えるかな」
ミナ「・・・」
「ミナ?」
ミナ「えっ」
ユカリ「やっぱりミナだ!」
ミナ「──ユカリ」
  一目でユカリだと分かった
  流行りの髪型をしても
  人懐こい面差しに薄く化粧が乗っても
  そして、
ミナ(・・・・・・・・・・・・・・・)
ミナ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ)
  ミナは目線を少しだけ下げて微笑んだ
  意図を察してか、ユカリも笑みを返す
ミナ「・・・いつごろ?」
ユカリ「んーと、花菖蒲ってあるでしょ すらっと細長い葉っぱの、背が高い紫の花 あれが咲くころ」
ユカリ「近くに名所があるんだ 日本庭園でね、辺り一面花づくしになるって」
ユカリ「この子にも見せたいなぁ」
  そう言ってユカリはお腹を撫でた
  鞄に揺れるマタニティマークと同じ、幸せそうな顔をしてるとミナは思った

〇渋谷の雑踏
ユカリ「それにしてもミナ、見違えたよ  すごい垢抜けた!」
ミナ「そう?そうかな」
ミナ「10年、経ったもんね」
ミナ(ユカリ 予想はしてたよ)
ミナ(あなたと私は違う)
ミナ(だから)
ミナ「ユカリも」
ユカリ「ん?」
ミナ「おめでとう」

〇紫(ライト)
  会えてよかった

〇SHIBUYA109
  あの頃より真っ直ぐ目を見て
  あの頃よりはっきりとした声で
  心からの祝福を伝えられた
  その事実が
  欠け落ちた所を満たして溢れる

〇空
(みんな変わっていく 変わり続けていく)
(それは生きることそのものだから)
(私も変わってきた 変わっていく)
(それは)

〇紫(ライト)
  あなたが私を変えたから

〇SHIBUYA SKY
ユカリ「夜ご飯どうする?お昼は私のおすすめだったからミナの食べたいもの探そうよ」
ミナ「なら──」

〇渋谷ヒカリエ
ミナ「ここ行こうか」
ミナ「待ち合わせ前に少し覗いてね 座れる所多いし、体を温める食事も色々あったの」

〇SHIBUYA SKY
ユカリ「いいね!一緒に美味しいとこ開拓しよう!」
ミナ「ふふ。楽しみだね」
「見て、日が沈むよ」

〇SHIBUYA SKY

〇紫(ライト)
  あの日々と、ずっと。

〇渋谷のスクランブル交差点

〇渋谷のスクランブル交差点

〇渋谷のスクランブル交差点

コメント

  • 学生時代から大人になるまで、丁寧に書かれていて感情移入がしやすかったです。
    大人になるうちに、進学や就職、結婚と離れていくことの多い学生時代の友人ですが、長く会ってなくてもいつものように話せるっていいですね。

  • 学生時代という多感な時期に、多くの時間を共に過ごした友人は特別ですね。自分軸が完全に確率されていない若い時期だからこそお互いが与え合う影響も大きいですし。私自身、ミナと同じく交友関係は狭く深くだったので、その頃の友人にはやはり特別感を感じてしまいます。

  • 私もどちらかというと思春期はあまり良い想い出がないほうで、だからゆかりみたいな友達に出会えていたらなあと思いました。彼女にとって、ゆかりという存在が軸になっている様子がとても素敵です。

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