プロフェティック・ドリーム

坂道月兎

#12 夢を告げる(脚本)

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〇事務所
百瀬哲平「早乙女社長は傲慢で嫌な奴だった」
百瀬哲平「『早乙女家は代々由緒正しい家柄だから、万一変な女が入ってきたら困るから』だと」
生方千尋「息子の一方的な片思いだって言うのにね・・・」
生方千尋「調べたら、妻──つまり、早乙女君のお母さんを、早乙女君がまだ赤ちゃんの頃に追い出してるらしいんだよ」
生方千尋「幼いころからあの父親と父子家庭じゃ、色々ゆがむだろうね」
百瀬哲平「でもさ、探偵の調査はすでに終わっているらしいんだ」
百瀬哲平「結衣の家が母子家庭だったってことで、『うちにはふさわしくない』って息子に伝えたそうだ」
百瀬涼平「じゃあなんであの探偵は、まだ結衣を追いかけてたんだ?」
生方千尋「父親が探偵を雇っているのを知った息子が、探偵に追加料金を払って調査を継続させたらしい」
百瀬涼平「・・・なるほどな」
百瀬哲平「ストーカーは立派な犯罪だからな」
百瀬哲平「表沙汰にしたくなかったら・・・って言ったら、すぐに探偵呼び出して写真とデータを回収してくれた」
生方千尋「あのクラスの社長ともなると、醜聞で失うものは多すぎるからね。だいぶ焦ってたよ」
八神直志「それなら、早乙女もこれ以上はややこしいことしてこないだろ」
百瀬涼平「でも、父親に言われて素直に聞くとは思えない。本人にも直接言っておいた方がいいんじゃないのか?」
八神直志「あいつも相当日本語通じないヤツだからな。 話すなら、入念に打ち合わせしてから──」
  その時だった。
  事務所のベルが鳴ると同時に、ドアがガンガンと乱暴にノックされた。
百瀬哲平「・・・今日は特にアポなかったはずだけどな」
生方千尋「はいはい、どちらさま~?」
  生方さんがドアを開けると、立っていたのはまさに今話題にしていた張本人の早乙女だった。
八神直志「早乙女!? お前なんでここに?」
早乙女雄星「八神、百瀬、笹島・・・お前らもグルだったんだな」
八神直志「グルってなんだよ」
早乙女雄星「父さんに、花ノ木さんと別れろって言われたんだ」
百瀬涼平「別れる・・・?」
早乙女雄星「僕たちは恋人同士だ! なあ、そうだろ、花ノ木さん」
花ノ木結衣「早乙女くん、私・・・つき合えないって言ったよ」
早乙女雄星「何を言っているんだ。 僕のことを好きなんだろう?」
花ノ木結衣「そんなこと言ってないよ」
  結衣が涙目になりながら首を振った。
早乙女雄星「お前らが入れ知恵してるんだろう!?」
早乙女雄星「百瀬、ただの幼馴染が花ノ木さんにべたべたするなよ!」
早乙女雄星「彼女のことを理解できるのは、僕だけだ」
八神直志「落ち着けよ、早乙女・・・結衣ちゃんは違うって言ってるだろ」
早乙女雄星「僕たちのことに外野が口を出すな」
笹島アリス「・・・思い込み、激しすぎ」
  アリスの呟きはさすがに実感がこもっている。
  俺たちは貌を見合わせた。
  早乙女は本当にそう思っているというよりは、思い込もうとしているんだろう。
  今は否定して刺激するのはよくない気がした。
百瀬涼平「つき合ってるなら、なんで探偵を使ってまで結衣をストーキングするんだ?」
早乙女雄星「花ノ木さんのことが心配だったんだ」
早乙女雄星「可愛いし、誰かに狙われたらって思うと・・・最近は百瀬や八神も付きまとってるみたいだしな」
  早乙女に罪悪感はまったくなかった。
  ストーキングは正当な行為だと思っているようだ。
百瀬涼平(でも・・・結衣を好きで大事に想ってるのは本当のようだな)
百瀬涼平(早乙女が結衣を殺すって線はなさそうだけど・・・)
  あれこれ考えていると、早乙女が俺と八神を交互に睨んで言った。
早乙女雄星「お前たちがつきまといをやめるなら、探偵にもやめさせてやる。そうじゃないなら──」
花ノ木結衣「早乙女くん」
早乙女雄星「どうしたんだ、花ノ木さん」
花ノ木結衣「私の話をちゃんと聞いて欲しんだけど」
早乙女雄星「いつも聞いているだろう?」
花ノ木結衣「ううん、ちゃんと聞いて」
  結衣がゆっくりと諭すように言うと、早乙女は黙って結衣を見る。
花ノ木結衣「私は早乙女くんとはつき合えない。 ごめんなさい」
花ノ木結衣「でも、それは早乙女くんが悪いんじゃないの。私に他に好きな人がいるから」
  結衣の『好きな人』という言葉にドキリとした。
早乙女雄星「なんで!? どうして!? 嘘だろう?」
花ノ木結衣「ごめんなさい」
花ノ木結衣「でも、好きって言ってもらえたのはうれしかった。私のこと、認めてくれてありがとう」
早乙女雄星「・・・嘘だ」
花ノ木結衣「ごめんなさい・・・」
  結衣が深々と頭を下げた。
  早乙女は切なそうにその姿を見ている。
  生方さんが、早乙女の肩に手をまわした。
生方千尋「生きていれば色んなことがあるって。 送ってあげるから、今日は帰りなよ」
早乙女雄星「・・・・・・」

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