それは呪いか幸いか(脚本)
〇芸術
万物には生物・無機物問わずに魂が宿るといわれている
それを人はアニミズムと呼ぶ
そして、ここにも・・・
〇リサイクルショップ(看板文字無し)
ここは光ケ丘商店街にある藤吉骨董屋
祖父から店を引き継いだ俺が店主を務める
店内には祖父が国内外から集めた骨董品で溢れていた
〇リサイクルショップの中
翡翠「今日も全然お客さん来なかったわね・・・」
藤吉 七緒「良かったじゃないか、暇で」
翡翠「良くないわよ!また赤字よ!」
藤吉 七緒「お客が来ても、年代物の君を欲しがるような殊勝な客はいないよ」
翡翠「七緒は本当に失礼な人ね! わたしがお婆ちゃんみたいじゃない!」
翡翠「あっ!お客様だわ!」
翡翠「七緒、後は宜しくね」
藤吉 七緒(もし、翡翠を欲しがる客が現れたら俺は・・・)
〇リサイクルショップの中
篠崎社長「お邪魔するよ。話し声がしたがお取り込み中だったかな?」
藤吉 七緒「いらっしゃいませ。電話中だっただけなので、お気になさらず」
藤吉 七緒(この人は有名なアパレル会社の篠崎社長だ。なんでそんな人がうちに?)
藤吉 七緒(しかし、テレビでみるより顔色が悪いし、汗もひどい。手も震えてるし、どこか悪いんだろうか)
藤吉 七緒「なにかお探しのものがあればお気軽にお声かけください」
篠崎社長「この店に、翡翠のネックレスがあると聞いたんだが・・・」
どうしてそれを・・・!
藤吉 七緒「確かに翡翠のネックレスはございます。しかし、いわく付きの品物でございまして・・・」
篠崎社長「なぜだい?」
藤吉 七緒「翡翠のネックレスの所有者はみな呪われると言われているんです」
藤吉 七緒「最初の所有者は転落死」
藤吉 七緒「二人目の所有者は溺死」
藤吉 七緒「三人目の所有者は窒息死」
藤吉 七緒「そして、四人目の所有者の祖父も亡くなりました」
秘書「なんと恐ろしい・・・」
篠崎社長「偶然じゃないのか?」
藤吉 七緒「そうかもしれません。しかし、ネックレスを売るときは十分注意するように祖父に言われていたもので・・・」
篠崎社長「逆に面白いじゃないか。いくらでも出すぞ。私のコレクションに加えたい」
秘書「しかし、社長・・・!」
篠崎社長「お前は口を挟むな!!」
藤吉 七緒「お客様が呪われても当店は一切の責任も負いませんよ。構いませんか?」
篠崎社長「呪いなんてあるはずがないだろう」
藤吉 七緒「そうおっしゃるならお売りしましょう」
そうして翡翠のネックレスを篠崎氏が買い取ることになった
後日、秘書が翡翠のネックレスを取りに来る約束をし、二人は店を出た
〇リサイクルショップの中
翡翠「七緒は私をあの人に売ったのね・・・」
藤吉 七緒「喜ばないのかい?君はこの店から出たかったんだろう?」
翡翠「七緒は私がいなくなっても悲しくないの?」
藤吉 七緒「どうせ君はこの店に帰ってくるよ・・・」
翡翠「私が呪われてるからっていいたいの?」
藤吉 七緒「違うよ」
翡翠「どうせみんな私のこと手放すって」
翡翠「七緒なんて大嫌い!!」
藤吉 七緒「翡翠!」
翡翠の姿は消え、翡翠のネックレスだけがそこに残った
そして、翡翠のネックレスは秘書に引き取られ、骨董屋から出ていった
〇リサイクルショップの中
一週間後
○○会社篠崎社長、飲酒運転で交通事故
✕月✕日未明 ○○市で乗用車が歩道の街路樹などに衝突し、車を運転していた篠崎健太郎氏がケガをしました
篠崎氏は酒を飲んだ状態で運転し、事故を起こしたとみられている
後日、交通事故はきっと翡翠のネックレスのせいだと言い出し、篠崎氏はネックレスを返却してきた
そして翡翠のネックレスはまた藤吉骨董屋に戻ってきた
〇リサイクルショップの中
藤吉 七緒「ほら、君は帰ってきただろう」
翡翠「七緒の言う通りになったみたいで不服だわ」
翡翠「どうせわたしは呪われたネックレスよ」
藤吉 七緒「君は呪われたネックレスなんかじゃないよ」
藤吉 七緒「篠崎社長はアルコール中毒だった。 彼が起こした事故に君は関係ないだろう?」
翡翠「でもみんな私の持ち主は呪われるわ!」
藤吉 七緒「偶然の一致だよ」
藤吉 七緒「自宅の階段で転落死した一人目の所有者の開業医はだいぶ歳を取っていた。だいぶ足腰も弱っていたようだ」
翡翠「二人目の人はまだ若かったわ・・・」
藤吉 七緒「たしか二人目のパイロットは自宅のプールで溺死した。どうやらその前にだいぶ酒を飲んでいたらしい」
翡翠「三人目の人は?」
藤吉 七緒「三人目の政治家は窒息死。餅を喉につまらせたらしい。呪いどころかよくある話だ」
藤吉 七緒「そして、祖父の死因は老衰だった。 98歳まで生きれば大往生だろう」
藤吉 七緒「皆、不吉なことを君のせいにしたいだけだ」
翡翠「なら、どうして呪いでないとわかっていたのに、あの人に説明しなかったの?」
藤吉 七緒「ああいえば、君を渡さなくて済むかと・・・」
翡翠「七緒が私を?」
藤吉 七緒「翡翠を他の人に渡すなんてできるわけないじゃないか・・・」
翡翠「七緒もわたしと一緒にいたいと思ってくれていたの?」
翡翠「嬉しい!」
藤吉 七緒「君を手放せない俺こそ本当に呪われてるのかもしれないね」
翡翠「呪いなんかじゃないわ・・・それは」
──それは、呪いか幸いか──
翡翠ちゃんの事をきちんと理解して、全てを肯定する所がイケメンだな、と思いました!これからも二人が一緒に居てくれることを願います。素敵な物語ありがとうございました!
自分を全肯定してくれるイケメン君に心打たれたので、今日はいつもよりご飯多めに食べます。
呪いって言うのもあるとは思うんですが、翡翠さんの場合は違ったみたいですね。
彼のそばにいたい翡翠さんが一途でかわいいです。